奈良大学 学長 今津節生氏

古都・奈良の立地を活かしつつ
「防災」で全学科連携を図り、社会に貢献できる人材を育成。

本物の文化や歴史に触れて学べる恵まれた学習環境。
 歴史と文化遺産の宝庫、古都・奈良に位置していることが本学の大きな強みです。徒歩や自転車、あるいは電車に乗ってすぐの場所に、多くの歴史・文化遺産や豊かな自然があり、地域一帯が絶好の学びのフィールドとなっています。この恵まれた立地を活かし、文学部では、国文学科、史学科、地理学科、文化財学科のそれぞれが、奈良の文化・歴史・自然・文化財といった本物を見て、触れて、感じる、「生きた学問」の実践に取り組んできました。本学の学生たちは、教員から学ぶ以上に「奈良から学ぶ」ことができ、そうした実践的かつ主体的な学びの積み重ねを、本学では推奨しています。

奈良で得られた知見が、全国各地へと広がってゆく。
 このような奈良での体験を通しての学びを活かし、社会に貢献できる人材を育成することこそが、本学の目指すところです。本学には、全国各地から集まった学生たちが在籍しています。その一人ひとりが、古都・奈良で長年にわたって蓄積されてきた、他では得られないような知見を、肌で感じて学び取っています。そして卒業後は、地元に戻ったり、あるいは地元以外の地域へと赴いたりといったなかで、それぞれの地の文化財保護や教育・文化・観光事業などに、この奈良での学びの経験を役立てることで、社会への貢献を果たしていくというわけです。例を挙げますと、かつて私のゼミで奈良のお寺における観光施策の研究に取り組み、現在はその研究成果を地元の有名なお寺の発展に活かそうとがんばっている卒業生などがいます。

6学科すべてを繋ぐキーワード「防災」に着目。
 今後はこの奈良という立地の強みを社会学部の心理学科と総合社会学科でも明確に打ち出していく意味も込め、文学部4学科との全6学科での連携を推し進めていきます。その一環として、私が任期中にぜひ実現させたいと考えているのが、「防災」をキーワードとした6学科の連携です。
 防災と一口に言ってもいろいろな観点がありますが、本学の特色をふまえると「文化財をまもる防災」といった考え方になります。実際に、自然災害によって文化財が被害を受けた事例はこれまでに数多くあります。その備えや修復には文化財学が有用ですし、過去に繰り返されてきた災害における対策や復興のあり方については歴史や文学から学べます。また自然災害は地形との関連が強く、地理学がもつ意味は大きい。そして心の痛みが伴うため心理学が重要となり、人がどう行動するかという視点で社会学とも深く関係する。本学にある6学科すべてが、防災という一つの串を刺すことで繋がるのです。

いにしえの知を、災害に負けない未来を築く力に。
 本学は他大学と比べて、規模はあまり大きいと言えません。ですが、だからこそ小回りが効き、本学ならではの柔軟性をもった連携が可能になると考えています。そしてこの奈良には、災害に負けず千数百年も保持され続けている歴史遺産がたくさんある。防災を「奈良から学ぶ」ことは、大変意義深いことだと言えます。
 本学の卒業生には公務員や教員として社会に貢献している人材が多く見られます。これらの職種に限らず、今後は「防災」についての学びを活かすことで、さらに幅広い社会貢献への道を示していけるでしょう。大きな災害が起きて、ひどいダメージを受けたとしても、文化や歴史を知っていれば、しっかりと先を見据え、復興に向けた正しい判断や行動ができます。そして地理学、心理学、社会学など、さまざまな学問の知識も、その裏付けや支えとなる。このような力や知識をもった人材を、一人でも多く育ててきたい。来るべき南海トラフ大地震に備え、「やらなければ」という強い使命感も抱いています。


今津節生氏

【Profile】

今津節生(いまづ・せつお)氏

1955年和歌山県生まれ。1978年駒澤大学経済学部卒業。1980年青山学院大学文学部史学科卒業。1982年同大学大学院文学研究科史学専攻修士課程修了。1985年同博士課程修了。同年福島県立博物館保存科担当学芸員。 1989年奈良県立橿原考古学研究所保存科学研究室長。1994年京都工芸繊維大学大学院工学研究科学術博士。2005年九州国立博物館博物館科学科課長を経て、2016年奈良大学文学部文化財学科教授。2019年4月文学部長・大学院文学研究科長。2022年4月学長就任。

【奈良大学(スタディサプリ進路)】

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