学校法人シモゾノ学園 理事長 下薗惠子氏

動物分野のプロフェッショナル育成に定評。
愛玩動物看護師法の制定に大きく寄与。

「人と動物の真の共存共生」への想いが、学園の基盤
 本学園の成り立ちは、1956年に創業した犬のお店 「青山ケンネル」 に始まります。青山ケンネルは、「豊かな自然とともに人と動物が共に生きることは、人も動物も心豊かな人生を歩める」 を信念に、自然と人間社会が共存共生することの大切さや人と動物の絆の素晴らしさなどを世の中に広め、多くの人や動物が笑顔あふれる人生を送れるように尽力して参りました。その想いを受け継ぎ、社会のお役により立てることを願って、創立者・前理事長である下薗龍二が創立したのが学校法人シモゾノ学園です。
 本学園の教育理念は、「心を大切に 感謝の気持ちで自然を思い 人と動物の真の共存共生」です。青山ケンネル創業からの想いを受け継ぎ、本学園の教育を通して社会・企業等から高い評価が得られる人財を育成・輩出するとともに、卒業生それぞれの夢が叶えられるように教職員が心を一つに力を合わせて学校運営に取り組んでおります。
 教育課程の編成においては、本学園の行動指針の1つである「目的・目標・手段の最適化」と「相手の立場に立った判断・行動をとる」ということを大切にしています。学科ごとに教育目的である育成人財像を掲げ、どのような知識・技術・資質を身につける必要があるのかを教育目標として明確にし、在学期間においてそれらを学生がしっかりと身につけられるように教育内容と教育の仕方を定めております。

専門力+道徳性・人間性の育成
 本学園は、教育理念に基づいた3つの教育方針 「専門性の追求」・「道徳性・人間性の育成」・「動物福祉の実践」 を基に教育を行っております。専門性を広く深く追求することや動物の立場にも立った動物福祉の精神を身につけて実践できる人財を育成することに加え、大切にしているのが 「道徳性・人間性の育成」 です。
 本学園には、動物が好き、人も動物も笑顔にする仕事がしたいと考える学生が多く入学しています。その志は素晴らしいのですが、一方で、入学時には動物に関わる仕事がどういうものか、深く理解できていない学生も少なくありません。動物看護師もトリマーもドッグトレーナーも動物飼育員も動物分野のあらゆる職種が動物だけではなく、人間ともかなり関わる仕事です。例えば、動物の飼い主や動物施設への来場者などのお客様対応だけでなく、多くの職種が他のスタッフと協働してその職務を成し遂げる状況があり、多様な人と良好なコミュニケーションが取れることが求められますので、動物分野の仕事であるからこそ、道徳性・人間性の醸造や社会人としての基本的資質をしっかりと身につける必要があります。きちんと挨拶や返事をすること、相手の話を聞き、相手の気持ちに寄りそうこと、自分の意見をわかりやすく伝えることなどをはじめとして、主体的に考えて行動し、社会に出た後も自ら成長し続けられる思考と習慣が身につけられるように授業内外のあらゆる機会を大切に、教育を行っております。実際に、入学時には内気で人と話すのが苦手だった学生が卒業前には社会人として頼もしさを感じるほどに成長を遂げて社会に羽ばたく姿をよく見受けます。
 主体性・協調性・コミュニケーション力のような資質はどのような時代でも求められる内容かと考えますが、社会状況の変化に伴って求められる資質などが変わることも十分にあるので、日頃から教職員が主体的に学外の方々と情報交換・意見交換をすることが大切であると考えています。そうした情報交換の結果、年度初めの事業計画で策定されていた教育活動に加え、期中において社会・企業等の方々と連携した新たな学内外研修が実施されることもあります。
 一例として、自然環境とその周辺に生息する生物を学ぶとともに保全活動ができるようになる教育課程において、小笠原諸島に生息するアオウミガメを保全する活動へ参加したことが挙げられます。地元団体と連携し、アオウミガメが産卵した卵をイヌが探知して孵化を支援する取組に参加させていただき、ドッグスペシャリスト学科や動物飼育系学科など複数の学科の学生が複合して学んでゆける教育活動が実施できております。このようなことも、各教職員が本学園の行うべき教育がどのようなものであるかをしっかりと理解し、日常から情報交換・意見交換がなされている賜物であると考えております。誰かにとって良いことではなく、できる限り多くの人・動物が笑顔になれる取組を心掛けることは、青山ケンネルから受け継ぐ本学園の教育理念が形になっていることの表れではないかと考えております。

