キャリアガイダンス創刊50周年特別セミナー第2弾 レポート
「未来を創る主体」を育む学校づくりへ
2022年度からの次期学習指導要領の実施に向け、高校現場にはさまざまな変革が求めてられています。その中で、どのような学校づくりを目指していけばよいかを共に考えるセミナーを実施いたしました。登壇者側からも参加者からも非常に強い熱気を感じられたセミナーとなりました。そのハイライトをお伝えします。
レポート:長島佳子/撮影:西山俊哉
【開催日時】2019年11月2日(土) 12:20~17:40
【開催場所】リクルートGINZA8ビル
(ご挨拶)
■小誌編集長より
本日のセミナーについて:『キャリアガイダンス』編集長 山下真司
(プログラム1)
■基調講演
「新カリキュラムのなかで、高校はどのように
生徒の資質・能力を育んでいくか
〜生徒一人ひとりを主語として〜」
講演者:荒瀬克己 先生(中央教育審議会委員、大谷大学教授)
●教育課程の目指すもの
まず、今回の学習指導要領がめざすものについて、その前文を引用して解説されました。なかでも荒瀬先生が着目したポイントは、教育課程とは何かについて書かれた箇所。「一人一人の生徒」が主語となり、「(〜ことが)できるようにする」ものと表現されています。学校において「できるようになる」ことを具体化していることが今回の改訂のポイントとして挙げられました。
また、学習指導要領とは「教育課程の基準を大綱的に定めるものである」ということにも触れ、学習指導要領で語られているのはあくまで基準であり、学校では個々の現場と生徒の状況に合わせてやっていけばよいと荒瀬先生は語りました。
そのうえで、前・国立教育政策研究所所長である常磐 豊氏の「改革とは、あたりまえのことで、できていないことをやっていくことだ」という言葉を引用。働き方改革とともに高大接続改革を進めなければならない学校の現状に対して、やるべきことでできていないことを整理しながら、できることから順番に進めていけばよいとメッセージしました。
●新しい時代の高等学校教育の在り方
次に、既に新学習指導要領にのっとった取組を始めている学校事例を紹介。中央教育審議会の「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」第3回会議で講演した、福井県立若狭高校と滋賀県立玉川高校の学校全体の取組、また、京都市立白河総合支援学校のパン工房の取組についての紹介。
若狭高校については国語科の定期考査では授業でやった教材を使わないこと、玉川高校では学習指導要領を全員で読み、学びの意義について生徒と教員が共有していること、白河総合支援学校のパン工房では、単にパン作りの技能を身に付けるだけでなく、「おいしいパン」作りを目指していることについて触れました。
これらの学校の共通点として、将来を見据えて、「生徒たちにこれから役立つ力とは?」という視点に常に立ち戻って取組を進めていることを挙げました。
●探究の指導と評価
新学習指導要領のなかでも多くの関心と不安を呼び起こしている「探究」。探究とはそもそも何か、どのような指導の形をつくっていけばよいのか、評価はどうするのかについて、中央教育審議会の2016年12月の答申を基に解説。
答申の内容の中で荒瀬先生が強調されたのは、「探究の成果として新たな知見の有無や価値よりむしろ、探究の過程における生徒の思考や態度を重視し、主体的に探究の過程全体をやり遂げることに指導の重点を置くべきである」という一文。高校での探究は学びの姿勢を育む場であり、評価も同様の点を重視し、それを生徒が自己評価できるようになることも必要とされています。
●カリキュラム・マネジメント
最後に、学習指導要領の第1章総則の第1款で登場する「カリキュラム・マネジメント」の要点について、中央教育審議会の2016年12月の答申を基に解説。
