創形美術学校 学校長 山本哲次氏

(2016年9月16日更新)

10年後に自分を誇れる
そんな人材を育てたい

2学科5専攻、少人数制の3年制美術専門学校

 本校は、2学科5専攻の3年制美術専門学校です。「ファインアート科」には絵画造形専攻と版画専攻が、「ビジュアルデザイン科」にはイラストレーション・絵本専攻、グラフィックデザイン専攻、アニメーション&コミック専攻があります。
 約120名の学生数に対して教員は70名、全員が現場の第一線で活躍するプロフェッショナルです。本校が養成するのは、プロのクリエイターですから、「プロの仕事はプロから学べ」という方針のもと、教育体制を整えています。学生には、教員をロールモデルに、大いに刺激を受け自分なりのスタイルを確立してほしいと思っています。技術の向上はもとより、たくさんの個性に触れながら、発想力や企画力を磨いてほしい。それが学生たちに一番伝えたいメッセージです。

今の流行は、未来永劫続くわけではない

 なぜ自分なりのスタイルを確立してほしいか、理由は業界特有の時間の流れが物語っています。クリエイティブの世界は、とにかく変化が速い。流行もスキルも、最近ではメディアすらも常に変化しています。グラフィックデザインはもちろん、アニメや現代美術の分野においても、パソコンはクリエイターの必須ツールになっています。しかし、パソコンのOSもソフトウェアも常にバージョンアップしています。またこうした流れは今後も続き、さらに新しく便利なツールが次々と生まれてくることでしょう。学校ではツールとしてのパソコンは学びますが、ここで学ぶことは基礎技能に過ぎません。むしろ卒業してからがスタートであり、自分自身で学びを進めていく必要があるでしょう。ですから在学中は、基礎技能の習得に加え、自分のスタイルにとことんこだわってほしいと思います。なぜなら表現のもととなるスタイルはオリジナルであり、普遍的な力を持っているからです。 


時代とともにクリエイターの需要は増えている

 近年、クリエイターの社会的需要は高まっているというのが、私の実感です。クライアントがクリエイターに求めるのは美術的な表現だけではありません。クリエイター特有の発想力と企画力を活かし、企業の経営や事業戦略のコンサルティングを行うことも珍しくありません。では、学校を出たらすぐにでもこうした世界で活躍できるかといえば、それは少し違います。社会に出てものの見方やビジネスの仕組みなどを学び、様々な経験を積んで初めて一人前の仕事ができるようになるのです。ですから学生には、長い目で将来を考え、今できることに精一杯力を尽くすように働きかけています。クリエイターの世界では、5~6年の修行は当たり前です。しかしこうした経験があるからこそ、クリエイティブの力を使って社会に貢献する方法を学ぶことができるのです。
 では将来を見据えて、今何を学ぶべきなのでしょうか。それは本質を見抜くために役立つ基礎力です。本校では、磨くべき「基礎力」として5つの力を掲げています。それらは「技法力」、「観察力」、「構成力」、「PC力」、「色彩力」です。このような力はすべて表現の基礎であり、しっかり身に付けることが将来の応用力に結びついていきます。


有能なディレクターを育てるため、新しい授業を創造

 本校では、新たに「先端メディア アート&デザイン」という授業を立ち上げました。これは、それぞれの専攻をまたいで学べる分野横断型の授業であり、2年次から選択することができます。ここでいう先端とは、デジタル技術のことを指しています。デジタルは今の時代には欠かせないメディアであり、リテラシーです。この授業を通して学生には、将来に広がる活躍フィールドをイメージしてほしいと思います。
 本校が育てるのは、与えられた仕事をこなすオペレーターではありません。自ら新しい価値を創造できる有能なクリエイターです。今後、技術の進展に伴い、社会やビジネスの構造は大きく変化していくことでしょう。それでも物事を多角的に観察できる力や課題解決力が備わっていれば、業界を問わずどんなニーズにでも対応することができます。表現の舞台となるメディア自体を学び、さらに表現方法を学ぶという「先端メディア アート&デザイン」のアプローチが、クリエイターとしての創造力を磨いてくれることでしょう。

ディレクションができるクリエイター

 既に述べましたように、プロフェッショナルのクリエイターに不可欠なのは、経験と実績、そしてそれを活かした発想力や企画力です。美術やデザインを仕事にするのは大変だと、思われる方もいることでしょう。またクリエイティブに関わる仕事といえば実際に自分で作品を作る人をイメージしがちです。しかしそれは、クリエイティブの一つの側面にすぎません。新しい価値を創造し、社会に提案していくのもクリエイターの仕事なのです。こうした業務を担う人をクリエイターの世界では、アートディレクターと呼んでいます。ディレクション力を備えたクリエイターになりなさいと私が学生たちを指導する理由は、そこに大きなニーズがあるからなのです。
 表現者としての基礎力と感性を備え、時代の変化と社会ニーズに柔軟に対応できること。それが時代の求めるクリエイターの姿です。またそれはクリエイター養成を行う本校に求められていることでもあります。「好きな美術やデザインを仕事にする方法がここにある」そんな学校づくりをしていきたいと思います。

山本哲次氏

【Profile】

創形美術学校 学校長 山本哲次(やまもと てつじ)氏
1962年千葉生まれ。東京藝術大学大学院V.C.D専攻修了。花王作成部を経て1993年 山本デザイン室を設立。花王、りそな銀行をはじめとした広告、パッケージ。東京交響楽団、クラリーノ、NewYorkerなどのCI.VIのデザインに携わる。日本雑誌広告賞、グッドデザイン賞、デザインフォーラム、世界ポスタートリエンナーレトヤマ他、受賞多数。公益財団法人日本グラフィックデザイナー協会 総務財務委員・東京TDC会員・東京都中央区サッカー協会理事。

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