専門学校 桑沢デザイン研究所 第11代所長 工藤強勝氏
デザインの基礎を学び、自由な発想を伸ばす。
潜在能力に刺激を与えるカリキュラムで、業界の未来を担う人材を育成
日本初*の「デザイン」専門学校
本校が誕生したのは1954年。モダンデザインの学びの基礎を作りあげたドイツの「バウハウス美術学校」をモデルとし、デザイン・ジャーナリスト桑澤洋子によって設立されました。本校のカリキュラムの特徴は、独創性や応用力の原点となる「デザインの原動力」を養うこと。設立以降、3万人を超える卒業生をデザイン業界に送り出しており、さまざまな分野で高い評価を得ています。
*東京都生活文化局「私立専修学校一覧」設置年月日より
デザインに必要なスキル「クリエイティブ・シンキング」とは
IT化の波は、デザイン業界においても例外ではありません。1990年代までは、デザインの仕事に就くためには、手作業を伴う細かい技術や専門的な能力が欠かせませんでした。しかし今は、これまで手作業で行ってきたことが、パソコンソフトによって行われるようになりました。子どもたちは小・中学生のころからパソコンを使い、またデザインを学べる高校も増えています。デザイナーになるためにこれまで必要とされた能力の差異が、さほどない時代になっているのです。
言い換えれば、デザインに必要なパソコンソフトを使うことができれば、誰でも少なからず「デザインらしきもの」はできるのです。しかしそれはプロとして仕事をし、活躍するためのスキルとは異なります。では、デザインを職業にするために何が必要なのでしょうか。
その答えが「クリエイティブ・シンキング」なのです。クリエイティブ・シンキングとは、「枠組みにとらわれない自由な発想」のこと。これは、設立者である桑澤洋子が設立当初から掲げてきた理念でもあり、デザインの道を志す者が必ずもつべき認識として、本校の教育に受け継がれています。
基礎の徹底と、自由な発想を開花させるカリキュラム
本校では、クリエイティブ・シンキングを養うために、「デザイン学」を基礎から学んでいきます。デザイン学とは、デザインの歴史や文化的背景を知り、デザインと社会の繋がりを認識し、私たちの周囲にはどんなものにもデザインという技術が活かされていることを一人ひとりがきちんと理解して、デザインに欠かせない知識や発想・視点の基礎を養う、本校ならではの特徴的な学びの一つです。
一方で、クリエイティブ・シンキングを身につけるためには、デザイン学の基礎を学ぶのと同様に、「純粋で自由な発想」をもつことが大切です。デザイン学という論理的な知識、そして自由な発想を養う。それが桑沢デザインの教育方針なのです。本校には、デザインの現場経験が豊富な教員・講師が数多く在籍していますが、学生たちにはさまざまな場面において「自由な発想を大切にしよう」と伝えています。非常勤講師が220名以上もいる教育環境において、講師たちが自分の経験を活かした「生の声」を伝える。これは、学生にとって大きな刺激となるでしょう。
自分では気づいていない新たな可能性を伸ばすために学ぶ
本校に入学する学生はデザインに興味がある、絵やデザインが好き、という気持ちを全員がもっています。しかしいざ入学してみると、自分よりもデザインの才能にあふれた人の存在に直面し、「自分には能力がないのではないか」と自信を失ってしまう学生もいます。けれども周囲と自分を比較して劣等感をもってしまうのは、決して「才能がない」ことではありません。そんなときにこそ、私たち教育者が全力で支える必要があります。「自由な発想をもつことの大切さ」や「粗削りな発想」は、学生時代の特権。まだ気づいていない潜在能力を刺激し、伸ばしていけば、自信へと繋がり、自分では考えてもみなかった意外な才能に気づけるはずです。
「形・色・空間・素材」といったデザインのキーワードは日常にいつも存在していますが、私たちはそれを意識しないまま生活していることが多いのです。学生たちには、日常のなかにデザインのヒントがたくさん潜んでいることを伝え、五感を使って体感した先にある「気づき」の大切さを繰り返し指導します。
「気づき」へのアプローチとなるカリキュラムも整っています。本校の総合デザイン科(3年制/昼間部)では1年次に、基礎造形と基礎デザインを総合的に学んだうえで、2年次から各専攻(ビジュアル、プロダクト、スペース、ファッション)に分かれます。デザインにはいくつかの専門分野があり、入学時に自分がやりたいことをある程度決めている学生もいれば、漠然とデザインに興味をもって入学してくる学生もいます。だからこそ1年次には総合的にデザインを学ぶことで、自分の興味や得意分野を知る「気づき」を大切にします。多くの専門学校が2年課程でデザインを学ぶなか、本校ではあえて3年という期間を設け、より柔軟に、より専門的にデザインを学びます。
デザインの道に興味をもち、今進路を模索している高校生をはじめとしたすべての方々に伝えたいのは、「桑沢デザインに入ったときは、みんな少々の能力差はあっても、モチベーションが高くフラットである」という事実です。つまり、自分のもっている可能性を伸ばすために学ぶ、そのためにあるのが専門学校なのです。伸びる時期は一人ひとり異なります。学生との距離が近く、いつでもどんなことでもサポートできる環境がある。それが専門学校の、そして桑沢デザイン研究所で学ぶことのメリットだと考えています。
デザインの現場の今とこれから。求められる力とは
デザインの現場に必要とされるのは、これまでにも述べた「枠にとらわれない自由な発想力」だけではありません。アイデアを競う場を経て採用を勝ち取る機会が多い仕事だけに、自分がデザインしたものをアピールする力、具体的にはコミュニケーション能力やマネジメント能力も重要視されます。コミュニケーション能力はともかく、マネジメント能力というと難易度が高いイメージを持たれるかもしれませんが、わかりやすく言えば、相手を楽しませながら伝え、この人と一緒に仕事がしたいと相手に思わせる人間力なのです。
そしてデザインを考えるときには、とにかく楽しみながらやることが大切。デザインはアートではなく、たくさんの人に使ってもらうものです。製品のデザインを行うプロダクトデザインなどは、いかに楽しく機能的に使ってもらうかが求められます。自分が楽しくデザインしたものであれば、その楽しさも人に伝わるでしょう。そのため私たちは、学生時代に何度も挑戦する課題にも、楽しみながら取り組もうと学生たちに語りかけます。課題は厳しさも伴いますが、それをプレッシャーと捉えずに、楽しい作業として向き合えるようになると、発想も広がり生き生きと取り組めるようになります。
2024年に設立から70年を迎える桑沢デザイン研究所は、2023年4月には新校舎を取得拡張し、入学者を1クラス40名増と、より理想的な学びの環境を整えます。多くの美術大学が郊外に学びの場を設けるなか、本校の校舎は、渋谷・原宿という文化と情報の発信地に位置しています。日常の中で最先端の文化や情報に触れながら学ぶこともまた、デザイン業界を目指す人にとっての大きな刺激となるでしょう。
【Profile】
工藤強勝(くどう・つよかつ)氏
1948年生まれ。日本電信電話公社(現NTT)でエンジニアとして勤務したのち、桑沢デザイン研究所でデザインを学ぶ。卒業後は独立し、グラフィックデザイナーとして第一線で活躍しながら大学教育の分野でも活動。2020年4月より、専門学校桑沢デザイン研究所 第11代所長に就任。