学校法人野上学園 理事長 野上耕一氏

(2017年5月15日更新)

動物と触れあい、動物から学ぶことで、 「生きる知恵」「生き抜く力」をもった人材を育成する

「動物に関連する仕事の素晴らしさを広めたい」という思いで開校

 もともともっていた動物学者になりたいという気持ちと、会社員時代に飼ったダックスフントとの出会いが、動物と関わる仕事をめざすきっかけです。その形が「学校の開設」というものでありました。当時のペット業界は、買い物に行っても「いらっしゃいませ」の挨拶がない、商品を定価よりも法外に高く販売するなど、常識的なことができていない店がとても多かったように思います。

 専門的な知識をもっていなかったため、放送大学で、それこそ生物に関することは何でも学びました。そしてわかったことが、物理学や航空力学などあらゆる学問の基礎となっているのは「動物学」だということです。鳥がいたから飛行機が、魚がいたから潜水艦ができました。また、”いじめの問題”も動物行動学の観点から群居性生物の世界を通して答えをみいだすことができるのです。

「動物を取り巻く社会環境を何とかしなければいけない」、そして、「動物の素晴らしさをもっと伝えたい」という2つの側面が開校の原点です。

常に疑問をもち、追究することを大切にしていく

 本校はまず“当たり前のことを一生懸命する”という観点から、挨拶と掃除は徹底して行っています。これは、本校の建学の精神である「如何なる時も凡事徹底」で表していますが、誰も見ていない時でも徹底して取り組むということです。そのために本校では、単に技術を教えるのではなく、「なぜ」という課題をたくさん見つけ、「なるほど、そうだったか」と思考する力が身につく教育をしています。教師の言うことだけを聞いている学生は、先生を超えることはできません。学生自身が常に疑問と好奇心をもち、クリエイティブな発想力をどんどん発揮することが、これからの人材育成には必要だと思います。

 その上で社会人としての基本をしっかり身に付けることで、自分の根幹となるものをしっかりと養うことができるのです。だから、動物の世界はもちろん、どんな世界に進んでも生き抜くことができる人になれると考えています。先ず人間力であり、トリマー、看護師、トレーナーの資格は奥の手であると学生たちには常々話していますが、自分の根幹をしっかりと太らせて、世の中に羽ばたいていってほしいと思っています。

動物の仕事に対するステータス向上にも貢献していきたい

 動物の仕事というと、世間的にはまだまだ浸透していない部分がありますが、私は動物を通じて社会貢献できる学生を輩出することで、そのマイナス要因を改善できると考えています。その手段として一人ひとりを大切にする少人数教育は必要不可欠です。実際に、神戸校などでは、かなりの人数の入学希望者をお断りして、少人数であることを徹底しています。しかし、一人でも多くの学生に伝えていくためにも、平成29年度には徳島、神戸に続いて3校目となる東京校を立ち上げました。現在、動物看護師、トリマー、ドッグトレーナー、飼育員の育成はもちろん、アニマルセラピーにも力を入れており、数々の実験を通してエビデンスを取得し、動物看護学会で論文発表も行っています。

 海外との交流にも力を入れていて、動物園を併設したカルフォルニアのモアパークカレッジをはじめ、イギリス、フランス、イタリアといったヨーロッパ諸国、アメリカ、オーストラリア、台湾、シンガポール、マレーシアなどの学校や提携ショップを通じた研修、技術交流を行っています。海外では動物の看護師資格のステータスがとても高く、働いている人たちも自分の仕事に高い誇りをもっています。日本でも、動物の仕事に対するステータスの向上に貢献していきたいと常に考えています。

求めているのは、素直で向上心がある学生

 高校時代成績があまりよくなかったという学生は、実は勉強の仕方が分からなかっただけかもしれません。そういう学生は、勉強する方法さえ分かれば、必ず伸びていきます。だから本校では、「辞書を引く」「音読」「計算」の3つを意識的に授業に取り入れています。人間は視覚だけでは暗記する力が弱く長期記憶に残りにくいのです。

 そこで、辞書を引くという作業を合わせることで、手続き記憶がプラスされるのです。音読も、声に出すことで漢字を覚えることができます。例えば小論文を書かせた場合、自分で書かずにコピペしていたら、読めないからすぐに分かります。講師の方には「知識というよりは、勉強のやり方を徹底的に学生に教えてあげてください」といつもお願いしています。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私自身が経験したように、アドバイスに対して素直に取り組み、常に上を向いて進んでいける学生に、ぜひ本校で学んでいただきたいと思います。

壮大な夢の実現を目指して、これからも歩み続ける

 今の人は就職に対して後ろ向きで、ともすれば恐怖心さえもっています。もちろん、中学や高校で職業体験をしていると思いますが、短期間のお客様的体験では何も分からないと思います。海外では1年や2年といった長期間で就業体験できる制度が整っています。やりたい仕事を体験し、向いていないと思ったら学び直すことができます。将来に安心できるから、学ぶ意欲も高いのでしょう。そういう制度が日本にも浸透すればいいと思います。

 私の将来の夢は、東京と大阪に円柱の大きなビルを建てることです。総合動物病院、学校、老人ホームが併設されていて、ビル内で犬や馬のセラピーが受けられる場所にしたいですね。地下の大きな水槽では、イルカセラピーもできるようにしたいと考えています。壮大な夢だと思いますが、これからも「凡事徹底」を貫き、私自身一歩一歩夢実現への道を描いていきたいと思います。

野上耕一氏

【Profile】

野上 耕一(のがみ・こういち)氏
1956年神戸生まれ。慶応義塾大学経済学部通信課程中退後、株式会社アサヒペン入社。1983年に高松営業所所長を経て1985年に退社。放送大学にて動物に関することなどを学び、2007年に学校法人野上学園を設立。NPO法人 APPROACH FOR LIFE SAVER理事、NPO法人 日本社会福祉愛犬協会理事、アジア畜犬連盟理事も務めている。

【東京ブレーメン動物専門学校の情報(スタディサプリ進路)】

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