学びのみちしるべ【第18回】/キャリアデザイン学
大学での学びの中身と、その学問が社会でどう役立つのかを大学の先生が解説。
進路選択のみちしるべとなるよう、高校での学びがその学問にどうつながるのかもお聞きしました。
この学問の内容、面白さは?
「働く」「生活する」「学ぶ」の3領域から
自身の生き方を主体的に設計し、実現するための学問
キャリアデザイン学とは、「働く」ということだけでなく、「生活する」「学ぶ」といった領域も含め、生き方そのものをキャリアととらえ、自身の生き方を主体的に設計し、実現していくことを学び、研究する学問です。
かつての日本は終身雇用で、一度就職すれば、企業が一生丸ごと面倒をみてくれると考えられていました。しかし、バブル崩壊以降、社会は激変し、企業を取り巻く環境も大きく変化しました。さらにグローバル化、AIなどによる技術革新が進み、将来を予測することも難しくなっています。こうした社会変化を受け、企業丸抱えに終わりを告げ、一人ひとり違う個性を一律に揃えるのではなく、違うまま組織で生かす方向へ変わってきています。それがダイバーシティ、すなわち多様性を重んじるということで、ダイバーシティが組織を活性化し、新たな価値を生み出しますし、そこで求められるのは、自分軸をもち、主体的に自分のキャリアを描ける力です。とはいえ、ひとつの学問領域でその力を身につけるのは難しいと考え、キャリアデザイン学では、社会学、経営・経済学、心理学、人文科学、教育学などさまざまな学問分野の知見をもち寄って多面的な視点でキャリアを学問として研究しています。学部にいる間に社会を知り、視野を広げてもらうため、キャリア支援の専門家や企業の人事部門など外部の方を招いて職業観、人生観を聞く機会も多く設けています。
私の専門は、企業など組織における「人」に着目した「人的資源管理論」。どのように「人」
をマネジメントすれば、経営成果を出せるかの研究です。特に昨今は人材の能力を最大限に引き出すためには個人の生活や価値観という視点が不可欠です。そのため、現代社会の実情と個人の生活や価値観、生き方の相互作用を科学的に分析し、考察を進めています。ゼミでは「これからの働き方を考える」という大テーマの下、学生たちは「副業がキャリア形成にもつ意味」「ダイバーシティに対する学生の意識」など課題を各自で設定し、研究を進めています。こうした私たちの研究を通して、職場で働く人も、また働き方そのものも多様化する今の時代こそ、主体的にキャリアを描くことの重要性を発信していきたいです。
社会でどのように役立つ?
多面的な視点をもつことができるようになり、
自分のキャリアだけでなく、人のことも考えられる
多様な専門領域の教員から構成されている学部で、ゼミを中心に専門性を深めつつ、関連する領域も広く学ぶことができるのが特徴です。職場の中でのキャリア形成を専門に学んでいる学生が、家族論やコミュニティ論、教育論も学べるので社会全体の構造の中で個人のキャリアをとらえることが可能になるわけです。学部の前身が教育学部だったので教員志望の学生もいますが、ビジネスの現場や家族・地域のことも知っていた方が教員として視野が広がると考えて本学部を選んできています。多面的に学ぶことで自身のキャリアを考えるということ以上に、他者のキャリア形成を支援できるという意味で社会に貢献できる人材を育成しています。
高校の科目とのつながりは?
どの教科に対しても問題意識をもって臨む。
今後の人生のため、学びの習慣を身につけよう
高校時代までは総じて正しい答えを導く学びだったと思いますが、大学以降は正しさではなく、疑問に対して自分なりの答えを出すことが重要になります。ですから高校生には、どの教科も自分なりの問題意識をもって臨んでほしい。また、失敗を恐れないで、やってみたいことは何でも挑戦してほしいです。それと人生100年時代の今、最初に就いた仕事を一生続けることは難しくなっています。必ずどこかでキャリアチェンジや学び直しがあると思います。これからのキャリアで「学ぶ」ことそのものも重要な要素となってきますので、高校時代から学びの習慣を身につけておくといいと思います。
オススメBOOK 『ライフシフト 100年時
代の人生戦略』 (取材・文/いのうえりえ)
(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著 東洋経済新報社)。
100歳まで生きると考えた時に必要な視点、価値観が具体的にわかる。
\印刷用PDFはこちら/
学びのみちしるべ【第18回】キャリアデザイン学