亜細亜大学 学長 永綱憲悟氏

「楽しくなければ大学じゃない 面白くなければ学問じゃない」
国際交流の先駆として、よりオープンな大学へ


国際交流の歴史を刻む4つの節目
 本学の特色を簡潔に表現すると、「創立80年の歴史をもつ、国際交流が豊かな大学」といえるでしょう。2021 年、本学は創立80年を迎え、この記念すべき年に私は12代目の学長に就任いたしました。本学の国際交流は、現在では広く認知されていますが、その歴史の中には大きく 4つの節目があります。
 1つ目は、1954 年のこと。本学の前身である日本経済短期大学が、香港からの留学生を受け入れました。戦後の日本で96人もの留学生を受け入れることになったこの事業は、非常に画期的なものでした。当時の社会事情により関係各所との交渉などは困難を極めたようですが、地元の武蔵境商店街からは大歓迎を受けたという記録が残っています。
 2つ目は、アメリカプログラム(AUAP)の立ち上げです。1988年のパイロットプログラムを皮切りに、1989 年には第一回目として 559 人の学生を5ヵ月間アメリカに派遣しました。それまで留学といえば英語力に優れていてかつ、経済的に余裕のある、ごく限られた一部の人が経験できるものでしたが、この常識を打ち破り、意欲と自立心をもっている人であればアメリカで学べるという、新たな留学モデルを誕生させたのです。
 このプログラムは本学の知名度を高めるきっかけになり、現在までに累計1万4000 人以上の留学経験者を輩出しています。
 3つ目は、2004年にスタートした「アジア夢カレッジ-キャリア開発中国プログラム-」です。私もその立ち上げに関わりました。中国・大連の大学で中国語を学び、加えて現地でインターンシップも行うプログラムで、特に海外でのインターンシップは、当時はあまり前例がなく、注目を集めました。
 4つ目は、その流れをくんだアジア地域でのインターンシップです。直近では、2019年度に国際関係学部がシンガポール、香港、中国、マレーシア、タイ、台湾などの企業でインターンシップを行いました。都市創造学部でも、アジア地域でのインターンシップを取り入れています。
 2020年度以降は新型コロナウイルス感染症の影響により休止していますが、パンデミック収束後は再開し、プログラムの拡充を図り、国際交流の新たな歴史を刻んでいきます。
 こうした試みはどれも障害やリスクが予測されましたが、教職員が協力して乗り越えてきました。他校でやっていないことを先駆けて実現できたのは、創設時から掲げている“アジア融合に新機軸を打ち出す人材の育成”という使命が、教職員の中に根付いているからでしょう。
 そしてまた、本学の建学精神「自助協力」の通り、自立した人間同士が協力してことにあたるという風土がそうした試みを支えたといえるでしょう。

理系的要素にも目を向けた亜細亜大学の未来像
 次に、現在取り組んでいてさらに発展させたいこと、今後取り組んでいきたいことなど、本学のビジョンについてご説明しましょう。

【日本で働くアジア人材の育成】
 アジアの留学生が本学で学び、日本で働く体制の整備です。これは既に、ASEAN諸国留学生奨学金という形で実現しています。企業様からのご寄付により、ASEAN諸国から留学生を呼び、本学の留学生別科で日本語を学び、大学へ入学した後提携企業複数社でインターンシップを行います。そして、マッチングした企業には就職もできる、というプログラムです。引き続き取り組んでいきたいと思っています。

【アジア地域での英語学習】
 現在は新型コロナウイルス感染症の影響で止まっていますが、マレーシアに留学して英語を学ぶアジアンスタディーズプログラム(AUASP)があります。アジアの英語圏で英語を学ぶ利点は、第一に費用的な負担が少ないことがあげられます。また、マレーシアを含めアジアの英語圏は、ネイティブではない人も日常的に英語を使う環境があり、その中に身を置くことで、気後れすることなく英語でのコミュニケーション能力を身につけられる利点もあります。さらに、将来に目を向けるとアジアは発展中であり、2020年に世界経済フォーラムで掲示された予測によると、2030年には世界のGDPの6割はアジアともいわれています。そんなアジアの進化も体感できるでしょう。
 現在はマレーシアのみですが、今後はフィリピンなどほかの英語圏の国にも広げていきたいと思っています。

【キャンパス内での英語学習環境の整備】
 授業とは別に、キャンパス内で英語でのコミュニケーションが図れる、「English Caf」を設置する予定です。日本人同士でも英語で話すことをルールとし、本学に在籍している英語圏からの留学生とも英語による交流の場を設け、キャンパスに居ながら、英語を使う環境に浸ることができるようになります。2022 年のスタートを目標に進めています。

【理系的要素の充実】
 これからもっと進展させていかなくてはならないのは、理系的要素の充実です。SDGsをはじめ環境問題、気候変動など、現代社会の課題を考えるとき、自然科学的な要素も必要になってきます。現在、本学ではデータサイエンス副専攻を設置しています。文部科学省「数理・データサイエンス・AI 教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されているこのプログラムの内容を、それぞれの学部の中にも組み込んでいくなど、さらなる拡充を考えています。

【もっとオープンな大学に】
 これまでも、例えば経営学部では、ビジネスの最前線で活躍する組織のトップから経営学を学べる「トップマネジメント特別講義」を行ったり、NPO法人と連携して街づくりを学んだり、社会に目を向けた活動を行ってきました。私は、「楽しくなければ大学じゃない 面白くなければ学問じゃない アジアと共に 亜細亜大学」というキャッチフレーズを提起していますが、楽しい大学、面白い授業のためにも、社会との交流を積極的に行っていきます。

知的好奇心を大切にし、それを伸ばすのが大学の役割
 長年、大学の教員として多くの学生を見てきましたが、大学生活を充実させていた学生は、就職活動においても就職してからも、自分の力を発揮してがんばっているという傾向があるように感じます。ぜひ、「充実した学生生活を送りたい」という意欲をもって進学してください。本学では留学やイベント、クラブ・サークルなど、大学生活を充実させるプログラムを多数用意しています。積極的に参加して、大学生活を満喫してください。
 そして知的好奇心を大切にしてください。なぜこうなるのか、どうしてこうなのか…学問の根底にあるのは知的好奇心です。知的好奇心は誰にでも秘められています。それを引き出し、伸ばすのが大学の役割です。
 亜細亜大学を満喫し、知的好奇心を伸ばしてください。


永綱憲悟氏

【Profile】

永綱憲悟(ながつな・けんご)氏

東京大学大学院法学政治学研究科第一種博士課程単位取得満期退学。法学修士。1984年、亜細亜大学経済学部国際関係学科の講師に。同大学助教授、教授を経て、2010年に国際関係学部長に。同年、亜細亜学園理事に。2019年、同学園評議員に。2021年、亜細亜大学学長に就任。

【亜細亜大学の情報(スタディサプリ進路)】
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