Vol.69 フジテレビアナウンサー/木村拓也

木村拓也

【Profile】きむら・たくや●1990年、静岡県生まれ。幼稚園から中学校卒業まで秋田県で育つ。高校から茨城県で生活。茨城県立境高校、法政大学法学部政治学科卒。2013年、フジテレビ入社。情報・報道番組を中心に担当。『みんなのニュース』のコーナー「上を向いて歩こう!」では、全国で1000回以上の生中継を経験。


 フジテレビの『Live News イット!』というニュース番組のアクティブキャスターとして、毎日全国各地のさまざまな現場から生中継を行っています。
 高校時代は野球部に所属し、白球を追いかける日々でした。引退した高3の夏、進路について初めて真剣に考え始めました。思い浮かんだのは、学校の先生や父親の職業だった料理人、地元のパン工場の作業員など。いろいろな選択肢のなかから考え抜いた結果、一番なりたいと思ったのがアナウンサーだったんです。その理由はこれまでの人生のなかで僕を一番支えてくれたのがアナウンサーだったからです。
 父は仕事が常に忙しく、母は病気がちだったので、幼少期から一人で過ごす時間が長かったのですが、その孤独な時間を癒やしてくれたのがテレビでした。一番好きだったのがフジテレビの『めざましテレビ』。毎朝5時25分に起きて欠かさず見ていたほどでした。それで目標をアナウンサーに定め、実現方法を調べたところ、キー局は大卒が前提条件でした。当時『めざましテレビ』のメインキャスターを務めていた小島奈津子さんが法政大学のマスコミ講座出身だったので、そこを目指そうと決断したんです。

両親を説得。学費は自分で

 両親からは大学進学するにしても私立は厳しいと言われていたのですが、「どうしてもアナウンサーになりたい。そのために法政大学に入りたい。だからもし合格したら行かせてください」とプレゼンしたんです。すると、最終的には「拓也の人生はできる限り応援したいから」と背中を押してもらえました。それからは遅れた分を取り戻すために1日10数時間以上、死にもの狂いで勉強をし、合格できたんです。
 入学後は当初の目的通り、マスコミ講座を受講しました。マスコミの仕事について学んだり、筆記試験や面接などのマスコミ企業独特の試験対策を施していただきました。仲間と一緒に夢に向かっている感じがして楽しかったです。
 また、学費を稼ぐため、浅草で人力車の車夫のアルバイトを始めました。4年間、週3〜5回ほど引いていたのですが、同僚、お客様、地元の方から礼儀作法や義理人情など生きるうえで大切なことをたくさん教わりました。
 就活はテレビ局のアナウンス職1本に絞り、第一志望のフジテレビに合格。その報せを受けた瞬間、お台場の浜辺に出て、母親に電話して号泣したのを覚えています。
 入社3年目に、三宅正治アナウンサーの代行で『めざましテレビ』のメインキャスターを任される機会があったんです。幼いころから見ていた舞台に自分自身が立っていると思うと、感動で体が震えました。念願の職業に就けたわけですが、もちろん楽しいことだけではなく、つらく苦しいことも多々あります。しかし、それを上回るやりがいもたくさんあるので、アナウンサーになって本当によかったです。

逃げてもいいが、逃げちゃいけない場面もある

 これまでの人生の最大のターニングポイントは、高3のときに両親に大学進学をプレゼンしたこと。もしあのとき、最初から諦めて親に伝えていなかったらアナウンサーにはなれなかったでしょう。その他のターニングポイントでも必ず自分の思いと決断があって、それを家族が受け入れ、見守ってくれていました。そのおかげで今の僕があると思っています。
 だから、高校生の皆さんにも、今自分の心が欲していることを大切な人と話し合い、その上で決断することが大切だと伝えたいです。そもそも進路やキャリア選択に正解はなく、その答えが出るのは決断の数年後です。だから結果はどうあれ、今の自分の気持ちを大切に、決断することを恐れないでほしいです。つらいときは逃げてもいいと思いますが、長い人生の中で絶対に逃げてはダメな場面があると思うんです。そのとき、逃げないために必要なのが決断力。自分で決断したことなら、どんなにつらくても踏ん張れて、その結果、後悔しない人生になると思います。

Change in myself

木村拓也
大学時代に経験した人力車の車夫では、月間売上1位を記録し、史上最年少MVPを獲得。
このときの経験が自身の人格形成に大きな影響を与えた。(画像は本人提供)


木村拓也
『Live News イット!』(月曜~金曜午後3:45~7:00)では現場から毎日生中継している。
各地のがんばってる人たちに会えるのが嬉しい。(画像は本人提供)


木村拓也
全国各地を飛び回るため、どんな季節、環境にも対応できるように常に準備は整えている。
取材道具は機能性を重視、最小限に抑えている。(画像は本人提供)


(取材・文/山下久猛 撮影/島袋智子)


木村拓也さんのInstagramはこちら

印刷用PDFはこちら!
「希望の道標」Vol.69 フジテレビアナウンサー/木村拓也

「希望の道標」バックナンバーはこちら