高知学園短期大学 学長 小島 一久氏

(2015年4月13日更新)

学生が自主的に動く仕掛け作りが大切
将来を見越したキャリア教育を展開

学生の質を向上させるため、まずは大学教員の意識変革が重要

 高知学園短期大学は開学以来45年間、「食」、「医療」、「教育」という3つの分野で専門的職業人を輩出してきました。特に高知県内では、多数の卒業生が活躍しています。学生の都会流出が問題になっている近年、地域貢献している自負とともに、本学の教育レベルがそのまま高知県のレベルにつながってしまうため、責任の大きさも実感しています。

 最近の日本の社会情勢は、グローバル化、男女共同参画社会、少子高齢化など大きく変化しています。こうした社会で地域貢献を目指すためには、まず、大学の教育力を高め学生の学士力を高めることが大切だと考えています。そのため本学では、建学の精神である「平和と友愛」を基軸に、人間性と社会性を高める教育に力を入れています。ここでキーポイントになるのが、「大学の教育そのものがきちんと学生たちに力をつけて卒業させているかどうか」という点です。教育の責任は大学そして教員にあります。教育の成果が出ないからと学生の責任にしていては教育の向上はあり得ません。教員は、教育の質の保障をする責任があるということをしっかりと自覚し、わかる授業を展開していくことが必要なのです。大学の教員自身が質の高い学生を育てるという認識をしっかりもち、学生がアクティブに動いていけるような仕掛けを作ることが重要ではないでしょうか。

 中学、高校の教員を見ていると「本当に教育熱心だな」と感心させられます。子どもたちの学力を伸ばすための工夫や改善を行い授業研究も頻繁にしています。一方で大学の教員は、伝えるべき知識が豊富にあるにもかかわらず、学生の興味を喚起するような授業が十分にできていないように感じています。人間教育は、専門的な知識だけではできません。だから、地域に貢献できる学生を育成するためには、大学の教員自身がお互いにかかわりをもち、協働体制を作ることが必要不可欠だと感じています。

キャリアアップを視野に入れた将来設計を考える

 本学に入学する学生たちは、将来、栄養士、臨床検査技師、歯科衛生士、看護師、保健師、保育士、幼稚園教諭として働きたいと具体的な夢をもっている人がほとんどですが、十分に自分のキャリアプランをもてない学生もいます。18歳で将来を決めるということはなかなか難しいことです。本学がキャリアセンターを拡充させた背景は、こうした学生たちの生き方や職に対する意識を高める必要性を感じたからなのです。生活のための職ではなく、将来設計を立てていく中で、自分の仕事に対する誇り、取り組む姿勢、心構え、責任感を養ってほしいと思っています。就職に関する相談も1年生から受け付けているので、将来に対する不安を解消できるようにと願っています。

 短期大学は四年制大学と比較されることが多いのですが、短期大学だから詰め込み教育で終わりという訳ではありません。長期的な視点をもって学生を指導していますし、生涯にわたって学び続け、キャリアアップを図る意欲的な学生を育てていきたいと思います。また、子育てのために一時期離れ、子育てが一段落したので現場に復帰したいという女性が多くいらっしゃいます。しかし、医療技術が大きく進歩している中で、それに対応できるか不安で職場復帰を躊躇することも多いと聞いています。こうした人たちを再教育する場を拡大していきたいと思っています。現在本学では、歯科衛生士の再教育の場を作り、指導をはじめています。

地域と連携した学びを通して、より豊かな人間性の育成を目指す

 また、社会人としての基本的な教養として、学生の人間性を養うために、相手の立場に立って物事を考えることや、挨拶などのマナー教育をしっかり実施しています。ほかにも、医療系の学生として病院実習に参加する際は、看護師は看護職者としての責任を自覚する戴帽式、臨床検査技師は社会貢献を誓う宣誓式、歯科衛生士は原点に返る心を忘れないように継承式を行います。学生たちの意識を高めて医療現場に送り出すことで、相手の立場に立って物事を考えるようになり、プロ意識も芽生え、挨拶、言葉遣いなどもしっかりしてくるのです。儀式を行わなかったころは技術的な問題よりも人間的なマナーに対する指摘をいただくことが多くありましたが、この式をはじめてからは劇的に改善しました。技術はもちろん大切ですが、人間性を高める教育の重要性を改めて認識することができました。

 全国的に見て、短期大学は少子化の影響を多く受け、定員割れしているところも少なくありません。本学は幸いにも定員を充足していますが、今後、入学者の増加を目指すためには大学側の努力が必要です。地方の短期大学だからといって、都会の短期大学に劣るとは考えていません。結局は教育の工夫・改善次第ではないでしょうか。本学では、学位授与機構の認定専攻科を設置し四年制大学と同様に学士の資格を取得できますし、その後大学院に進みキャリアアップしていくなど手段はたくさんあります。その手段を積極的に活用し、将来に向けて自主的に取り組むことができる意欲的な学生を「どう育てるか」、そのための教育環境を「どう整備するか」が大切なのです。また、教育環境充実の一環として、地域との連携にもより一層力を入れていきます。短期大学の2年間あるいは3年間という限りある時間の中で、カリキュラムに余裕はないかもしれませんが、教科と効果的に組み合わせることで地域との連携を実現し、より豊かな人間性の育成を目指していきたいと考えています。

小島一久氏

【Profile】

小島一久(おじま・かずひさ)氏
1943年1月8日生まれ。近畿大学理工学部卒業後、1967年に高知県立高等学校に教諭として採用。1983年から高知県教育委員会事務局に所属。1994年に高校教育課指導主事、文部科学省派遣研修、高校教育課管理主事・人事班長・企画主監、高校教育課課長を務める。1995年に高知県立安芸高等学校校長就任。1997年に高知県教育委員会事務局 教育次長、2000年に同理事に就任。2002年より高知県立高知追手前高等学校校長就任。2005年に学校法人 高知学園 高知学園短期大学 講師として勤務。2008年に副学長、2014年に同学学長に就任し現在にいたる。2010年から高知県教育委員会 委員長も兼任している。

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