学校法人ミネルヴァ学園 目白ファッション&アートカレッジ 理事長・校長 小嶋昭彦氏

学生自身が、自分のセンスに気づき、磨き、高めていく
業界のプロたちが愛をもって導く教育を大切にしたい


アメリカでのハイスクール時代にファッションと出合う
 本校の創立は1938年。初代校長の内藤政子が渋谷に洋裁研究所を設立して以来、80年以上の歴史を誇っています。後を継いだ母の時代に専修学校となり、ファッションやデザインの学校へと進化しながら私へと引き継がれてきたわけですが、私がファッションの仕事に関わるようになったのは、母の影響ではありません。
 私はほとんどの青春時代をアメリカで過ごしました。元町で生まれた私は、父の仕事の関係でイギリスで幼少期を5年間過ごしました。その後帰国したのですが、どうしても日本的な文化にうまくなじめませんでした。そこで一念発起して中学2年の時に単身米国に渡り、その後はずっと米国の学校で学びました。
 そんな私にファッションの面で大きな影響を与えたのがハイスクール時代に出会った友人です。彼は香港の大富豪の息子で、いつもハイセンスなファッションで決めていました。クローゼットを見せてもらうと、アルマーニのスーツとかヴァレンチノのジーンズなどがずらりと揃っている。そんな服を借りたり自分でも買ったりしているうちに、どんどんファッションにのめり込むようになり、大学ではファッションを専攻することにしたのです。

プロに学び、センスを磨き学生のモチベーションを上げる教育
 選んだ学校はニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザイン(パーソンズ美術大学)です。当時デザインを学ぶことに定評のあったパーソンズは、第一線で活躍している業界人たちが教員として本気で教えてくれることが大きな特徴でした。200人ほどいた同級生で卒業できたのは50人ぐらいと教育は凄く厳しいものでしたが、その分かなり鍛えてもらえました。例えばパーソンズには「クリティック」というものがありました。マークジェイコブス(卒業生、元 ルイヴィトンのデザイナー)やカルバンクライン、マイケルコース、アナスイといった著名デザイナーたちがデザイン課題を出し、優秀な学生はその作品を年度末のファッションショーで発表してもらえるのです。ファッション界で生きていくためにはダメなデザインは製作すらできないという厳しい指導を受けながらも、私たちは作品をファッションショーで発表させたいと必死でしたし、審査するデザイナーも自分が選んだ作品ショーの成功がかかっているのでクォリティを上げるためのアドバイスも本気なのです。
 「クリティック」の素晴らしさを実感していた私は、このプログラムを学校に関わるようになって真っ先に取り入れました。本校の教育には、他にも私がパーソンズ時代にその良さを実感したことを積極的に取り入れています。そしてまた、自分自身が業界で働きだして感じた事、必要な事、必要でない事など、絶えず業界の知り合った人や友人などと話をして感じた事なども十分考慮したうえで、「業界で活躍しているプロが教える」、「センスを磨くための教育」、「学生が自ら本気になれるようなモチベーションを高める仕組み」などを教育の中心にしました。そして、そのどれもが大きな成果を上げていると思っています。

ファッションで成功するためにはプレゼンテーション能力が必要
 教育のなかでもう一つ大切にしているのは、プレゼンテーション能力を身に付けるということです。自分の希望にあった仕事に就くために必要なのは、実はプレゼンテーションの力です。仕事というのはまず小さなことから始まるものです。それからさまざまな機会を捉えて自分をアピールすることで、センスや技術を認めてもらい、少しずつ大きな仕事を任せてもらえるようになっていきます。つまり、どんなに力があっても自分の能力をしっかりプレゼンテーションできない人は、かなり厳しい状況に置かれてしまうのです。だから本校では「プレゼンテーション能力」を養うことにも重きを置いています。例えば「商品企画」という授業では、まず自分を知ることから始めてそれを他の人に伝えていくというステップで、自分のセンスを客観的に知りそれを磨いていけるように授業を構成しています。さらに、大小さまざまな規模の発表の場を数多く用意することで、学生たちは自然にプレゼンテーション能力が養われるようになっています。

在学中も、卒業してからも愛をもって導くのが教育
 本校のファッション教育のコンセプトは「リアルクロース」です。夢物語のような服ばかり作るのではなく、かといってファストファッションのように「安く」だけでもなく、現実的に売れる服を目指してしっかりと品質の良いものをセンス良く作る。ファッション業界が求めているのはそんな力をもった人だと思います。
 ファッションというのは最終的にはビジネスです。「あなたのデザインが良かったから服がよく売れた」「あなたの考えた商品、ディスプレイ、企画がヒットしたおかげでビジネスとして成功した」。そんな評価を積み上げることによって、だんだんと自分のやりたい仕事をさせてもらえるようになっていく。それがファッションの世界です。
 もっとも、学生たちは最初からそんなことを思ってはいません。最近では自分がいったい何に向いているかすらわからないという学生も増えています。誰もが何も知らないところからスタートするし、みんな悩むのです。でも、本校の学生たちはそこからスタートして、技術を身に付け、自分のセンスに気づき、それを磨いて自分をしっかりプレゼンテーションできる力を身に付けて卒業していきます。そんな目標に向かって、この世界で活躍しているプロたちが、愛をもって導いていく。それが本校です。
 ファッションの世界に限りませんが、人生にはいろいろな壁がありチャレンジがあります。それは卒業して仕事を始めてからもあることです。だから卒業してからも、悩んだらいつでも訪ねて来なさいと学生に言っています。それが教育なんだと思うのです。アットホームな、ファミリー的な良さがある。それが本校の良さだと思っています。



小嶋昭彦氏

【Profile】

小嶋昭彦(こじま・あきひこ)氏

1965年生まれ。米国パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(パーソンズ美術大学 ファッションデザイン科(BFA))卒業後、ニューヨークのメゾンでファッションデザイナーとして働く。1995年に目白ファッション&アートカレッジに専任教員として参加。2009年に校長、2011年から理事長に就任。

【学校法人ミネルヴァ学園 目白ファッション&アートカレッジの情報(スタディサプリ進路)】

専門学校トップインタビューに戻る