入試は社会へのメッセージ[1]「グローバルスキルとしての英語力をどう育成するか」ー事例:立教大学

「グローバルリーダー教育への扉」


 立教大学(以下、立教)は2021年度の一般選抜において英語の独自試験を廃し、外部英語検定試験または共通テストの英語を利用した得点換算方式に変更した。その狙いを振り返りつつ、改革を志願者増につなげた取り組みについて、副総長(統括)の石川 淳教授にお話を伺った。

グローバルリーダー育成のための全学戦略

副総長(統括)石川 淳氏

 立教は、2014年に国際化戦略「Rikkyo Global 24」を公表した。これは2024年の創立150周年に向け、「アジアを代表し、世界で際立つ大学」を目指して取り組む24のプロジェクトの総称である。この戦略を基盤とした構想は、同年に文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」に採択された。

 立教が全学を挙げて育成する「グローバルリーダー」とは、グローバル課題や社会要請に広い視野で対応・解決できる人であり、「単なるリーダーとの違いとして、多様性に対峙することができるか、という点がある」と石川教授は言う。違いを尊重し、違いを楽しみ、協働できるグローバルマインドを持ち、新しい価値を創出するのがグローバルリーダー。その素養として大事なのが共通言語としての英語と、相手の文化背景を踏まえてコミュニケーションできる考察力や論理的思考力だという。後者の育成のためには、リベラルアーツ教育を再構築した学びの体系「Rikkyo Learning Style」を用意している。

 前者の英語は、「英語で専門を深めること」を最終ゴールとする。これについて石川教授は、「全学戦略として掲げる以上、必要なレベルは学部ごとに異なるものの、どの学部でもグローバル化が重要というコンセンサスが得られています。全学的に議論して推進するのが本学の改革の特徴です」と話す。中長期計画「RIKKYO VISION 2024」策定の際は、若手・中堅の教職員作成の素案を軸にした全学議論に約半年をかけた。異なることを前提に論を交え、積極的に多様な考え方や価値観を受容する。「本学が目指すグローバル化はダイバーシティ&インクルージョンの実現でもある」と石川教授は言う。まさにそれを体現した検討プロセスでもあったのだ。

全学部日程の活用とオンライン早期広報で志願者増を実現

 次に、好調な入試結果を導いた施策について伺った。2021年度入試で、立教はのべ志願者数4167名増、学内併願率は1.98から2.25へ向上した一方で、実志願者数は減少した。この状況を一言で言えば、ノイズが減少したということであろう。教育効果を上げるためには入試でしっかりフィルタリングする必要がある。しかし、フィルタリングしすぎれば当然志願者のハードルは上がり、数に影響し、経営を直撃する。このジレンマをどう解消したのか。



図表 新制度〈2021年度入試以降〉

 1つ目の要因は受験機会の拡大だ。英語で独自の改革が行われる一方で、全日程において全学部の受験を可能としたことで、第一志望学部を複数日受験する、入学意向の高い志願者数が増加した。一見すると他校と併願しづらいスタイルをとりつつも、機会を拡大することで、質と量を両立したのである。メインターゲットに求める素養を明確に示し、教育を受ける準備を促す一方で、彼ら・彼女らが何度もチャレンジできる入試日程を設計する。このあたりが入試設計の妙であろう。

 2点目として、国が外部資格検定試験の利用を断念した共通テストについても、2技能ではあるが一般選抜で受験可能な条件に加えたことがある。教育に沿う厳格なフィルタリングではなくとも、入学後の育成を見据えた現実的な選択だ。「共通テストが混乱するなか、英語は初等中等教育が既に4技能で展開している。ならば、4技能入試にすることは受験生が頑張ってきたことが報われるという状態になるはずと考えた」と石川教授は言う。

 3つ目の要因として、早期×オンラインを徹底した広報戦略が挙げられる。入試改革のプレスリリースは2019年7月。いわゆる2年前広報を遵守して社会にいち早く改革を伝えると同時に、立教を目指す高校生が2年生の段階で情報を知り、十分に受験対策を講じることができた。コロナ禍で、全国の高校生がアクセスできるオンラインに注力できたのも奏功した。当時、「入試改革をする大学は制度が複雑で理解が難しい」といった風潮が広がるなか、立教はそれを払拭するべく、「わかりやすく見せる」「見せる場をたくさん作る」の2点を徹底し、YouTube等で展開される大学説明会に頻繁に顔を出し、幾度となく改革の真意と入試制度について説明し続けた。こうした認知広報を徹底したことで、正しく情報を理解した志願者が増加したであろうことは想像に難くない。

 「教育改革と入試改革を連動させ、アドミッションポリシーに即した入試に変えるということを繰り返し訴え続けました。我々が本当に伝えたいのは教育改革ですが、教育を変えたとただ広報しても伝わりづらい。その変化を高校生から見て大切なマイルストーンである入試に落とし込んでこそ、必要な情報として認知してもらえる。そこで初めて改革の意図と内容が浸透する」と石川教授は言う。重要なのは情報の受け手の立場に立った広報戦略の立案というわけだ。

改革の次の課題を乗り越えダイバーシティの実現へ

 一方、課題は「首都圏出身者の比率の増加」だという。志願者ベースで2020年79.0%だった首都圏出身者比率は2021年79.9%に上昇した。この値の是正が今後の課題である。「ダイバーシティの実現としてグローバルを志向する本学にとって、入学者の多様性確保は重要です。そうした志向からすれば、首都圏という一元的な属性が際立つことは本来望ましくありません」(石川教授)。意志ある改革の結果得られた次の課題の解決も、立教は全学体制で挑戦するのであろう。


(文/鹿島 梓)


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