福山大学 学長 松田 文子氏

(2015年4月13日更新)

特色あふれる備後地域。「備後」を教材に地域社会を学び
地域に根差し、地域に貢献する人材を輩出し続ける福山大学

「知行合一」の人間力養成を軸に地域の中核を担う人材を育成する

 本学創設者による建学の精神は「学問のみに偏重するのではなく、真理を愛し、道理を実践する知行合一の教育によって、人間性を尊重し、調和的な全人格陶冶を目指す全人教育」。地方における私立大学のあり方とは、地域との共生を目指し、また地域振興に直接かかわりうる人材をいかに育てるか。この二つを合わせると、私たちが育てるべき人材像が見えてきます。すなわち「人間力を備え、地域のために自ら考え、行動できる人材」、その育成という非常に大きな役割を本学は担っていると考えます。大きなミッションとしては、地域社会の中核を担う幅広い職業人の育成となりますが、いかにレベルの高い人材を輩出できるかという非常に重大な責務を担っているのです。

 本学は備後地域をはじめ、山陰、四国など「大都市圏」ではない、「地域」からの入学生を多く受け入れています。備後地域の大学ゆえに「備後」にこだわった学びを展開していますが、しかし、備後をモデルケースとして「地域」というものを知り、地域活動を通して身につけた力は、やがて学生が地元へ戻った時、あるいは別の地域へ赴任した際、どこへ行ったとしてもその人の生きる力となることでしょう。

国内外をフィールドに「地域」を学び、地域経済に貢献する人材に

 2014(平成26)年3月卒業生の就職率は98.8%(就職者583名)を達成し、学生の頑張りが表れた結果となりました。しかし、就職率はあくまで結果の一面でしかありません。今後はこの質を高め、すべての卒業生が意欲をもって、いきいきと活躍できる就職を実現することがさらに重要になってくると考えています。

 その取り組みの一つとして力を注いでいるのが、産業界のニーズに沿ったインターンシップの強化を図る「BINGO OPENインターンシップ」(2012(平成24)~2015(平成27)年度文部科学省「産業界のニーズに応じた教育改善・充実体制整備事業」採択)。大きな特徴は、インターンシップにあたって企業が学生向けに合同説明会を行うことです。事前指導を充実させ、インターンシップを行った後は成果をまとめて学内外で発表会を実施。学外の発表会においては、受入企業から担当者を招きコメントをいただいています。開始年度から徐々に評判が広がりつつあり、2014(平成26)年度の受入企業は80社を超え前年度の42社から倍増し、あわせて参加学生も倍増しました。

 これに加え「広島県ものづくりグローバル人材育成事業」の採択を受けた講座「国際経営における人材の育成と備後企業の取り組み」を開講。この講座は、本学(幹事校)、尾道市立大学、福山市立大学、福山平成大学の四大学で連携し、国際経営理論や知識と海外研修との相乗効果によって真に国際ビジネスで活躍できる人材を育成、備後地域に供給することを目的としています。
 具体的にはグローバル企業研究をはじめ、外部講師による講義を経て、総仕上げとして東南アジア研修を実施。他大学の学生と共に行動し意見を交換することは、学生にとって大きな刺激となっています。

大学・学部横断の学びを取り入れ、学生の多角的な視点を養う

 総合大学ならではの強みを生かし、学部を超えた学部横断での学びにも力を入れています。

 例として、主に工学部で取り組む地域防災関連では、心理学科(人間文化学部)と連携を行い、防災意識や被災者の心理ケアを考慮した防災研究・教育にも取り組んでいます。医療関連においては「糖尿病の治療」をテーマに薬学部、生命栄養科学科(生命工学部)、心理学科が連携。患者の訴えや診断結果をもとに各学部・学科の学生が協同し、それぞれの専門分野からアプローチを行い、治療法について討論を行う授業もあります。

 東日本大震災以降、防災の意識が全国的に高まりました。
 これを受けて本学では、阪神・淡路大震災を契機に設立した「構造・材料開発研究センター」を発展的に改組し、2014(平成26)年4月「安全安心防災教育研究センター」を設置。スマートコミュニティーの研究開発を加え、より良い地域社会の構築を目指します。
 同時に、工学部横断の共通科目を導入。「地域に生きる人と協同し、地域に貢献する人材を育てたい」。この目標を達成するために、プロジェクト方式を取り入れ地域の問題解決に取り組みます。地域の活性化に工学的な観点を加え、福山市などの行政とも連携を行います。

生まれ育った地元でリーダー、中核をなす人材となって活躍

 本学は創立40年を迎えました。これまで輩出した卒業生は3万5000名を超え、備後をはじめとするさまざまな地域に根をおろして行政や企業など各組織のトップ、もしくは中核をなす人材として活躍しています。「地域に根差し、地域に貢献する」人材の育成を目指し、本学は今後も邁進します。グローバルな活躍も地域に貢献するという観点から、海外留学・海外研修にも力を入れています。ぜひ、これからの地域を担うという覚悟をもった学生に来てほしい、と考えています。

 備後以外の地域から進学してくる学生には、卒業後はできれば生まれ育った地元に戻って活躍してほしい。
 例えば薬学部の5年生で行う、病院や薬局での実務実習は必ず学生の地元で行うなど、備後地域だけではなく地元での活躍を前提とした取り組みも行っています。
 学生の地元が九州・沖縄地区でも同様です。実習時の本学教員による指導も、もちろん現地で行っています。

 全国の大学進学率はじきに50%(2014(平成26)年度48%、文部科学省発表「学校基本調査(速報値)」)を超えようとしています。誰もが大学進学をするようにいわれていますが、まだ50%。まだ半分なのです。私が高校生にメッセージを送るとすると、その「半分しか行かない“大学”」に、あなたたちは来ようとしている。であれば、それだけの自覚をもってほしいということです。
 自分こそが地域を担うのだという覚悟で、貪欲に取り組んでほしい。全力で取り組む学生の姿勢に、私たちは必ずこたえます。

松田文子氏

【Profile】

松田文子(まつだ・ふみこ)氏
広島大学大学院教育学研究科教育心理学専攻博士課程後期修了。文学博士。これまでに広島女子大学、鳴門教育大学、広島大学、広島大学大学院、福山大学で教鞭をとり、福山大学副学長を経て2010年より現職。学校法人福山大学評議員、理事を兼任する。専門分野は教育心理学、発達心理学、時間の心理学。福山市をはじめとする備後地区への地域活動、調査に取り組み、小・中学生の自尊感情、自己効力感、社会性調査やピア・サポート・トレーニングを実施。著書に『関係概念の発達』(北大路書房、2002年)、『時間を作る、時間を生きる』(北大路書房、2004年)などがある。

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