昭和薬科大学 学長 山本恵子氏
学生を中心に考えた教育や指導で
高い教養と豊かな人間性を育みます
学びを通して教養を高め、大きな人間に
昭和薬科大学の前身は、1930年に設立された「昭和女子薬学専門学校」です。設立以来90年もの間、薬学教育の伝統校として、薬と医療に関わるさまざまな分野に卒業生を輩出してきました。この間、幾多の試練にも見舞われましたが学生、教職員、保護者の協力によって学園を盛り上げてきたことが今日の礎となっています。
2006年からスタートした6年制薬学教育においても、豊かな人間性を備え、創薬から臨床に至る薬学の幅広い分野で、薬の専門家として人類に貢献できる薬剤師を育ててきました。本学では、国家試験だけを目指すのではなく、6年間の学びを通して学生一人ひとりが教養を高め、大きな人間となって社会に出て行ってほしいと考えています。
また、豊かな自然と施設が調和した本学のキャンパスには、薬学の教育・研究に理想的な環境があります。講義棟、実習棟、研究棟はそれぞれ独立した建物で構成されていながらも、これらの建物は機能的にアクセスコリドールで一つに結ばれ、「独立と融和」という建学の精神を象徴しています。
総合力のある薬剤師の育成を目指して
医薬分業が進むなか、病院薬剤師にはチーム医療において、患者さんへの薬物治療による積極的な役割を果たすことが期待されています。一方、地域医療や在宅医療に貢献する薬局は、地域に密着した「健康サポート薬局」としての機能を担っていく方向性が国から示されており、薬剤師には、今後、健康管理やセルフメディケーションの信頼できる身近な相談相手として多くの人と向き合うことが求められます。
このような社会の要請に応えていくためには、薬の専門家としての知識・技能習得はもちろん、教養を高め、豊かな人間性を身につけた総合力のある薬剤師の育成が必要となります。そのため、昭和薬科大学のカリキュラムは薬剤師としての資質向上が図られるように構成されており、さらに、高度な医療に貢献できる薬剤師の育成を目指した質の高い教育・研究体制を構築し、多様な取り組みを展開しています。
2020年度新入生への対応について
2020年1月中旬から始まったコロナ禍のなかで、本学では第一に生命の安全、第二に学びの継続を旨として大学運営を行ってきました。この1年、オンライン授業の実施や学年暦の変更、学生の生活・学修支援対策などさまざまな問題に取り組んできましたが、予定していた2020年度の学事を年度内に終了させることができました。
2020年度240名の新入生に対しては、入学式を秋に延期することを3月の時点で決定し、4月13日からガイダンスをオンラインで、また、前期授業は2週間遅れの4月20日からオンラインにて実施しました。対面授業へのこだわりはありましたが、それでもオンラインへの移行はスムーズで、「通学時間を有効に使って、集中して学ぶことができる」「チャットで質問すると、授業中にすぐに答えてもらえる」など学生の評判も上々でした。
昭和薬科大学には15年以上も前から、すべての必修科目の対面授業を収録し、それを受講生は2年間オンデマンド視聴できるシステムを導入してきました。今回のオンライン授業導入への教員の戸惑いが少なかった理由のひとつは、こうした背景があったからだと考えています。オンライン導入直後には、音声が途切れる、映像がフリーズするなどのライブだからこそ生じる通信環境の問題にも直面しましたが、これを機に今後の教育を考慮して、学生全員にICT環境を整えるために5万円を支給したほか、経済的支援として月額10万円を12カ月まで無利子で貸与する奨学金制度を用意しました。
2021年度新入生の受け入れ体制について
2020年度の課題を踏まえ、2021年度の新入生受け入れはコロナ禍前までとは違ったやり方が必要であるという考えから、全学を挙げての部署横断的メンバーから成る新入生対応に特化したワーキンググループを立ち上げました。その取り組みの内容は、新入生受け入れに関する学修面および生活面を含むすべての問題点を洗い出して改善について検討し、実践することであり、質の高い新入生対応を目指しています。
大学は学びの場であると同時に人との交流の場、さまざまな体験をする場であり、キャンパスライフを通して人間的にも大きく成長する場となります。特に1年生については、入学直後の4月、5月は対面授業を多く取り入れるなど、友達づくりや大学の環境に慣れる機会を優先的に作っています。また、4月末より保護者説明会のオンデマンド配信、教員(アドバイザー)と保護者(12~13名)によるオンライン懇談会の開催などを行い、保護者様に大学生活や教育について理解を深めていただく機会を設けています。
昭和薬科大学では教職員が一丸となって、スピード感をもってさまざまな問題に取り組み、1年後、「新入生の満足度は高かった」と報告したいと考えています。
【Profile】
山本恵子(やまもと・けいこ)氏
1977年千葉大学薬学部卒業、1978年同大学院薬学研究科修士課程中途退学。帝京大学薬学部助手、東京医科歯科大学助教授を経て2007年より昭和薬科大学教授。2013年昭和薬科大学副学長、2018年昭和薬科大学学長就任。2017年より日本ビタミン学会理事。研究活動で2018年度日本薬学会学術貢献賞、2021年度日本ビタミン学会賞を受賞。
専門分野:薬学