カレッジマネジメント Vol.205 Jul.-Aug.2017

学部・学科トレンド2017

リクルートが行う調査データ、国内外の先進事例、人材市場、専門家の解説などにより、「大学経営のサポート誌」としてタイムリーなテーマを発信しています。

編集長が語る 特集の見どころ

 法、商、経済、文、医、農、工、理など、大学の学部名称(学士の学位に付記する専攻分野名称の数)は、1991年までは29種類しかなかった。

 それが、設置基準の大綱化により、国際、環境、情報などを冠する名称の学部が新設され、多様化が進んだ。この背景には、社会環境の変化がある。既存の学問領域では対応できない社会課題に対し、新しい学際的な学問領域を創造することで、大学が教育・研究を行って課題解決のための人材育成を行うというものであったと思う。あれから20年以上が経ち、2014年日本学術会議「学士の学位に付記する専攻分野の名称の在り方について」の報告書を見ると、現在日本の大学の学部名称は700以上もあり、その6割はその大学独自の「唯一学部」とのことである。かなり多様化し過ぎていると感じるのは、私だけではないはずだ。

 では、その多様化した学部・学科の全体像はどうなっているだろうか。多様化した学部・学科の全体像を明らかにするために、小誌では、これまで2008年、2010年、2012年、2015年と4回の学部・学科のトレンドを分析してきた。前述したとおり、大学の学問領域は、社会環境の変化や社会課題と密接に関係している。これを単年度の志願者数で見るのではなく、中長期的な定員規模、募集状況のトレンドを見ることで、その背景や大きなマーケットのうねりというものを見ることができる。

 学部・学科のトレンド分析は、78の“単独分野”と、学際的な“複合分野”に分けて分析を行っている。特に複合分野においては、カリキュラムに基づき、どの分野とどの分野の組み合せで構成されているのか、という分析も行っている。年々複合分野の割合が増えているのは、それだけ社会課題が複雑に入り組んでいるということなのかもしれない。また、志願者の状況を見てみると、景気変動の影響が大きいことが分かる。特に就職環境や将来のキャリア形成、女子の進学率などの影響を受けているように思える。景気後退局面では、資格取得が仕事に直結する学部の人気が高まり、景気が良くなると言わば“サラリーマン予備軍”ともいえる社会科学系の人気が高まる。

 直近の分析では、人気学部・学科のトレンドは景気回復局面の影響が大きく出ている一方で、新しくできる学部・学科は将来の社会課題に対応した国際系、第4次産業革命といわれる技術革新系、そして高齢化社会に向けたスポーツ・健康分野などが増加傾向にあることが分かった。“社会の兆しや胎動”が見えてくるようにも思う。もっとも、重要なのはトレンドを見るだけでなく、新しい学部・学科が大学の理念やビジョン、役割と合致しているかどうかであることは言うまでもない。そこが合致していないと、トレンドに乗っていても社会からの支持は得られないであろう。今回の分析が、大学改革の参考になれば幸甚である。

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