東放学園専門学校 校長 加藤 諭氏
実践教育・人間教育・自立教育をベースに、
人の笑顔のためのエンターテインメントを作り出せる人材を業界へ
テレビ業界から生まれた学校
テレビ局のTBS(東京放送)が設立した「TBSコンピュータ学院」を前身として1969年に誕生した東放学園。以来、エンターテインメント業界を中心に、これまで6万人以上の卒業生を輩出してきました。テレビ業界で活躍できる人材を育成するために設立した学校であるため、当初から「実践教育」を軸にした教育を行っており、それは令和の今でも脈々と受け継がれています。
そもそも専門学校の役割とはどういったものかと言えば、「現場で即戦力となる人材を育成すること」だと考えています。そのため、現場に欠かせない幅広い技術やノウハウを学生時代から身につけることであり、さらには「現場の今」を知ることが大切なのです。
相手の気持ちを理解し、考えて行動できる力を育てる教育
それでは、まず「現場に欠かせない知識や技術」からお話しします。本校が大切にしている現場に欠かせない知識や技術とは、「相手の気持ちを理解しながら仕事を進めることができる力」のことです。エンターテインメントの世界では、番組を制作する側のスタッフと、表に立つ表現者(演者)が協力して一つのものを作り上げていかなければいけません。つまり、両方の立場を理解できる思考力がなければ、どちらかの想いだけが強い一方通行の番組づくりになってしまいます。
本校では、実践教育の一環として、授業のなかでさまざまな作品づくりを行いますが、学生が制作側だけではなく、演じる側に立つ場面も数多くあります。この「双方を知る」実践的な授業が、業界における活躍の場を広げるきっかけにもなり、将来自分がどのような立場で仕事をしても、相手が何を求めているかを瞬時に判断して、現場で行動できるようになると考えています。さまざまな専門職が入り交じって一つの作品を作り上げていく現場だからこそ、こうした理解力は何よりも求められる力だと言えるでしょう。
卒業生との強い繋がりが、本校の財産に
「現場の今」を知ることについて、本校が積極的に取り組んでいることは、協会や企業、講師の方々との情報交換の場を設け、常に最新の情報を得られる環境づくりです。キャリアサポートセンターは長年築き上げた業界とのパイプを生かし、学生に業界の動向や求人情報を提供。また並行して就職講座の開催や個別相談などの就職支援も行っているため、在学中はもちろん、卒業後も継続して就職・転職活動のサポートができる体制を整えています。
さらに、卒業生との強い繋がりも、本校ならではのメリットとして挙げられます。創立以降、数多くの人材を業界に送り出してきましたが、卒業生と本校との繋がりは今も変わらず連綿と続いています。現場で仕事をしている卒業生から最新の情報が入ってくることほど、学生にとって有意義なことはありません。こうした卒業生からの自主的な情報提供を大切にし、学生に逐一伝えているのですが、これは今に始まったことではなく、本校に根付いている伝統であり文化なのですね。
制作現場の今を反映した学習環境の整備
エンターテインメントの現場は、日々進化しています。技術はもちろん、これまでにない新たな試みもコロナ禍によって加速しました。例えばテレビ番組やドラマといえば、かつては視聴率が重視されていましたが、今は録画率や動画配信サービスの視聴数も含めて番組への注目度が一つの指標となり、加えてSNSの活用も不可欠になりました。それらが実際に現場ではどのように扱われているかを、卒業生が情報提供してくれることで、私たちも業界の今を学生に伝えることができます。
一方で、その最新の情報をもとに、どのような教育が必要で、実施可能なのかを検討することもできます。最新技術を身につけるための機材の導入にはそれなりの予算がかかるだけでなく、新しいものへの移り変わりも早いため、現場の今と学校とでミスマッチが起きないよう判断をしながら、学生にさまざまな経験を積ませる環境を用意しています。さらに、業界でも導入実績が少ない、最新機材の導入をする場合には、業界のスペシャリストを含むさまざまな立場の方の情報をもとに判断をしています。そのため、本校の学生が業界に入った後も、現場で必要な技術や知識は、ほぼ学生時代に触れられているのではないでしょうか。
エンターテインメントの変化によって期待される将来性と広がる求人
皆さんが想像されているように、エンターテインメント業界は、確かにコロナ禍によって大きな打撃を受けました。しかし、それがあったからこそ、動画配信サービスとのコラボレーションや、AI、VR、SNSを活用したものなど、新しいエンターテインメントの手法が生まれてきた側面もあります。
本校のオープンキャンパスに参加する人のなかには、「テレビ業界は厳しいのでは?と言われた」と不安な表情を見せる高校生もいらっしゃいます。ですが、私自身は、この業界の未来は明るいと確信しています。なぜなら先ほども述べたように、新しいエンターテインメントの手法や形が次々と生まれているからです。それに伴い、人材の確保も喫緊の課題となっています。この業界は、まだまだ将来性を感じられる世界であり、エンターテインメントの仕事とは、自己満足ではなく、人を、それも世界中の人を楽しませ、勇気を与え、笑顔にできる素晴らしいものだと信じています。
業界で活躍したいと本校の門をたたく学生は、皆「何かを作ってみたい」「チャレンジしたい」という希望や好奇心にあふれています。そうした彼らの想いを在学中に大きく育て、失敗と成功の体験をたくさん積み重ねながら送り出していく。そして社会に出た彼らが、かつて自分が体験したように母校の後輩たちへ業界の最新情報や仕事の厳しさ、楽しさ、そして、経験して初めて気がつく仕事のやりがいを伝える。本校ならではのこうした繋がりを、これからも守っていきたいと考えています。
【Profile】
加藤 諭(かとう・さとし)氏
1967年生まれ。立命館大学文学部卒業。株式会社エキスプレス 制作部に勤務したのち、2000年4月、学校法人東放学園の講師となる。同校の教務教育部部長を経て、2017年副校長に。2020年4月から同校校長に就任。