産業能率大学 学長 鬼木和子

常に変革を続ける、実学教育のパイオニア

建学以来、実学教育を貫く
 本学の歴史は、マネジメント・コンサルタントであり「能率の父」と称される上野陽一が日本産業能率研究所を創立した1925年(大正14年)に始まり、2025年には創立100周年を迎えます。創立者上野陽一は、米国からマネジメントの思想と手法を日本に導入し、「知識は実際に役立ってこそ価値がある」として、自ら実践、普及に努め産業界の発展に寄与しました。
 それは、「マネジメントの思想と理念をきわめ、これを実践の場に移しうる能力を涵養し、もって全人類に幸福と繁栄をもたらす人材を育成することにある(後略)」という本学の建学の精神に受け継がれ、1979年大学開学時には「企業演習」(今で言う「インターンシップ」)が必修科目であるなど、マネジメント領域の実学教育を柱とする教育中心の大学として、学生の実践的“学び”の創出機会を拡げ、社会で活躍する人材を輩出しています。

グローバルに活躍できる人材育成と、ICT活用の新たな展開
 言うまでもないことですが、加速度的に変化する今日の地球社会において、大学の教育目的を達成するための変革の手を緩める暇はありません。他方、表面価値を高めるだけのカリキュラム改編や授業改善にならないように大学全体で入念な検討や議論を重ねる必要があります。
 現在、本学では多様な変革の芽を教職協働で育てていますが、ここでは、本学が推進する二つの領域について、現解下の取組を紹介します。一つは、グローバル分野です。1年次の英語教育では、受験英語から解放され、楽しみながら英語が身につく「SANNO English Program」を実施し、学生は情意フィルター(affective filter)を取り払い、英語によるコミュニケーションの面白さ、醍醐味を経験します。この学びの経験は、これまでの学び方を改める、いわゆる「学びほぐし(unlearning)」の契機となり、さらには地球規模で物事を捉え思考する習慣が身につくことが期待できます。その学びの機会が連続的に提供できるよう、協定大学への海外研修(オンライン含)、海外ダブルディグリー制度などのさらなる充実を図っています。
 二つ目は、デジタル分野です。まず、前提として、学びの基本ツールとしてのICT活用ができるよう、本学では、全学生が1人一台のノート型パソコンを所有し、学内外で学修に自在に取り組める環境を確保しています。2020年度前学期、コロナ禍により全面オンラインの授業にシフトした折も、在学生向けネットワークを共有できる情報環境でシラバスに沿った授業を進めることができました。パソコン操作に慣れていない初年次生に対しては、補習科目が受講できる環境も整えており、全学生が一定レベルのPC操作スキルをもち、学習に取り組めるようにカリキュラムが組まれています。そのようなICT活用の学習環境の下、本学では、2021年度に情報マネジメント学部現代マネジメント学科において「デジタルビジネスデザインコース」を新設し、先端的なデジタル分野の知識を備えたデジタルビジネスをプロデュースできる人材の育成をスタートさせました。期待以上の学生・教員間の化学反応が見られ、将来有望な卵が着々育っています。また、来年の2023年、経営学部マーケティング学科開設10年を節目として、同学科では、「データ活用スキル」と「マーケティング心理学」の二つを軸にカリキュラム改革に取り組み、それに伴い新たな入学者選抜方式を導入するなど、入り口から出口まで一貫した特色ある教育の新たなフェーズを迎えています。

年次を越えた学修で長期的視点に立つ
 本学では、建学の精神に沿い、学んだ知識とスキルを用いて実践の場で課題発見・解決に取り組むプロジェクトとして、長年、地域・企業との連携によるPBLを実施し、学生たちの果敢な取組成果が本学の教育力向上に繋がっています。ここでは、今年度より新たにスタートした二つを紹介しましょう。その一つは、湘南生まれのオリーブのブランド力向上や関連商品の開発、さらに、同地域が抱える耕作放棄地問題の解決を目指した「地域ブランド創造プロジェクト」です。このPBLは1年間取り組んだことを次の年度の履修生にバトンを渡し、また次の年の履修生がその成果を引き継ぐといった継承型学びの特徴をもっています。オリーブの木を育て、実を収穫し、そこから商品やサービスを生み出し、地域活性に繋げていく活動は、当然のことながら1年では完結できません。卒業後も参画が期待されるサステナブルなプロジェクトとしての新たな挑戦が始まっています。
 二つ目は、経営学部マーケティング学科の「マーケティング・イニシアティブ」です。1年次のラウンドⅠ(問題発見編)、2年次のラウンドⅡ(問題解決編)、3年次のラウンドⅢ(提言編)の3層で構成された、連続性のある線型PBLです。学生たちの関心ある企業が抱える課題を自ら発見し、解決策を検討し、ビジネスプロフェッショナルからフィードバックを得る、そして、解決策を報告書にまとめ、企業に社会実装に向けての提言を行うというステージが用意されています。ビジネスプロフェッショナルや本学のアカデミックアドバイザーとの協働による、年次を重ねて取り組む超実践型PBLのスタートです。
 本学ではこうした学びを通じて、長期的視点で教育効果を捉え、教育をデザインしています。卒業後も続くリカレント教育を視野に入れたシステムを構築することで、学生と卒業生が刺激し合い、教え学び合い、成長し続ける。そのような環境づくりに、今後はより一層、力を入れていきたいと考えています。

4年間で学生が成長できる大学、未来社会を創る担い手としての大学へ
 「キャリア教育」の重要性が叫ばれて久しいですが、本学では、早くから正規の授業科目にキャリア教育を取り入れ、学生のニーズに応答すべく改善を続けてきました。1~2年次では、キャリア理論や社会人に必要な基本情報を基に、ライフキャリアとは何かを自分なりに咀嚼し自身のキャリアを考え、何が不足し何が必要かを考える必修科目を設けています。学生は自ずと今の学びが将来どう役に立つかを考えることで、自身の学びを自分でデザインするようになり、1年次にはこれをやりたい、2年次には、3年次には・・・というプランが出てきます。こうしたプランをもち始めた学生は、大学での学修を「自分事」として捉え、自律した学習者として学びのPDCAサイクルが回せるようになります。その結果として学生自身が成長実感を得て、希望するキャリアを選択することができれば、「4年間で成長できる大学」、「就職に強い大学」と改めて公言できると考えますが、卒業時の調査結果からおおむね肯定的な声を得ています。
 本学は、マネジメント分野の社会人教育部門と学生教育部門を併せ持つユニークな大学として、その強みを生かしながら、学生と共に創る豊かな“学び”の経験を糧に、教職協働にて独自の進化を遂げてまいりました。そして今後も、実学教育のパイオニアとしての矜持をもって、Society5.0以降も視野に入れ変革を続け、未来社会を創造する実行力のある人材を育ててまいります。


鬼木和子氏

【Profile】

鬼木和子(おにき・かずこ)氏

津田塾大学学芸学部英文科卒、東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学、修士(人間科学)、産業能率短期大学能率科教授(日本経営研究コース主任、留学生別科長)、産業能率大学情報マネジメント学部教授・同学部長を経て、産業能率大学学長

【産業能率大学(スタディサプリ進路)】

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