「カリキュラム・マネジメント」の側面のなかでも大事なこととして「教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること」を挙げました。そのためには、まず生徒や学校の現状を把握することから始めるため、管理職だけでなく全教職員で取り組むべきであること、PDCAサイクルを回す過程を全教職員が共有することが重要であると荒瀬先生は語りました。
60分の講演の中に、多くのヒントを盛り込まれた荒瀬先生。やることが盛りだくさんと参加者が感じることを見越してか、最後のメッセージとして「するべきこと できることをする できることから」と繰り返して講演を終えました。
※参考【キャリアガイダンス本誌でのカリキュラム・マネジメントについてのメッセージ】
学校の教育力すべてをつなぐ カリキュラム・マネジメントという発想
(プログラム2)
■ワークショップ イントロダクション
登壇者:酒井淳平 先生(立命館宇治中学・高校)、長谷川弘和 先生(宮城県利府高校)
(プログラム3)
■実践レポート①
「探究を重視した多彩な実践を通じて、将来をデザインする主体性を育む」
講演者:黒井 憲 先生(札幌市立札幌開成中等教育学校)
黒井先生の講演資料のダウンロードはこちら
前身の札幌開成高校から6年制の中等教育学校へ転身した同校。1期生の中等4年生(高校1年生に当たる)は編入生として既存の開成高校に組み込まれた形でした。そのため、当初は定員割れし、入学した生徒の自己肯定感が低かったとのこと。学校が掲げる育成像の「主体性」を育むために、「自分で決定できる」「自分で行動できる」仕掛けを学校活動の随所に盛り込むカリキュラム設計を黒井先生たちは考えたそうです。
「探究」を核としている同校では、IB(国際バカロレア)を導入しすべての授業において「探究-行動-振り返り」が双方向に展開するサイクルを取り入れている他、授業以外の学校活動でも生徒が自分で課題を考えて解決策を見つける探究の要素を実践しています。
その中心にあるのが「SELF(Stimulating Experience and Learning for the Future)」というキャリアデザインプログラムの枠組み。さまざまな場面で実施している多様な「SELF」の取組について紹介いただきました。
ここでは黒井先生が講演された「SELF」の取組の一部をご紹介します。その一つが「Community Staff」という校内ボランティア活動。最初の1年は「一人一役」として、挨拶の声掛けなど小さなことでも、自分が得意なことで人の役に立つことを考えて宣言して実行します。翌年から「会社活動」として、仲間を募り校内で起業して自分たちで学校活動を豊かにする取組に励みます。例えばITに強い生徒たちがタブレットの使い方を教えたり、学校で快適な仮眠を取るサポートをする会社が生まれたりしました。
「SELF」の中でも黒井先生が特におすすめと語ったのが「Cosmo Guidance」。生徒が自分でメンターとなる先生を選択する仕組みです。先生たちが自分の得意分野をキーワードで公開し、それを参考に生徒が今必要としているアドバイザーを探し、自分でアポイントを取って相談にいきます。クラスや学年を超えてさまざまな先生と生徒が関われるだけでなく、先生同士の関係性も潤滑になっていくそうです。
同校の三者面談で取り入れているのが、生徒が担任と保護者に対して行う「自分プレゼン」。自分の夢やそれに向けた学習計画などをプレゼンシートを作って自分の言葉で語ることで、生徒にとっては自分の話したいことを話す場に、保護者にとっては子どもの本音が聞ける場となり、感動する保護者が多かったとのこと。
「SELF」の集大成とも呼べるのが、1期生が最終学年時(6年生・高校3学年に相応)のクラス編成を自分たちで考えて実施したことです。先生たちから伝えたのは「1年間、各クラスの全員が気持ち良く学校生活を送れる状態にするには、どういう人とつながってどんなクラスであればよいか考えよう」ということのみ。4クラスに分割されたボードに自分の名前カードを貼って決めていく仕組みで、2週間の期間内に生徒間で調整して貼り替えながら、個々に特徴のあるクラス編成ができたそうです。運動が苦手な生徒が集まったクラスもあったそうですが、体育会で「初めてクラスで活躍できた」など今まで以上に楽しそうな生徒の様子に、自己肯定感がさらに上がった場面を多々見られたと黒井先生は語りました。
