洗足学園音楽大学 音楽学部 学部長 小嶋貴文氏

自由度の高いカリキュラムと豊富な実践を通じ
一人ひとりの音楽力と社会人としてのスキルを養います


年に200回のコンサートを行うなど、実践を通じて学ぶ
 本学での教育の根幹となるものは、大きく2つあります。
 一つは、「音楽を学んで社会で必要なスキルを身につける」ということです。
 社会で仕事をしていくうえで重要となる、協働する力、課題解決力、目標設定能力、努力する力、忍耐力…など社会人として基礎となる力を、好きな音楽を学びながら身につけることができます。こうしたスキルは音楽に関わる仕事はもちろん、さまざまな仕事で活かされます。音楽家を育てるだけではなく、社会人としての人間力も育てる音大なのです。
 もう一つは、「実践を通じて学ぶ」ことです。
 発表の場が非常に多いのも、実践重視の本学ならではの取り組みです。コンサートの開催は、年に200回を超えます。しかも、1年次から積極的に発表の場に出てもらいます。「まだ人前で発表できるレベルではない」といった判断はしません。どんどん出てもらいます。
 失敗を恐れずに、お客様の前に出ることが重要なのです。準備や練習は大変ですし、本番はとても緊張します。そのプレッシャーが、大きな成長をもたらすのです。お客様の反応を感じることも大切です。お客様の感動で自らが感動できることは、成長の糧になります。失敗して反省することも、大切な学びです。実践の場というのは、失敗しても成功しても勉強になります。
 実践して、感動して、失敗して、反省して、練習して、また実践する。そのサイクルこそが、成長につながるのです。
 この2つの教育の根幹を支えるのが、自由な履修制度です。必修科目は実技のみです。これは本学ならではの、特徴的な制度と言えるでしょう。自由な選択によって個人に合ったオーダーメイドのカリキュラムが作れ、自立や個性の伸長につながります。
 本学では各コースにアカデミックアドバイザーを置き、学生生活から学び方、就職活動、さらには卒業後まで親身にアドバイスを行っています。自由度の高い履修システムなので、何の科目を選択したらよいか迷ってしまうような場合でも、一人ひとりに最適なカリキュラムをアドバイスしています。

全18コースを設置。専門の垣根を超えたコラボ企画も多彩
 コースの多さは本学の特色です。現在は18コース設置しております。吹奏楽や管楽器、ピアノ、声楽などのクラシック系はもちろん充実していますが、音楽大学としては画期的なコースも多くあります。「電子オルガンコース」などは、その先駆けと言えるでしょう。
 映画音楽やゲーム音楽、映像演出も学べる「音楽・音響デザインコース」も珍しいジャンルです。「ロック&ポップスコース」「ジャズコース」などの現代音楽や、「ミュージカルコース」「バレエコース」「ダンスコース」など、身体を使った表現を学ぶコースもあります。声優やアニメソングシンガーを育てる「声優アニメソングコース」、そして2020年には舞台制作を学ぶ「音楽環境創造コース」が新設されました。音楽のあらゆるジャンルを網羅する、非常にバラエティ豊かなコースを揃えています。
 伝統的なものを守りつつ、新しいものを取り入れていく、そのバランス感覚が洗足学園音楽大学らしさと言えると思います。
 コースの多さを活かしたコラボレーション企画も増えております。例えば、バレエコースの学生が舞台で踊り、そこに声優アニメソングコースの学生が台詞をつけるという実験的な公演も行い、好評を博しました。その他、オーケストラ×アニメソング、ミュージカル×現代邦楽、電子オルガン×合唱、吹奏楽×バレエなど。さまざまなコラボレーション企画を行っており、非常にユニークな取り組みとして音楽業界からも注目されています。
 このようなコース同士のコラボレーション企画とともに、学生個人による自主企画も積極的に推奨しています。音楽・音響デザインコースの卒業生で作曲家として活躍している人がいるのですが、在学中に彼はオーケストラのコンサートを開催しました。自分で他コースの練習室を回って学生をスカウトしてメンバーを集め、大学のメインホールである前田ホールを借りてコンサートを行いました。凄い行動力ですよね。このように大規模のものから少人数のイベントまで、自主企画も多くなっています。

60人以上のアカデミックアドバイザーが、一人ひとりを親身にサポート
 コースが増えるにともなって、専門的な施設・設備も充実させております。最近では2018年に、バレエ専用の施設「ホワイトキャッスル」が完成しました。また、2020年7月にはミュージカル劇場「ミュージック・プール・シーノ」が完成しました。映像システム、音響システムを駆使した最新の舞台演出が可能であり、「ミュージカルコース」の発表の場としてはもちろん、「音楽環境創造コース」の実習の場としても活用していきます。
 おかげさまで志願者数も増えておりまして、2019年度には入学定員を470名から530名に増やしております。そんななか、我々が最も力を注いでいるのが、学生の満足度を高めること、ケアを親身に行うことです。コースがたくさんあり、カリキュラムも自由度が高い。学生それぞれが求めているものが違うわけですから、共通したサポートではなく、学生一人ひとりに応じた指導やアドバイスが必要になります。その体制を可能にしているのが、前述のアカデミックアドバイザーの存在です。60人以上の人材を確保し、目の行き届いたきめ細かいサポートを実現しています。
 グローバルな時代に対応すべく、海外との連携も充実させております。コースごとに短期留学などの国際教育プログラムも用意。また、本学で学ぶ留学生が多いことも特色の一つです。特別講義として、海外の著名な音楽家を招聘し、直接指導が受けられる機会も多くあります。一流に触れる機会は、学生の音楽スキルを一層高め、可能性を広げるきっかけとなるでしょう。
 またIT化も促進し、オンデマンド授業の積極的な導入、演奏会の配信、YouTube配信用のスタジオの設置など、さまざまな取り組みをしています。
 本学が求める学生は、音楽が好きでたまらない!という人です。好きという気持ちをベースに本学で学び、一人ひとりのもっている音楽力を磨き、高め、社会人として活かされる人間力を養ってほしいと思います。


小嶋貴文氏

【Profile】

小嶋貴文(こじま・たかふみ)氏

東京芸術大学作曲科卒業。同大学院修了。自作オペラの演出・制作から音楽活動を始め、クラシック、ポップスのアレンジ・出版、シンセサイザーなどの音楽データ制作を手掛ける。40歳で、バークリー音楽大学に留学。帰国後はジャズのライブ活動を始める。2003年、洗足学園音楽大学の教授に。2009年、洗足学園音楽大学の音楽学部学部長に就任。2020年、大学院研究科長に就任。

【洗足学園音楽大学の情報(スタディサプリ進路)】
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