動物看護師が国家資格「愛玩動物看護師」に
 社会の動きでいうと、2019年に「愛玩動物看護師法」が制定されたことは、大きな変化と考えます。現在、犬・猫などの愛玩動物はペットというよりも、多くのご家庭で家族の一員となっています。また、獣医療の高度・多様化に伴う愛玩動物の診療における獣医師と動物看護師のチーム獣医療体制の整備や、動物看護師によるしつけなどの適正飼養についての活動の充実が求められるようになり、動物看護師の資質向上および業務の適正化を目指して愛玩動物看護師法が制定されました。
 この愛玩動物看護師法の制定には15年を超える年月を要しました。法の制定に向けた課題の一つとして、教育課程が平準化されていないことや民間資格が既に複数存在していたことが挙げられます。全国の動物看護師を養成する教育機関に呼びかけ、全国共通の教育課程(コアカリキュラム)を作成することに始まり、現 : 一般財団法人 動物看護師統一認定機構 (国家試験機関に指定) の設立により複数の資格を統一するなどの地べたを這いずり回るような取組を積み重ねて現在に至ることができたのは、日本中の動物分野の教育機関がこれからの人と動物の共存共生する社会をより素晴らしいものにするのだという熱意の賜物と心より感謝申し上げます。
 国家資格である愛玩動物看護師の誕生により、動物看護師の業務の幅が大きく広がります。現時点における大きな点は、獣医師以外には認められていなかった採血や投薬、マイクロチップの挿入、カテーテルによる採尿などの一部獣医療行為が獣医師の指示の下で行えるようになったことです。愛玩動物看護師国家試験の受験資格を得る要件の一つとして、大学で指定された科目を修めるか、省令で定める基準に適合する養成所(専門学校等)で3年以上の在学期間を通して定められた教育課程を履修する必要があります。本学園は養成所となることはもちろんのこと、今まで行われていた動物看護師統一認定試験での確かな合格実績を収めることができた本学園独自の試験対策プログラムを拡充し、学生が国家試験にしっかりと合格できることを最重要事項といたします。

人と動物が笑顔で心豊かに生きる社会へ
 本学園のルーツである青山ケンネルが創業された当時の日本では犬・猫の多くは屋外で飼育されており、動物の先進国である欧米と日本との人と動物の存在価値の違いや愛情表現の違いなどの文化の違いに感銘を受けたことが青山ケンネルの創業につながっています。それから60有余年が経ち、青山ケンネルの創業の思いが着々と実りつつあるように、日本でも人と動物の関わりは大きく変化し、存在価値もペットから家族の一員となり、人間社会において人だけでなく自然や動物もバランスよく大切にされることは喜ばしいことと感じております。また、人が動物と共に生活することは人間にとって精神的にも健康寿命的にもさまざまな良い影響があることも話題に出ています。本学園および青山ケンネルの理念は人と動物が笑顔で心豊かに生きる社会に貢献できるものと強く信じ、これからも教職員が心を一つに力を合わせて社会のお役に立てるように邁進して参ります。


下薗惠子氏

【Profile】

下薗 惠子(しもぞの・けいこ)氏

1956年に創業した日本のドッグサロンの草分け的存在である「青山ケンネル」を生家とし、動物に囲まれて暮らすことが当たり前の環境のなかで育ち、動物業界の変遷を目の当たりにしながら成長した。青山ケンネルを下薗龍二氏と共に継承し、その後、「人と動物の真の共存共生」の推進を目指して動物分野の職業人社会人養成に取り組む。スクール形式の青山ケンネルカレッジを経て、1997年に学校法人シモゾノ学園を設立するとともに国際動物専門学校を開校し、2002年には大宮国際動物専門学校を開校した。2005年に前理事長の遺志を継ぎ2代目理事長に就任し、時代に応じたさまざまな取組を行うなかで、動物看護師養成教育の高位平準化に専心し、動物看護師統一認定機構の役員を設立時より拝命された。「人と動物の真の共存共生」につながる多くの活動や各協会等の委員等に就任し尽力するなかで、動物看護師の国家資格化にも積極的に参加し、2020年6月28日に公布された「愛玩動物看護師法」の制定は動物の職業社会人の更なる発展の一歩と受け止めている。これからも豊かな自然とともに人と動物が笑顔で心豊かに人生が歩めるように教育活動等に心を込めて取り組む。

【学校法人シモゾノ学園(スタディサプリ進路)】
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