「SELF」の枠組みを総合的な学習の時間で実施してきたのが「Future Job Session(以下FJS)」という進路探究学習です。未来の社会はどうなっていくかを考えたうえで、自分たちの生き方・働き方を考える逆向き設計で6年間での学びを考えていきます。将来を見据えると必要になるのはどんな仕事か、今ある仕事にかかわらず生徒たちが発想や思考ができるさまざまな仕掛けを盛り込んでいます。「『未来は自分で創る』意識を生徒にもってもらいたいと考えて設計したカリキュラムです」と黒井先生。
30分の持ち時間で、上記の倍以上の内容を語られた黒井先生は、まとめとして、「生徒の主体性を育むには、とにかく場をたくさん与えてあげること。そしてやっている教員本人が楽しんで『一緒にやろうよ!』と言えるパワーをもつことが大事」とメッセージして締めくくりました。
※参考【キャリアガイダンス本誌の事例レポート】
探究を重視した多彩な実践を通じて、自ら将来をデザインしていく主体性を育む
(プログラム4)
■実践レポート②
「学びや成長に自覚的になる活動を重ね、
進路決定できる力を育むキャリア・パスポートの活用」
講演者:小島大和(おじま ひろかず) 先生(高知県立宿毛高校 総合学科推進部長)
総合学科として5系列を有する宿毛高校。若年層を中心とした人口流出が課題となっている宿毛市において、同校の生徒数も減少、それにともない総合学科としての科目選択の限界や、キャリア教育のマンネリ化が課題となっていました。小島先生が2018年に総合学科推進部長に就任直後、県から「キャリア・パスポート」活用研究事業の指定があり、新しいキャリア教育のきっかけになるのではないかと、対策チームを立ち上げて導入にチャレンジすることになりました。
初年度の昨年は各学期の振り返りシート3枚と、行事の感想4回分の年間7枚のシートでスタートしました。
記入する生徒自身にも、確認してメッセージを書き込む先生方にも負担感がないように小島先生たちはフォーマットにもさまざまな工夫をこらしました。例えば生徒が進路をイメージしやすいように、1年間、3年間、10年後と分けて目標設定しつつ、それぞれはひと言ずつ書けばいいようにしたり、自己評価しやすいよう100点満点中何点かを付ける欄を設けるなどです。
1年間取組を実施して、キャリア・パスポートにさまざまな可能性を感じた小島先生は、2年目の今年から取組をブラッシュアップさせています。振り返りをしやすいように手帳を導入し、ホームルームで毎日振り返りをすることを依頼。また、学期ごとの振り返りだけだったのを、学期ごとの目標設定シートを導入して、目標への達成度を本人が振り返りやすいようにしました。一方で、先生方の負担を減らし、本人が本音を書けるように手帳の点検はしないこととしています。
この1年半での取組で生徒がどのように変容したか、6人の生徒さんの例を小島先生は紹介しました。明らかに成長が見える生徒、一度は進路が拓けそうになったのに立ち止まった生徒など、変容のベクトルはさまざまですが、記録として残っていることで本人が自分の変化に気づくきっかけとなっていると小島先生は語ります。
その中の一人、F君のキャリア・パスポートの抜粋をご紹介したとき、参加者からはどよめきやすすり泣きが聞こえてきました。F君を含む生徒たちの事例については、上記の小島先生の講演資料のダウンロードリンクからご覧いただけます。
キャリア・パスポートの評価は数値化できないけれど、生徒が自分の人生の過去と未来、過去の先生が自分とどう関わってくれたかなど、生徒を巡るさまざまなものをつなぐツールになるだろうと提言され講演を締めくくりました。
※参考【キャリアガイダンス本誌の事例レポート】
学んだことを定期的に振り返り、自ら将来を見通すことのできる力を育成
