仙台青葉学院短期大学 学長 田林晄一氏

地域と学生に寄り添い続けた姿
2023年に新学科設置と変化し続ける短期大学

震災を経験した「貢献意欲が高まった世代」に大人が応える
 本学はかねてより「人間教育」に力を入れながら、「学生が必要としていることにどのようにすれば応えられるか?」「地域は高等教育に何を求めているのか?」という問いと向き合い続けてまいりました。気づけば本学は短期大学においてはトップクラスの学科数を有する学校へと成長し、受け入れ態勢においても教育体制においても多様なシステムを取り入れる形となりました。
 「学生が必要としていること」を語るうえで、やはり10年以上経過してもなお傷跡を残す「東日本大震災」が切っても切れない存在となります。
 東北の高校生に対する「進学目的に関する調査」を見ても、2007年時点では親依存を感じさせられる回答が多く見受けられたのに対し、震災以後は「人を助けたい」「地域に貢献したい」と他者貢献に意欲を示す回答が大幅に増加し、大学へ進学する目的においても2007年時点では「未定」といった学生が多かったのに対し、震災後は「生きる力を得たい」など目的を明確化して進学する学生が増えました。
 震災を経験し、自らの存在や生き方の価値観が大きく変わったことを意味するとともに、学生の学びへの意識の高まりは実際に肌でも感じられるところでした。

学生が必要としていることに応え続けるために
 先ほど申し上げた通り、東北地域における学生の意識の変化に対し、私たち大人も同じく変化していくことを求められていると日々感じます。
 本学では、より学生のニーズに応えるため、画一的な指導方法にとどまらず、例えば学科ごとに「チューター制」「ゼミ制」「担任制」を取り入れ、学びの内容の特徴を踏まえて指導方法を変えたり、学生それぞれの個別最適な学びを応援できるように「資格取得奨学金制度」を設け、より学生の挑戦へのハードルを下げ、機会創出に努めております。
 それぞれ異なる背景をもつ学生に対して、どうすれば個別最適なサポートができるか、日々学生の声に耳を傾け、調査・検討し、学校制度に反映させていくことは、学生サポートの充実においては必須と考えております。

地域が必要としていることに応え続けるために
 私たちは、東北のこの地域に存在する、という意義についても向き合ってまいりました。本学設置の際には、東北の地域要請を踏まえてビジネス系と看護系の学科を有し、あえて短期大学としてスタートした経緯があります。その後は地域や社会の要請を汲み取り、リハビリテーション学科、こども学科、歯科衛生学科、栄養学科、観光ビジネス学科、現代英語学科、言語聴覚学科と随時新規の学科設置を行ってまいりました。
 そして令和5年4月に、超高齢社会やコロナ禍の影響で新たに雇用ニーズが急拡大している救急救命士を養成する学科をいよいよ設置いたします。こちらも、コロナウイルス蔓延による救急救命士不足や法改正に伴う救急救命士の病院勤務の実現などで、急激に救急救命士が足りない社会へと変化したことを受けての学科設置となりました。
 地域が必要としていることは何か? に向き合ってきたことが、今の学科構成(短期大学におけるトップクラスの学科数)に至ることとなります。

振り返りだけでは終わらせない「PDCAの“A”への着目」と学修成果へのこだわり
 どれだけ入り口やサポート体制を充実させても、本学に最終的に求められるのは「学修成果」であると考えます。
 学修成果は学修行動調査や就職率、退学率、入学定員の充足率、就職先調査など、さまざまな方向から評価し、現状と目標のギャップを埋め、修正や変更を加えていきます。そのため、PDCAサイクルを重視しています。私は学長に就任して2年目になりますが、以前から「A(Action、改善)」が不十分だなと感じていました。出てきたデータに対して問いかけ、反応を聞き、今後につなげていく。学修成果の可視化をし、PDCAサイクルを回していくことで学生の満足度や採用した企業側の評価などが上がっていくと考えています。
 本学が指導に当たり力を入れている「生涯学習力」においては、就職先調査が非常に大事なデータになっています。例えば、看護学科を卒業した看護師であれば、就職した病院の看護部長などにアンケート調査を行っています。授業改善アンケートは主観的になりがちですが、就職先調査は客観性があり、エビデンスに近いと受け取っています。
 もう一つ、本学が指導に当たり力を入れている「地域理解力」に関しては、昨年度、地域連携委員会を立ち上げ、今年度から活動を本格化いたしました。地域の催しで看護学科、リハビリテーション学科、こども学科などの在学生と教員が健康相談に乗ったり、こどもの遊びを紹介したりしました。また、ビジネスキャリア学科では地域の企業と複数共同研究を行うなど、地域連携を進め、地域とのつながりのなかから学生の地域理解力向上に努めております。

学生の想いに応え、学びの成果に向き合う
 社会情勢が転換期を迎え、「どう生きたいか」に向き合う高校生に対して、我々学校側でも「学びの質」にこだわり、PDCAサイクルをしっかりと回しきることが一層重要となってきています。高校生には進路を考える際にぜひ「その学校で得られる学びは自分の求める生き方につながるものなのか」を見定め、次の一歩を踏み出してほしいと願っております。そんな学生の想い、そして学生の就職先の要請に応えられるよう、本学も常に学びの成果と向き合っていきます。



田林晄一氏

【Profile】

田林晄一(たばやし・こういち)氏

略歴
東北大学医学部卒業
東北大学名誉教授
東北医科薬科大学病院名誉院長

【仙台青葉学院短期大学(スタディサプリ進路)】

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