新潟薬科大学 学長 杉原多公通氏

大学側が考えた一方的な教育ではなく、
学生が感動しながら学び、満足感を得られる教育を提供

『医療・健康系総合大学』として革新し続ける大学
 新潟薬科大学は薬学部(薬学科)を擁する単科大学として、1977(昭和52)年4月、新潟県で最初の四年制大学として開学した48年の歴史と実績を誇る大学です。
 2002(平成14)年4月には、応用生命科学部(応用生命科学科・生命産業ビジネス学科)、そして、2023(令和5)年4月には、医療技術学部(臨床検査学科)と看護学部(看護学科)を開設し、現在、4学部5学科、大学院2研究科からなる『医療・健康系総合大学』として進化し続けています。
 18歳人口が大きく減少していくという時代の変化のなかで、新潟薬科大学は教育方針をいかに改革し、学生が「信頼されるプロになる」ための本学ならではの特色ある教育プログラムを提供していくのか、創立50周年に向けてさらなる革新を目指していきます。

医療系学部の教育にも「社会連携教育」を取り込む
 新潟薬科大学の大きな特徴の一つが「社会連携教育」を重視していることです。特にここ10年、社会連携教育には積極的に取り組んできており、学生が社会資源を活用して“実社会で活きる”知識やスキルを、実体験を通して獲得しています。
 例えば、応用生命科学部 生命産業ビジネス学科は、食品に関するビジネスを学ぶ学科です。これまで、地域の特産品の果物を使ってかき氷のソースを作り、昨今、流行っているかき氷の先駆的な取り組みを通して話題を提供。また、米どころ新潟のおいしいお米を使って甘酒を造ったり、トマト農家と連携して、新潟の郷土料理“のっぺい”をトマト味にして開発・販売するなど、学生たちのアイデアは実際にビジネスにつながっており、教室の中だけでの学びでは知ることのできない多くのことを、4年間を通して経験しています。
 また、薬学部では授業の一環として週末に公民館などに出向き、地域の方々との交流を通して、薬のことや病気の予防法・治療法など、健康に関するさまざまな話をする場「健康自立セミナー」を開催しています。担当するメインの学生は1・2年生です。このセミナー開催に向けて学生は事前に調べ、学んでおくことがたくさんあります。さらに、セミナーでは地域の方からのさまざまな質問に答えなければならない場面もたくさんあります。
 このセミナーを通して、学生たちには早い段階から病気に興味をもち、病気を身近に感じてほしいという思いと、地域の方々とのコミュニケーションの大切さに気づいてほしいという思いがあります。学年が上がれば、授業で専門分野について学びますが、その前の入り口の段階で興味や関心をどこまで深めるかという導入教育、そして地域の方々と仲良くなるツールとなるのがこの取り組みです。通常のカリキュラムで手一杯になりがちな医療系大学。本学のような医療系の大学における社会連携教育は、珍しい取り組みではないでしょうか。
 2023年4月に開設した医療技術学部(臨床検査学科)、看護学部(看護学科)についても、こうした取り組みを企画して、運営していきたいと現在準備を進めています。

学生が感動しながら学べる教育環境の提供を考える
 新潟市秋葉区の地域課の協力を得てスタートした本学の数々の取り組みが噂となり、ほかの地域からも多くのオファーを頂きましたが、残念ながら新型コロナウィルス感染症の影響でこれらの取り組みは中断しました。しかし、ここにきて状況も落ち着き、取り組みの本格的な活動再開に向けて、さらに充実した内容になるように、その調整を進めているところです。
 最初に薬学部の「健康自立セミナー」の授業を受けた学生は既に卒業していますが、卒業時に、「一番印象に残っている授業は?」とアンケートを取ると、多くの学生が「1・2年生の健康自立セミナー」と答えています。そして、病院よりも薬局の薬剤師として就職した学生がとても多いという結果になっています。さまざまな理由はありますが、1・2年生から地域の方々との交流を通して学ぶことの楽しさを体感してきた学生にとって、病院よりも薬局薬剤師のほうが自分に合っていると感じている学生が多いという結果ではないかと考えられます。
 今後も、さまざまなフェーズで社会連携教育を推し進めていきます。それが学修成果の見える化につながっていくと考えています。そして、こうした教育が進んでいけば、学生自身も学ぶ意欲を高め、より積極的に学修に取り組んでくれると考えます。大学側が考えた教育を提供するだけでは、学生は満足してくれません。学生が感動しながら学ぶ気持ちになってくれるには、どういう取り組みが良いのか。新潟薬科大学では、これを常に考えていきます。

ニコニコしながら、前を向いて進んでほしい
 パッション(情熱)とエターナル・オプティミズム(直訳:永遠の楽観主義)。これは私の恩師が好きだった言葉です。直訳すれば、永遠の楽観主義となりますが、そういう意味で使われていたのではありません。「諦めず、前向きに」ということを伝えたくて、この言葉を使われていました。どんなことがあってもニコニコしながら前に向かえば、必ず結果が得られる。そこには、パッションが必要です。どんなことでもかまいません。常に一生懸命で諦めない姿勢をもってほしい。このことを、高校の皆さんそして本学の学生には伝えたいと常に思っています。

【Profile】
杉原多公通(すぎはら・たくみち)氏
1962年愛知県に生まれる。1986年3月 東北大学 薬学部 製薬化学科 卒業、1988年3月 東北大学大学院 薬学研究科 博士前期課程 修了。1991年3月 東北大学大学院 薬学研究科 博士後期課程 修了(薬学博士)。その後、日本学術振興会 特別研究員(東北大学薬学部)、米国Purdue大学 理学部化学科 Visiting Scholar(上原生命科学振興財団ポストドクトラルフェロー)、米国Purdue大学 理学部化学科 博士研究員、東北大学 薬学部 助手、新潟薬科大学 薬学部 教授、東京理科大学 客員教授等を経て、2018年4月 新潟薬科大学 副学長。2024年4月 新潟薬科大学 学長に就任。

【新潟薬科大学(スタディサプリ進路)】

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