(プログラム5)
■実践レポート③
「“生徒と共に創る”授業で、一人ひとりを社会を創る仲間へ変えていく」
講演者:佐野寛子 先生(東京都立国際高校)
佐野先生は初めに、世界に飛び出していった教え子たちについて紹介しました。「世界の教育の質を高めたい」とアメリカに行って教科書をつくろうとしている生徒、複数の教科・科目での気づきから環境保全と経済を両立させる社会貢献事業プロジェクトを進めて、教育プログラムの日本代表として世界大会へ出場した生徒たちなど。
生徒たちは授業を通して自分の知っている範囲の日常に疑問をもち、世界に目をひろげることで夢をもち、社会や世界を変えたいと思うことで主体的に行動を始め、行動するなかで社会を変えるには学びが大切だと気づき、授業をさらに大切にし始めていったと言います。こうした生徒を育てる授業についての解説が始まりました。
実はセミナー当日、伝えたいことがたくさんありすぎて、佐野先生は用意したスライドが時間内には紹介しきれず中略もありました(詳細は上記リンクの講演資料参照)。限られた時間で佐野先生がお話しされたことで感じたのは、佐野先生にはぶれない筋があり(上図の理念や方針)、非常に緻密に授業設計をされていること。だからこそ、生徒たちが主体的に育っていく仕掛けができているのです。 佐野先生の授業の特徴の一つは、生物という科目の単元として学ぶ内容に、教科や科目を超えた日常に落とし込めるテーマを込め、それについて多角的に考える力を養おうとしていること。例えば生物基礎で学ぶ「生態系」の授業では「人間活動・経済と環境保全」というテーマ、「体内環境」の授業では「死生観を考える」というテーマなどです。 こうした日常に関わるテーマを設定することで、他教科・他科目との学びのつながりに生徒が気づいたり、教科・科目間連携もしやすくなるそうです。実際に学年のカリキュラムとしてSDGsをテーマに学びのリンクも行っています。
二つ目の特徴は、それを楽しみながら自分ごと化して体感させることです。例えば前述の「生態系」の授業では生徒が多様な動植物になって食物連鎖を体験するゲームをしたり、チームごとに住みたい街を地図上で選んでいくまちづくりの学習などを行います。いずれもゲーム感覚でやりとりしているうちに、食物連鎖に除草剤が入ってきたらどうなるかとか、住みたい街同士が川の上流・下流によって影響し合うことなどの条件で見方が変わってくることを生徒たちが考えるようになるそうです。授業では必ず振り返りをして、ゲームの体験で気づいたこと、学んだことを言語化しています。 三つ目が最大の特徴で、こうした授業をほぼ生徒が中心となって実施することです。先生はルールの説明だけをして、「あとはよろしく!」と生徒に任せます。教科書から知識を拾う作業も生徒自身がして学び合うよう促します。先生はそばで様子を観察し、生徒が躓いていそうな事柄について、体験学習後に短時間で解説するのみ。すると生徒は自分たちがわからなかったことを先生が教えてくれるので、非常に集中して話を聞くそうです。
教員主導から生徒主体の授業の創造・実践に変えることを、佐野先生は“Chalk-Jack(チョークジャック)”と名付けています。先生が考えた授業を生徒主導で実践するだけでなく、授業そのものを生徒が考えてもよいという取組です。
その前提として、佐野先生は最初に、教員-生徒が主従関係にあるのではなく、共に学び社会を創っていく仲間であると伝えているとのこと。
「『オレは教師でお前は生徒だ』というようなマウントがあると、生徒は自分の思っていることを言えなくなります。わからないこと、やりたいことを言ってもいいんだという場と関係性をつくることだと思います」
