Vol.66 国家公務員YouTuber/白石優生

白石優生

【Profile】しらいし・ゆうせい●1997年、鹿児島県生まれ。鹿児島県立加治木高校、鹿児島大学法文学部卒業後、2019年に農林水産省入省。同年秋、農林水産省の公式YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF(バズマフ)」 に参加。2020年1月の配信スタート後、数々のバズ動画を配信。2021年4月、農林水産省広報室に異動。動画配信に加え、チャンネル全体の運用担当者として活躍中。


日本初の国家公務員YouTuber

 農林水産省広報室職員として、YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF(バズマフ)」の動画配信とチャンネル全体の運用を担当しています。でも高校時代から国家公務員、ましてやYouTuberになりたいと思っていたわけではないんですよ。とにかく学生生活が楽しく、学校という空間が大好きだったので、高校時代は教師になりたいと思っていました。
 それで卒業後は鹿児島大学法文学部に進学。教員免許を取るためのコースを選択して勉強していました。大学3年生のとき、子どもに勉強を教えるのが得意だし、子どもと接することも好きだったので、塾講師のアルバイトを始めました。しかし実際にやってみると大勢の子どもたちをまとめるのが難しく、自分には教師という仕事は向いていないと感じたんです。なので、教師の道は諦め、農政の道へと路線変更しました。
 その理由は、鹿児島県職員で地元の農家のために働く父親を、子どものころから尊敬していたことや、祖母が米農家で農業が身近だったこと、地元に貢献したいという思いなどです。それで大学卒業後は農林水産省に入省。熊本県の九州農政局に配属され、農業政策立案に反映するため、農家に通い直接困りごとや要望を伺うという仕事に従事していました。
 その1年目の秋、僕の運命を大きく変える一通のメールが届きます。江藤拓・元農林水産大臣から全職員に向けて送られたメールで、「今、若者の間でYouTubeが流行っているようだから、農林水産業の魅力を伝え、我々の仕事を身近に感じてもらうために農水省としてもYouTubeで情報を発信しよう」という主旨でした。

個性を活かせる場所は必ずある 全国のお調子者よ、大志を抱け

 この「日本初の国家公務員YouTuberになりませんか?」という募集メールを読んだ瞬間、「これは神がくれた千載一遇のチャンスだ! こんなに自分を活かせる仕事はない!」と思い、真っ先に「やります!」と手を挙げました。というのは、僕は子どものころからお調子者で、高校時代は体育祭で応援団長を務めたり文化祭で漫才を披露したりと、目立つことが大好きでした。でも就職した農水省は、仕事自体にはやりがいがあったのですが、目立ちたがり屋で周りを巻き込んで盛り上げるという能力を活かせる場がなくてモヤモヤしていたんです。まさにそんなときにこのメールがトップから降りてきたので、すぐ応募したんです。これが人生最大のターニングポイントですね。
 とはいえ動画配信なんて未経験。最初は動画を作っても再生回数は数百回、チャンネル登録数も700人程度でした。しかし開始から3カ月目で花の動画が視聴回数40万回とバズり、登録者も3万4000人に激増。以降もコツコツ続けて現在では登録者数は14万人超にまで増えました。動画制作の基本理念は「農林水産省の職員にしか作れない動画を作る」。動画企画から配信に至るまでは自分の裁量に任せてもらえているので、スピーディーに発信したい情報が発信できます。農水省にとって前例のない取組ですが、そのおかげでたくさんの人々に動画を見てもらえていると思っています。
 僕は常に、先生や親から、調子に乗るなと言われ続けてきました。でもそのお調子者が大人になった今、国や社会の役に立っている実感を得られています。高校生のころは自分の個性なんて役に立たないのではと不安になるかもしれませんが、必ず活かせる場所があると思うので、全国のお調子者たちには希望をもってほしいですね。また、高校生の時点では夢や目標がない人も多いと思いますが、だからこそ将来の可能性を広げるために勉強はしておいた方がいい。そして、最も大事なのは、チャンスが来たと思ったらすぐにつかむこと。YouTuber募集のメールが来たとき、真っ先に応募しなければ今の僕はなかったかもしれません。チャンスは回転寿司のようなもの。目の前に来たらすぐに手を伸ばしてください!



Change in myself

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BUZZ MAFF 立ち上げにともなうYouTuber 募集メールは人生最大の転機となった。
今後はさまざまな企業や団体とコラボして登録者数20万人を目指したい。


白石優生
チャンネル開始から3カ月目、コロナ禍によって落ち込んだ花の需要回復のために
配信した動画がTwitterで大バズり。登録者が約50倍になった。


白石優生
九州農政局時代は農家さんのところに足繁く通って、 困りごとや悩みごとに耳を傾けていた。
いまだに関係が続いている農家さんも少なくない。

(取材・文/山下久猛 撮影/竹内弘真)


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