カレッジマネジメント Vol.215  Mar.-Apr. 2019

高等教育の国際展開

編集長・小林浩が語る 特集の見どころ

激化する人材の獲得競争のために、魅力をどう創るか

──存在感を高めるアジアの高等教育
  「アジアの学生はいとも簡単に国境を越えてくる」。これは、ある高等教育の専門家から聞いた言葉である。私にとってこの言葉のインパクトは非常に大きく、2009年よりアジア各国の高等教育事情をリレー形式で専門家にご執筆頂く「ダイナミック・アジア」の連載をスタートした。

 2011年までのダイナミック・アジアⅠがご好評を頂き、2017年からは、その続編として「ダイナミック・アジアⅡ」を連載した。グローバル化の進展により、2001年に210万人だった世界の留学生総数は、2014年には450万人に増加している。そのなかで、人口の増加に伴う経済的な成長を背景に、アジア各国では高等教育の発展が急速に進んでいることが明らかになった。

 国家レベルで、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて移動し、より複雑化する社会の到来に向けて、各国は対応を迫られるようになっている。欧州では、1999年の「ボローニャ宣言」を皮切りに、高等教育における学位認定の質と水準を国が違っても同レベルのものとして扱うことができるよう「ヨーロッパ高等教育圏」を整備する、ボローニャ・プロセスが進行している。これに対応するように、アジアでも様々な国境を越えた交流プログラム(トランスナショナル・プログラム)や質保証が政府主導で行われるようになり、まさに「アジア高等教育圏」と言われるようにまでなってきた。各国は国境を越えて人材が流動するなかで、優秀な人材を獲得するため、自国の魅力的な高等教育をアピールすることに注力している。

 機関レベルにおいても、各大学が優秀な人材獲得のため、様々な高等教育のランキングを意識しつつ、他国での分校設置や、国際認証の取得、リアルだけではなく、MOOCs等の時間や場所を選ばない、新たな高等教育の展開にも積極的に取り組む等、切磋琢磨している。

 振り返って、日本はどうだろうか。昨年、発表された中央教育審議会(答申)「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」において、下図に示した通り「Ⅱ.教育研究体制-多様性と柔軟性の確保-」の具体策として、<留学生交流の推進><学位等の国際通用性の確保><高等教育機関の国際展開>が挙げられている。しかし、その実現に向けては、設置基準の改訂等も含め、いくつものハードルを越えていく必要がある。

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 世界各国の高等教育政策は、基本的に国家の経済発展のための人材育成という目的が根底にある。グローバル化が進むなかで、アジアのみならず世界からいかに優秀な人材を獲得できるかという競争が進んでいるのである。昨今、日本の大学の中期ビジョン・中期計画を見ても、『アジアで〇〇なポジションを確立する』という目標が多くみられるようになった。将来予測を見てみると、アジア各国も2025年以降は生産年齢人口が減少に転じることが推計されている。そう考えると、優秀な人材の獲得競争は、激化の一途が予想される。日本あるいは各大学が、グローバルな競争環境のなかで選ばれるために、いかに魅力的な取り組みができるのか、残された時間はそう多くはないように思われる。

リクルート進学総研所長・リクルート『カレッジマネジメント』編集長 小林 浩

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