神戸親和大学 学長 三井知代氏 (2023年4月男女共学化に伴い神戸親和女子大学より名称変更)

多様性を尊重し、他者と協働しながら
新たな未来を創る人材を育てるべく、
女子大学から共学へ

親和ならではのきめ細かな教育が築き上げた伝統と実績
 本学は半世紀以上にわたって、親和学園の校祖・友國晴子による建学の理念「誠実」「堅忍不抜」「忠恕温和」を継承しつつ、社会で主体的に生きる女性の育成を実践してまいりました。これまで2万人近い卒業生を社会に輩出し、現在も教育界をはじめさまざまな分野で活躍しています。小規模大学ならではの強みを活かしたきめ細かな教育と就職実績などにより、「面倒見の良い大学」「教育力の高い大学」として社会からも高い評価を獲得。特に教員採用試験の実績においては、西日本の女子大学においてもトップクラスの成績を収めています。例えば、『大学通信』が発信している「教員採用試験ランキング」において、本学は、保育教諭就職者数全国1位、幼稚園教諭実就職率西日本2位*、小学校教諭実就職率全国1位*、中学校教諭実就職率西日本1位*(*は女子大学中の順位。2021年3月卒業生実績)という結果を残しています。
 女性が男性と共に社会で活躍するための、リーダーシップの育成や能力の開発を行うという建学の理念に基づいたミッションは、これまでの本学の歴史で十分に実現してきたといえるでしょう。

多様性を尊重した新たな教育への一歩を踏み出す「共学化」
 社会の激変に伴い、私たちが抱える課題は今後さらに複雑化し、解決に至るまでが一筋縄ではいかないことも増えるでしょう。将来の予測が困難なVUCA時代において、社会の課題解決には、性別、世代、国籍をも超えて多様な人々と協働し、多角的な観点から物事を捉えて解決に挑むことがとても重要になります。だからこそ大学は、多様性に開かれた環境での教育を行い、激しい社会の変化に対応できる人材の育成を行わなければなりません。このように、多様性を尊重した新たな教育に取り組むため、本学が新たに踏み出した一歩が、「共学」への移行です。共学化に伴い、新たな大学名は「神戸親和大学」となります。性別に関わりなく多様な視点からの教育や研究が可能となり、学生の学びの深化と拡がりが期待できるでしょう。また、従来から高い評価を受けている本学の教員養成において、男性の小学校教諭、特別支援学校教諭、幼稚園教諭、保育士などの養成を手掛けることは、地域からの要望に応えるものとなり、社会貢献への一翼を担えるのではと思っています。

他者と協働し、課題解決に取り組む力を育てる教育改革に挑戦
 新たな教育改革の目的は、社会の新たな価値を創造する人材の育成です。具体的には「地域・社会の課題解決のために他者と協働して取り組むことができる人材」「社会の変化と多様性に対応できる人材」「DX時代に貢献する知識とスキルを有した人材」の育成を行います。この目的を達成するため、「“探究”を窓口にした高大連携と探究入試」「外部との協働による教育課程」「地域・世界とのネットワークと情報発信」の3つに力を入れていきます。
 特に、今回の教育改革の1つの柱が、「探究入試」の導入です。高等学校の学習指導要領においても、2022年度より「総合的な探究の時間」が実施されるなど、“探究”がキータームになっています。今後、次世代を担う若者はさまざまな変化に向き合い、他者と協働しながら課題解決に取り組まなければなりません。“探究”は、そのためのスキルや資質を育む学びです。しかし、そういった目に見えない力は、学力を重視した従来の入試制度では測ることができません。そこで新たに「探究入試」を導入することで、今後の社会から求められる資質や能力を磨くために、高校時代をいかに過ごしてきたかという部分を評価していきたいと考えています。さらに探究学習の充実と発展について、高等学校と連携し検討していきます。
 加えて、新たにスタートする「SHINWA 実践教育プログラム」は、高校時代の“探究”で得た力をさらに伸ばすためのものです。大学の枠に留まらず、学校園や企業、自治体など外部と連携し、協働プロジェクトやインターンシップ、国際交流、ボランティアなどを通して多様な人々との出会いや協働により、主体的に生涯学び続ける力を身につけていきます。
 また、2022年秋ごろより、「オンラインによるメンター制度」をスタートさせます。具体的には、毎週決まった時間に遠隔地の小学校の児童とネットワークを介してつながり、学習支援を行うなど、児童との交流を図る取組です。これまでも学校園ボランティアなどで、地域の子どもたちと関わる機会はありましたが、今後はオンラインも活用し、遠隔地の教育現場とつながることができ、より多くの子どもたちとの出会いが期待されます。子どもたちとの触れ合いのなかで、学生たちには次世代の教育者にとって必要なエージェンシーや柔軟な思考力、レジリエンスを磨いてほしいと思います。
 このように本学では「共学」への移行、多様な資質や能力を評価する「探究入試」、外部の多様な人々との出会いや協働による「SHINWA 実践教育プログラム」など、多様性を尊重した教育を推進いたします。
 そして「親和でしか学べない」教育により、社会の変化や多様性に柔軟に対応し、多くの人々と協働して社会の課題に立ち向かう力を学生たちに培ってほしいと思います。

共学化により、“ちがい”を認め合い新たな未来を創る人材を育成
 本学の大きな強みは、教員と学生、学生同士が深くつながり、夢に向かって共に支え合いながら目標達成を目指すという風土が、学内全体に根付いていることです。学生の「したい」という思いを徹底的にサポートする環境があるからこそ、高い教員採用実績や就職実績を実現させています。
 共学化と、多様性を尊重した新たな教育の目的は、「“ちがい”が交じり合って“見たことのない未来”を創り出すこと」です。今後も本学がこれまでに積み重ねてきた伝統や実績、「親和らしさ」を大切に守りつつ、新たな教育改革を進めてまいります。


三井知代氏

【Profile】

三井知代(みつい・ともよ)氏

神戸女学院大学大学院人間科学研究科博士後期課程 単位取得退学。人間科学博士。神戸親和女子大学 文学部心理学科教授。専門は臨床心理学。心理教育相談室長、発達教育学部長、教務担当部長などを歴任。2018年より現職。学校法人親和学園理事。

【神戸親和大学 (スタディサプリ進路)】

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