最初は授業の中の一部の時間を生徒に渡すことから始め、「自分たちでやりたいと言っていいんだ」と浸透してくると、授業の年間計画を変えることまで提案してもよしとしています。その際に、授業を提案するために決めなければならない事柄、交渉しなければならない相手など、教員が授業計画を立てているときに行っていることを情報として伝えます。すると生徒はそれを理解したうえで、授業内容、評価方法、時間配分などを作り、ネゴシエーションをしてくるようになるそうです。実際に生徒同士でとったアンケートでは、現状の授業に不満をもつ生徒が大半で、授業内容について先生と交渉できるならやってみたいという生徒も大半を占めていました。
生徒主体の授業を行うことで、生徒だけでなく教員も良い影響を受け、学校全体の活性化にもつながっていると佐野先生は語りました。
※参考【キャリアガイダンス本誌の事例レポート】
「授業」も「世界」も自分たちで変えられるのを示し、生徒と「社会を共に創る仲間」の関係を育む
(プログラム6)
■実践レポート④
「課題を自分事化してチャレンジできる生徒の主体性を育む新たな学校づくりへ」
講演者:日野田直彦 先生(武蔵野大学中学・高校 校長)
冒頭で日野田先生は、ワークショップのイントロダクションで出されたお題「今日持ち帰りたいことは?」に絡め、「一緒に戦ってくれる勇者」とスライドを出しました。日野田先生が戦ってきたもの、これからも戦い続けようとしていることについてのお話が始まりました。
最初のテーマは「世界と日本の変化」について。欧米の大学で出される問い「How would you like to be remembered?(あなたはどのように記憶されたいですか?)」などを例示。世界ではこのような自分の在り方などについての「問いに答え続けられる生徒を育てること」が求められており、今まで登壇した先生方が実践しているのはこうした取組だと語りました。
さらに、世界の人口やGDP、企業価値の推移などさまざまなデータを基に、世界の変化の速さと加速について解説。既にある程度予見されているそれらの変化が起こる頃、「目の前の生徒は42歳です」と一気に現実に引き寄せ、それに気づかないふりをして教育していることに危機感はないか、参加者の方々に問いかけました。
日野田先生は日本を批判しているのではなく、敗戦後、わずか20年で復興した日本の底力を信じていると語りました。現在よく言われる「Challenge」という言葉は、松下幸之助の名言「やってみなはれ」と同意。若い人に好きにやらせて、年輩は責任を取るという姿勢に原点回帰すればよいのだと日野田先生は熱く語りました。
ダイバーシティの時代には日野田先生のように若い校長や、年齢だけでなく性別、国、宗教などあらゆる多様性を容認した方が、発想が豊かになり、イノベーションが起こりやすい。そのためには、みんなのマインドセットを変える必要があると。
すべてを欧米化すべきという主張ではなく、日本の学校にも良い所がたくさんあるので、1/3程度、海外方式を取り入れるとよいとのこと。
次に箕面高校時代の実践と、現在の武蔵野大学中学・高校の未来についてお話がありました。(日野田先生の箕面高校での取組は下記リンクの小誌で詳細をレポートしていますのでご参照ください)。
武蔵野大学中学・高校では、同校の課題を踏まえたうえで、3年後の学校のあるべき姿を設定し、「先生も生徒と一緒に学ぶ集団」になることを目指した取組が始まっています。
具体的な施策の一つが、日野田先生の箕面高校での取組やその他の知見を掛け合わせて「日本一の英語教育」を提供するというものです。さらに、英語と同様に四技能化が進められる国語についても「日本一の国語教育」を目指すこととしました。それらに向けて、英語科と国語科の先生が一緒に勉強会を実施しています。お互いの状況を共有し、先生たち自身が「困っていること」を言える風通しのいい風土づくりに役立っているとのこと。
授業改革と並行して働き方改革も迫られるなか、部活動の運営方法も検討を始めています。
日野田先生も時間目一杯まで語り尽くしましたが、最後に参加者の方々に向けたのが「一緒にワクワクしませんか?」というメッセージでした。「『面白いからやってみたい!』と生徒が感じるような授業や学校をつくりましょう」と。そしてこう締めくくりました。
「そのために、皆さん、校長をやってみませんか? 皆さんの出番です」
