「まじめで素直でおとなしい」 生徒の可能性をどう拓く?

生徒の姿を語るとき、先生方はどのように表現されるでしょうか。綴られる言葉には、生徒たちの実態を捉えるとともに、こうなってほしいという願いを込めて表現されていると思います。

取材などで生徒の様子をうかがうと、「うちの生徒は、まじめで素直でおとなしいんです…」と返ってくることがあります。「まじめ」「素直」「おとなしい」どれも生徒の素敵な一面を表現する言葉ですが、1つのフレーズとして語られるとき、空気感が少し変わって伝わってきます。会話の語尾に続く「…」の余韻。そこにメッセージが隠されているとすれば、それはどんな思いなのでしょうか。

この一年、先行きの見通せない不安な社会、身近な生活の変化に直面している生徒たち。従来の成功体験が通用しなくなってきていることを目の当たりにしています。しかしながら、「言われたことだけをやっていれば大丈夫」「空気を読んで過ごせば楽」といった思考停止や、周りからの同調圧力から脱却できない現実もあります。そんな生徒たちの姿が物語っているものとは?

「自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え」(新学習指導要領「前文」)ていく先に、まだ知らない豊かな可能性が広がっていることを知ってほしい。壁にぶち当たりながらも自ら見つけ出して創り出していくワクワク感を、日々の学びを通して体感していくことが大切なのではないでしょうか。

本特集では、「まじめで素直でおとなしい」という生徒像を切り口に、生徒たちの可能性を拓く学びについて考えていきます。語尾に続く「…」の余韻が意味するその先に、これからの学びのあり方を考えるヒントがあるのかもしれません。

山下真司(本誌 編集長)