周南公立大学 学長 髙田 隆氏

徳山大学から周南公立大学へ
- 地域の発展に貢献したい -

2022 年 4 月に公立大学法人化。地域の成長エンジンに
 本学は「公正な社会観と正しい倫理観の確立を基に、知識とともに魂の教育を重視する大学」を目指して設立された公設民営の大学です。2021年に創立50周年を迎えました。この間、地域の方々から多大なる支援を受けて今日に至った経緯からも、地域貢献は本学の最も重要な使命です。創立50周年を迎えるにあたって、地域の持続的発展と価値創造の「成長エンジン」となることを本学のミッションとして掲げました。ミッションを果たすための具体的な取組として、地域貢献や地域からの要請に応える窓口を一本化するために「地域共創センター」を開設するとともに、地域と共に社会・産学連携を推進するために地域の商工会議所、金融機関、中小企業経営者協会などが参画する「周南創生コンソーシアム」を創設しました。これらの仕組みに加えて、地域の課題発見から解決策の提案までを行う「地域ゼミ」や「PBL型専門ゼミ」の開設、ボランティア活動の強化、全学生参加型のインターンシップ等の教育プログラムを策定しました。これらの取組が評価され、本学は日本経済新聞社「全国大学の地域貢献度調査総合ランキング(2021 年度)」において、定員 2000 名以下の大学の中で全国第1位となりました。
 2022 年 4 月には公立大学法人「周南公立大学」となります。公立化は目的ではなく、大学を活用した地域の発展のための手段と考えています。地域の政策課題を共有し、地域の発展のために貢献するには、公立化することが最も望ましいと考えて要望をさせていただき、市議会の議決を経て公立化するに至りました。今、本学には大きな関心と期待が寄せられています。地域の期待に応え、地域から信頼され、地域の誇りと思っていただくことのできる大学として、大学改革を強力かつ迅速に進めて大学を生かしたまちづくりに大きな役割を果たす決意を新たにしています。

大規模な学内改組を構想中。地域に求められる学びを提供
 公立化後に学部学科の改編と新設を考えています。改編の視点は大きく2つあります。一つは、今後入学する学生が社会で活躍する20年、30年後の社会に対応した教育を提供することです。データサイエンス・AI・DXなどの情報化に対応した人材、人生100年時代の健康を支える人材、今後さらに進展するグローバル化に対応する人材などを輩出するための学部学科の改変とカリキュラムの検討を構想しています。
 もう一つの視点は、地域が求める人材を輩出することです。地域の100社を超える企業にどのような人材を必要としているかをアンケート調査したところ、理工系、情報系、医療系、商業経営系の人材が求められているということがわかりました。これらの結果をふまえて、2024年を目途に「情報科学部」、「人間健康科学部」、「経済経営学部」の3学部体制を構想しました。
 「情報科学部」では、さらに、地域の企業の方々からの関心が高かった、データに基づいたビジネスを展開する人材育成を目指す「ビジネスアナリティクスコース」、膨大なデータからビジネスに活用できる知見を引き出すことのできる人材育成を目指す「データサイエンティストコース」、AI、IoT、情報セキュリティなど地域産業の高度なICT化をリードする人材育成を目指す「情報エンジニアコース」を設置します。
 「人間健康科学部」は、看護学科、スポーツ健康科学科、福祉学科の3学科からなります。看護学科は山口県東部エリアで初めての4年制看護師養成課程で、地域看護、在宅看護にウエイトを置いた教育を行います。スポーツ健康科学科は公立大学では2番目となる独立したスポーツの学科で医学的基礎に基づくスポーツ科学を学びます。福祉学科では福祉現場でリーダーシップを取ることのできる社会福祉士に加えて子どもの福祉に焦点を当てた社会福祉士を育成します。後者では保育士資格も目指すことができます。3学科を敢えて一つの学部にしたねらいは、学生時代から多職種連携の重要性を学ぶことにあります。
 「経済経営学部」では、地域の行政や産業界で活躍する人材育成を目指した「地域経済経営コース」、グローバル展開を目指す地域の企業人材を輩出する「グロービスビジネスコース」、そして新しい価値を創造するためのデザインシンキング、システムシンキングなどを学びアントレプレナー輩出を目指す「地域ビジネスデザインコース」を設置します。
 なお、周南公立大学における教育の重要な視点として、各学部でそれぞれの専門性を追究するのみならず、学部の枠を超えた学びの融合を視野に入れていることが挙げられます。例えば「経済経営学部」と「情報科学部」との接合部では「経営情報学」を、「人間健康科学部」と「情報科学部」との接合部では「医療情報学」を、「人間健康科学部」と「経済経営学部」との接合部では「健康経営学」をなど、学部横断的な学びができます。さらに、3つの学部が融合する部分では「Well-being(幸福)学」を学びます。これらの学際的な学びは、卒業生が社会で活躍する際の大きな強みとなると考えています。

地域との連携を深める「全員必修」のインターンシップ制度を導入
 2021年度から、地域を知る、地域の企業を知る、地域の人を知ることを目的に、「地域共創型インターンシップ」を創設し必修科目としました。1年次には1週間程度の「アーリー・エクスポージャー型」インターンシップを、就職を考える3年次には最低2週間、できれば1カ月程度の「ジョブ型」インターンシップを課します。学生がキャリア形成について考える機会を創出するとともに、周南圏域に対する理解を深め、地域との結びつきを強固なものとできるように設計しました。開設にあたっては、前述の「周南創生コンソーシアム」の皆様に多大なるご理解とご支援をいただきました。
 地域の人口減少や少子高齢化に対応するには、「地域人材循環システム」の構築が欠かせません。同時に、優秀な外国人の方の能力もぜひ活かしたい。大学は地域人材循環システムの大変重要な要素です。国籍を問わずこの地域で学び、若い人が地域に集い、定着し、地域の人材となって活躍するために大学が機能し、地域の発展に貢献します。


髙田 隆氏

【Profile】

髙田 隆(たかた・たかし)氏

1978 年、広島大学歯学部卒。同大学院にて博士号を取得。広島大学教授、学部長、理事・副学長(社会産学連携担当)を歴任し、さらに国際口腔顎顔面病理学会会長、日本臨床口腔病理学会理事長などを務めた。頭頸部腫瘍の WHO 国際標準策定を主導したことや400を超す多数の学術論文を発表したことなどが高く評価され、日本歯科医学会会長賞(2016 年)や International Association for Dental Research からDistinguished Scientist Award(2018 年)など多くの賞を受賞。2018 年にはカンボジア国民のために傑出した貢献を果たした外国人に贈呈されるカンボジア王国友好勲章を受章。2019 年 4 月、徳山大学学長就任。専門は頭頸部の病理学。

【周南公立大学の情報(スタディサプリ進路)】
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