北陸学院大学 学長 楠本史郎氏

130年以上にわたって北陸の地でキリスト教教育を実践
“地の塩”の育成に向け、2023年に3学部4学科体制に


「Realize Your Mission-あなたの使命を実現しよう―」がモットー
 北陸学院大学を運営する学校法人北陸学院は、北陸・金沢の地で130年以上にわたって、キリスト教を基盤とした人格教育と、地域に根差した人材の育成に取り組んできました。起源は、1885年にアメリカの宣教師が設立した金沢女学校です。当時、公教育を受けられるのは、成人男子に限られていました。ただ、キリスト教では性別や年齢に関係なく、すべての人間が尊い存在です。その精神から女子教育にいち早く力を注いだのが、北陸学院の始まりと言えます。並行して、幼稚園や小学校もつくり、子どもを対象とした教育にも乗り出しました。それが、幼稚園から小学校、中学校、高校、大学までのあらゆる教育機関を揃える現在の北陸学院の源流となっています。
 戦後は地域の声に応えるなかで、先進的な教育を加速させていきました。1950年に幼児教育者の育成機関となる保育短期大学を設置し、1953年には栄養状態が深く関わる結核を防ぐ必要性から栄養専門学院を立ち上げ、以来、長年にわたって北陸の幼児教育や栄養といった領域をリードしています。金沢女学校時代から行われてきた英語教育も大きな特色の一つと言えるでしょう。
 そんな歴史を歩むなかで、2008年に開学したのが本学です。社会福祉学科と幼児児童教育学科(現在の子ども教育学科)の2学科体制でスタートし、2012年には社会福祉学科を社会学科に改組し、福祉分野に加え心理学や経済・経営学などを幅広く学ぶ環境を整えました。スクールモットーは、「Realize Your Mission-あなたの使命を実現しよう―」です。私たちは一人ひとり、神から使命(ミッション)を与えられ、生まれてきます。その使命を実現するための知識とスキル、そして志を北陸学院で磨いてほしいとの願いを込め、学院創立120周年となる2005年、当学院の愛称「ミッション」を用いたスクールモットーを定めました。

4年制に一本化し、より高度な知識・技術の修得に注力
 2023年4月、北陸学院大学は3学部4学科体制へと大幅な改組を予定しています(構想中)。現在の2学科それぞれに対応した学部(教育学部、社会学部)を設置し、既存の子ども教育学科は保育者・幼稚園教諭の育成に重点を置いた幼児教育学科と、小学校から高校までの教員を目指す初等・中等教育学科に分割します。合わせて、北陸学院大学短期大学部食物栄養学科・コミュニティ文化学科の募集を停止し、北陸学院大学に管理栄養士を養成する健康科学部栄養学科を新設し、コミュニティ文化学科の学びを社会学部社会学科に引き継ぎ、定員を拡充する計画です(構想中。学部・学科名称はすべて仮称)。
 改組の狙いは時代の変化に対応し、より「Realize Your Mission」を推し進める環境を整えるためです。4年という時間をかけて高度な知識、技術を身につけ、“地の塩”となる人材を育んでいきたいと考えています。地の塩とは聖書に出てくる言葉です。塩は私たちが生きていくうえで決して欠かせないもの。しかも溶けて目に見えなくなって初めて働き、食材を生かします。たとえ、目立たなくても、地域を支える使命を果たす人々を育んでいく――。そんな本学の思いを具体化する取り組みが、今回の改組と言えます。
 本学ならではのキリスト教教育にもさらに力を注いでいく考えです。従来通り、基本的な教養科目として必修化するのに加え、卒業を控えた4年次に各学科の学びと連動したキリスト教科目も開講します。これは、大学で身につけたスキルを地域のためにどう使い、学生自身がどう生きていくかを見つめ直したうえで社会に巣立ってほしいからです。時代や地域の実情に合わせ、学部学科は再編しますが、キリスト教教育による人格教育と地域に根差す人々の育成が、本学の根幹であることは、これからも決して変わりません。

一人ひとりに寄り添う4年間を成長につなげる
 北陸学院大学は決して大規模な学校ではありません。改組後の入学定員数は3学部4学科合わせても230名(予定)です。その分、先生や職員が一人ひとりの学生に手厚く関わることができると自負しています。また、このような環境だからこそ、学生の変化にも気づきやすく、私たちが思いもよらないほどの成長を感じることも少なくありません。
 例えば、岩手県陸前高田市で行うボランティアは、成長につながる舞台の一つです。本学では東日本大震災後、保育園でのサポートや施設の整備事業など、10年以上にわたって多彩なボランティア活動に取り組んできました。地域住民の皆さんも「北陸学院大学陸前高田キャンパス」と称して学生を温かく迎えてくれています。何ができるかわからず、とまどうばかりだった学生たちも、地元の皆さんとの交流や慣れない地での奮闘を通してどんどん顔つきが変わっていきます。ほかにも、英語が苦手だった学生が本学の教育を通して関心を高め、卒業後に語学力を活かして就職するなど、彼・彼女たちの成長ぶりには、いつも驚かされることばかりです。
 そんな嬉しい場面を目にするたび、思いを強くするのは、「学校は決して均一な製品をつくる工場ではない」ということです。同じ授業・カリキュラムを受けたとしても、それぞれの学生が進む未来は異なります。いま、教育現場でも「見える化」が強く求められています。もちろん、大学教育を通してどんな力が身につくかを明示することは大切です。同時に、人はセオリーだけで測れるものではなく、目に見えない人格にもスポットを当てた教育も重要なのではないでしょうか。
 北陸学院大学ではキリスト教の精神に基づき、学生の“個”を大切に一人ひとりに寄り添う教育に心を砕いています。「どんな若者も必ず成長できる」。私たち北陸学院はその可能性を信じて疑いません。北陸学院大学キャンパスで、友達や恩師などたくさんの人たちと出会い、さまざまな経験のなかから自分の賜物(タラント)を見つけてほしいと願っています。全力でそのお手伝いをさせていただきます。


楠本史郎氏

【Profile】

楠本史郎(くすもと・しろう)氏

東京都出身。1975年東北大学経済学部卒業、1979年東京神学大学修士課程を修了。神学修士。日本基督教団金沢教会伝道師、同教団輪島教会、若草教会牧師などを務める。2007年に学校法人北陸学院学院長となり、2018年からは北陸学院大学学長を兼務。専門分野は「キリスト教学」。主な著書に『中澤正七 北陸女学校と北陸伝統にささげた生涯』(2015年、日本キリスト教団出版局)など。

【北陸学院大学の情報(スタディサプリ進路)】
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