広島修道大学 学長 市川 太一氏

(2015年5月18日更新)

時代の変化を見極めながら、
地域社会の発展に貢献できる新時代のリーダーを育てる

地球規模で、急速に進むパラダイムシフト

 かつてないスピードで地球規模のパラダイムシフトが進行している現代。大学を取り巻く環境を見ても、少子化による18歳人口の減少は、大学生の質の変容や大学経営自体にも大きな影響を与えています。

 また視界を広くとれば、ますます進展するグローバリゼーションの中で、今や地方における経済活動も世界経済とのつながりをなくしては成り立ちません。女性が結婚や出産を経験したあとも変わらず活躍できる社会の実現は、現代社会の喫緊のテーマです。さらに急速な社会変化は、学生の就職観にも大きな影響を及ぼしており、それは大学の役割についての議論にもつながっています。

 そうした変化の行方を見定めた自己革新は、本学にとっても、また「地域社会にとって有為な人材を育成する」という使命遂行のためにも不可欠です。

実践的な英語力と国際的視野を養う「グローバルコース」

 2014年度から本学では、新たな時代に適応した地域リーダーの育成のため、全学部を対象に「グローバルコース」と「地域イノベーションコース」の2つのコースを開設しました。

 「グローバルコース」は日本企業の海外進出や外資系企業の日本市場参入、さらに国際連携の強化や人的な国際交流が進む中で、「グローバルな視野をもちながら地域で活躍できる人材」の育成を目的としています。具体的には、2年次後期にアメリカの本学協力校であるパシフィック・インターナショナル・アカデミー(PIA)へ留学。そこでは英語学習による語学力の向上と併せて、実際のアメリカ社会を体験するサービスラーニングプログラム(インターンシップ)が含まれているのが特徴です。

 また国際交流については、本学では積極的な取り組みを行っており、2014年度の海外留学派遣学生は230名、世界11カ国・1地域の28大学と協定を結んでいます。加えて2015年度からは大学で授業を受けながら、ディズニーワールドでのインターンシップに参加できる「バレンシアカレッジ・ディズニーセミナー」もスタート。多彩な選択肢の中から、グローバル体験を積むことができます。

地域に貢献できる人材を育成する「地域イノベーションコース」

 一方、「地域イノベーションコース」は「専門性をもって、持続可能なコミュニティの発展に能動的に寄与できる」、「地域課題から、新しい価値の創造ができる」と定義した「地域イノベーション人材」を育成するためのコースです。ここでは広島を深く知ることを起点に、地域と連携したプロジェクト型の学びやサービスラーニングなどの実践的な授業を配し、広島はもとより世界中の“地域”で活躍できる力を養います。2014年の例では、廿日市市や北広島町などの行政やNPOの方々と連携して、地域課題を実践的に解決するプログラムを体験。参加した学生たちは「普段接点のない方々との協働を通じて、多くの気づきを得ることができた」と感想を述べています。

 また、本学では文部科学省の大学改革推進事業のプログラムとして「ひろしま未来協創プロジェクト」(COC事業)を展開しています。これは「教育」「研究」「社会貢献」の3つを軸に、本学が産業界や行政・NPOなどと連携して持続可能な地域社会づくりと地域イノベーション人材の育成に取り組むものです。

 これまで「地域社会の発展に貢献できる人材」を育成するための本学の具体的な取り組みをご紹介してきましたが、それらすべてに共通する特徴は「経験型の教育」にあります。従来型の講義形式に加えて、アクティブラーニングやPBL(課題解決型学習)・サービスラーニングなどの体験を伴う授業をふんだんに取り入れ、地域リーダーとしての実践力を備えた人材育成を意図しているのです。

すべての取り組みがシナジーとして発揮される総合大学へ

 教育環境の整備についても、本学では長期的な視点で計画的に進めています。
2013年4月には図書館にラーニング・コモンズを新設。半年後の10月には400名以上の収容が可能な2つの大講義室と約100の研究室、大学院研修室を備えた「知」の拠点・3号館が完成。さらに2015年3月には、国際センターやひろしま未来協創センター、学習支援センターをはじめ最新技術を導入した講義室・心理学実験室などを備えた「協創館」が竣工しました。理想の学びをサポートする環境はますます充実しています。

 また2015年4月には、学校法人鈴峯学園との合併によって広島修道大学附属鈴峯女子高校・鈴峯女子中学校が新たに誕生しました。そして2016年4月には教育学科、2017年4月には健康栄養学科・心理学科の設置を予定しているなど、資格や将来の職業に直結した学びに対する要望にこたえる施策を打ち出しています。(※教育学科は認可申請中、健康栄養学科・心理学科は構想中)

 ますます複雑化する時代の中で、その変化に適応できる地域社会の真のリーダーを育てていくために、シナジー的に理想の学びを実現する総合大学への歩みを、本学は着実に進めています。

市川太一氏

【Profile】

市川太一(いちかわ・たいち)氏
1975年、慶應義塾大学法学研究科博士課程政治学専攻単位取得、博士(法学)。1976年、広島修道大学法学部専任講師。その後、教授、ジョージタウン大学客員研究員、法学部長などを経て、1996年から2002年まで広島修道大学学長・短期大学部学長。全国コンソーシアム協議会代表幹事、一般社団法人教育ネットワーク中国代表幹事を務め、大学連携に尽力。2010年から2度目の学長に就任。学外では日本私立大学連盟監事、国立大学法人評価委員会委員(文部科学省)、広島県ボート協会会長などの役職を兼任。専門分野は現代政治論、大学論。著書に『「世襲」代議士の研究』(日本経済新聞社)、『30年後を展望する中規模大学』(東信堂)などがある。

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