一緒に戦ってくれる勇者を日野田先生は本気で探しています。
※参考【キャリアガイダンス本誌の事例レポート】
英語“で”学ぶ活動を起点に改革
変化の激しい世界で通用するマインド・スキル・自信を育む(箕面高校時代の実践例)
(プログラム7)
■講演&ワークショップ
「『授業』『探究』『特活』=?を考える」
登壇者:酒井淳平 先生(立命館宇治中学・高校)、長谷川弘和 先生(宮城県利府高校)
最後のプログラムでは、自校で探究や特別活動(以下、特活)に取り組み、国立教育政策研究所教育課程研究センターが発行した特活のパンフレット作成に携わった酒井淳平先生(写真左)と、長谷川弘和先生(写真右)による講演とワークショップが行われました。
まず、今回のセミナー全体を探究と捉え、情報収集としてこの日の講演を聴いたうえでの「整理・分析」をしました。イントロダクションで課題設定したことに対し、講演の学びと気づきについてワークシートに記入し、周りの人と共有。参加者の方々は自分の課題設定によって響いたことがさまざまでした。講演した登壇者の先生たちも一緒に考えていました。
次に、長谷川先生より特別活動(特活)についての講演がありました。特活は学習指導要領で、教科・科目等と同様に、育成すべき資質・能力が明記された教育活動です。しかし、行事の準備などに充てられていることなどが多く、果たしてその目標通りに運営されている学校はどれくらいあるのでしょうか。そこで、長谷川先生から、特活の問題提起が具体的に挙げられました。
酒井先生からは総合的な探究の時間(以下、総合)の理解について語られました。学習指導要領の表記でも、キャリア教育を目指すなかでの総合と特活のすみ分けや関係性が読み解きにくくなっています。そこで酒井先生は数学の先生ならではのすみ分けと、小誌で掲載した教科、総合、特活の関係性を表した扇型の図版を用いながら解説し、自校での取組について紹介しました。
授業、特活、総合の各役割を知ったうえで、再びワークに入りました。まず、自分の役割を現実とは異なってもよいので、管理職、学年主任・分掌主任、担任または分掌の教員、行政(教育委員会など)、教育関連業者など学校外の人の5つの中から決め、役割を意識して授業、特活、総合で取り組みたいことについて考え、周りと共有しました。
上記の共有をして気づいたことについてまとめを記入。それをグループ内で1分間スピーチとして発表し合いました。ワークシートの最後には、ワークショップを経て、次のアクションをどうするか、自分への宣言を記入してもらいました。
ワークショップを通して、参加者の皆さんが初対面の方々と積極的に語り合っている様子が印象的でした。初対面だからこそ言える自分や自校の課題もあるのかもしれません。ワークショップとセミナーの締めとして長谷川先生から「参加者同士で話すことで元気になって学校に戻ってもらいたいと思いました。皆さん元気になりましたよね」と、お互いを勇気づける言葉で、非常に密度が濃かった今回のセミナーが終了しました。
※参考【キャリアガイダンス本誌の酒井先生、長谷川先生にご登場いただいた「探究」「特活」の記事】
育成したい資質・能力の視点で「特別活動」を捉え直す
総合的な学習の時間:「社会を生きる力」の根源となる、 「なぜ働くか? 」を考える
■情報交換会
登壇者も交えて、先生同士のつながりの場
参加者の方々に印象に残った講演についてうかがうと、それぞれ千差万別の感想が出ました。管理職の方は荒瀬先生や日野田先生のお話に感銘を受け、分掌部長など役付の先生方は黒井先生のカリキュラムづくりや小島先生のキャリア・パスポートの取組が勉強になったと答え、自身の授業づくりに励む若手の先生などは佐野先生の講演に刺激を受けたとのこと。多く聞かれたのは、参加者の方々自身が授業や学校を変えたくても、組織として動くにはどうしたらいいのかという声。それに対して登壇者の方々が個別にフランクにお話しされていました。先生同士、講演の感想や意見を交換したり、これからの教育について熱く語り合っていました。