学校法人 朝日医療学園 学園長 三浦 孝仁氏

(2015年3月16日更新)

学びが働くことに直結する専門学校としての使命を担い、
人間教育の充実で『人に優しい医療人』を育成

人間性が高く医療倫理をわきまえた医療人を送り出すべく
心を伝える「人づくり」に注力

 医療現場においては、医師以外にも患者様と直接接する看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の存在が必要不可欠です。朝日医療学園は、こうしたコメディカル分野の国家資格に基づく医療技術を提供している「医療技術者養成校」です。本学園の理念は、「伝えたい技術とこころ」。技術はもちろんのこと、『人に優しい医療人』養成のため、心を伝える『人づくり』に力を注いでいます。岡山、広島に5学科を配置し、各学科それぞれが、各々の立場で短期、中期、長期の目標をたてて『人づくり』を実践しています。

 平成26年に私が大学から専門学校に移籍して感じているのは、両者の社会的使命の違いです。大学の使命は、費用と時間をかけて学問体系を明確にし、高度な研究を推進すること。一方で専門学校の使命は、人材をいかに磨き上げて世に出すかということに尽きると思います。大学以上に教育に手をかけて人間性を高め、医療倫理をわきまえた大人として送り出す。そのために必要なのは、医療に関する専門知識・技術の習得だけではありません。学園生活を通じてさまざまな形の学びがあることを、学生にはっきりと意識させるべく、学びを振り返る時間づくりの工夫も取り入れています。さらに教職員全員が「学生は財産で、卒業生が誇りであると思う教育機関」という建学の精神を深く理解し、「誰のため、何ため」を常に考え、「社会的に広く信頼される教育機関」であり続けたいと考えています。

新生「朝日医療大学校」として、初年次教育から卒後教育まで
キャリア支援の精度をさらに高める

 「患者様を幸せにする医療とは、人を愛する事(慈愛)と、知ること(叡智)」という統合医療の考えを先取りし、平成28年に岡山の5学科統合を決定しました。東洋医学と西洋医学が学べる「朝日医療大学校」として100年続く学園を目指します。

 私自身は、スポーツを通じて世界で通用する人と組織をつくるための教育・研究を行ってまいりました。その間に世界チャンピオンも育ち、学生である選手と共に大変貴重な経験ができたと感謝しています。この時期は教育者として教鞭をとり、600人を超える教え子を勉学・競技面だけでなく就職まで支援してきました。

 この経験を生かし、新生朝日医療大学校全体の教育方針を固める準備を進めています。キャリア支援等相談窓口を設置し、学習支援はクラス担任教員が責任をもって行うことを学園の教育方針としています。育成する人材像に対し、入学してくる学生の基礎学力や人間性にギャップがあるとすれば、入学直後の初年次教育方法の工夫が必要と考えています。礼儀作法を含めた初年次のキャリア教育で、医療職の魅力、覚悟などを徹底して伝えます。さらにキャリアセンターによる卒後教育の精度を高め、「朝日で学んで良かった」という卒業生の訪問が後を絶たない学園づくりに向けて取り組んでいきます。

「社会の現状を知り、進路や働き方を考えよう」をテーマに
高校からの要請を受けてキャリア講演会を実施

 日本の社会は、国立大学であっても、キャリア支援により学生たちの就職が大きく異なる時代になっています。

 私は前任地の岡山大学でキャリア開発センターを立ち上げ、キャリア教育・就職支援・正課外活動支援・普通科高校とのキャリア支援連携の仕組み等を構築してきました。しかし、大学選びと職業選択の問題を、受験生・保護者・教員がどの程度理解しているかという点に、大きな疑問を感じていました。特に地方では、子どもたちが何のために進学するかを明確にしないまま、とりあえず行けるところに行く傾向があります。私が専門学校への転職を決めた理由の一つが、その現状に抱いた疑問でした。大学進学の利点は数多くありますが、就職の視点から見ると大学進学すれば必ずしも良い企業に就職できるとは限りません。すでに文部科学省は、大学や専門学校の使命を見直し、ふるい分けなど対策を検討しているとお聞きしています。

 現在、岡山県内の普通科高校から要請を受けて「社会の現状を知り、進路や働き方を考えよう」をテーマにキャリア講演会を実施しています。高校1・2年生、教職員、保護者と対象はさまざまです。終身雇用制度の破たんなどの日本社会の変化、毎年8万人近くの中退者を出す大学を取り巻く現状、高校時代に勉強することの重要性や、大学だけでなく専門学校も進学先の視野に入れておく必要性などについてもお話しさせていただいております。

進学と職業選択の問題を理解し、子どもたちの選択肢を広げるため
専門学校生の話を聞く機会を作ってほしい

 本学園の教職員には明確なビジョンがあります。それは、「ここで学ぶことで何ができるようになるのか、医療人としての研究ではなく、患者様に対して直接どう接していけるか」を徹底して教えること。そうして巣立っていった卒業生たちの活躍により、専門学校の社会的地位を上げていくことです。治療院を擁している本学園だからこそ、多忙な医療現場では相談できない卒業生たちの専門的悩みに対応が可能です。また、医・科学センターやキャリア・センターの設置建設計画も進んでおり、これまで以上に、在校生だけでなく同窓生が情報交換や悩みの相談ができるサポート体制を整えていきます。

 高校生を教育する先生方には、急激に変遷している社会の情報をタイムリーに入手していただきたいと感じています。特に医療現場は変化が著しい分野です。学びが働くことに直結する専門学校では、その変化に対応できる実践的な卒後教育が充実しています。人の役に立ちたい、医療の世界で働きたいという子どもたちにとって、卒後教育が整っていることは大きなアドバンテージです。その点をご理解いただいたうえで、どんな進学、キャリアアップの道があるか、学生に話してほしいと願っています。

 そして、キャリア教育等で卒業生を呼んで講演をするとき、ぜひ専門学校生も呼んでください。専門学校生の身近でリアリティあふれるエピソードから、いろいろな職業の特色・魅力を知ることにつながると確信しています。

三浦孝仁氏

【Profile】

三浦孝仁(みうら・こうじ)氏
昭和55年 早稲田大学教育学部卒業。昭和57年 日本体育大学大学院修了。平成8年 岡山大学で医学博士の学位を取得。岡山大学教授、キャリア開発センター・副センター長を経て平成25年 岡山大学名誉教授、平成26年 学校法人 朝日医療学園・学園長に就任。

専門学校トップインタビューに戻る