日本医療大学 理事長 対馬徳昭氏

介護する人にとって負担のない時代へ
一般教養と経営努力を身につけた人材育成

幅広い教養の習得を目指し、専門学校から大学へ
 本学の歴史は、1989(平成元)年に社会福祉法人ノテ福祉会(旧札幌栄寿会)が設置した「日本福祉学院」を開校したことから始まります。

 もともと札幌市内にて高齢者介護施設を運営していましたが、介護の現場を知るごとに、在宅において質の高い介護者の育成が必要であると感じ、日本福祉学院を設置し、介護福祉士の育成に乗り出したのがきっかけでした。

 以来、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、看護師、診療放射線技師、言語聴覚士と、専門学校3校7学科へと拡大していき、長年にわたり医療と福祉に貢献する人材を輩出。「医療・福祉系へ進むなら、“つしま”」と厚い信頼を寄せていただくまでになりました。

 時代は流れ、介護施設に入所する方々のなかには、大学を卒業した高齢者が増えており、現場で働く人材は医療や福祉の専門知識だけでなく、幅広い知識と一般教養が求められるようになってきました。

 そのような現場の変化に応えるため、2014(平成26)年に「日本医療大学」を開学。専門学校3校4学科を発展継承する形で本学に開設し、加えて臨床検査学科、臨床工学科、介護福祉マネジメント学科、ソーシャルワーク学科を新設し、広い視野と知見をもつチーム医療に従事できる次代を担う医療人・福祉人の育成により一層、力を入れています。

医療・福祉以外に経営能力の習得も
 本学の特徴は、月寒本キャンパスの同一敷地内に「日本医療大学病院」「介護保健老人施設 ノテ日本医療大学リハビリ」「看護小規模多機能型居宅介護 ノテ月寒」を併設している点です。敷地内にこれらの施設をもつ大学は、北海道の私学では本学のみです。各施設で実習を受けながら、医療や福祉の仕事の楽しさや尊さを実感できます。

 なかでも特筆すべきは、今後の日本における地域包括ケアの要ともいわれている「看護小規模多機能型居宅介護」を併設している点です。これは、胃ろうや点滴、痰の吸引など医療的管理を理由に在宅復帰が難しい方が、安心して住み慣れた自宅で過ごすことを手助けするために生まれたサービスです。利用者さまそれぞれの状態に合わせて「通い・泊り・訪問」を柔軟に組み合わせて利用でき、なおかつ365日24時間のオンコール体制も整っているため、休日や早朝、深夜のサポートも可能。一緒に生活を共にするご家族が仕事と親の介護を両立することができます。

 医療や福祉を支える社会保障財政がひっ迫している昨今。現在の施設介護に頼る方法から、今後は在宅介護にシフトしていき、看護小規模多機能型居宅介護は在宅介護の中心になると考えています。

 このサービスに在学中から触れることができ、在宅看護・介護とは何かを肌で感じながら、人の心の痛みや涙を理解できる人材を育成したいと考えます。

 一方で、企業の組織や仕組みを理解し、病院や施設の経営を支えられるスキルの習得にも力を入れています。
 先述したとおり、これからの医療・福祉は、病院や大型施設で看護・介護を行うだけでなく、小規模な看護小規模多機能型居宅介護事業所が窓口となり、自宅で看護・介護するという選択肢が増えます。そのような小規模事業所で働く職員は、看護・介護業務に精通しているとともに、経営マネジメントができる能力も求められます。
 本学では、そのようなケースにも対応できるよう、実践データを活用し、ビジネススキルの習得も目指します。
 将来的には、医療・福祉施設だけでなく、行政職への就職も目指せる履修モデルも用意しています。

2030年には見守り・排泄管理がロボット化
 現在、要介護(要支援)の認定者数は、約690万人(2022(令和4)年3月時点)で、2025(令和7)年には716万人に達するといわれています。これに伴い、厚生労働省は、約243万人の介護職員が必要であると見通していますが、急激な人口減少もあり、慢性的な人材不足となっています。

 加えて「介護職は3K」という古いイメージがいまだ浸透しているのが現状で、介護職に対して二の足を踏む人が少なくなく、担い手を確保しづらいという課題があります。

 この問題を解決しようと、厚生労働省と経済産業省では、介護分野におけるロボット・ICT化を進めています。特に介助業務のなかで大変といわれる「移乗介助」「排泄支援」「入浴支援」のロボット・ICT化の研究が行なわれており、多くの施設で実証、効果が確認されています。

 また、「介護ソフト」と「センサー」を連携することで、これまで2時間に1回行っていた深夜の見回りが不要になったばかりか、排泄時間が自動で記録されるようにもなり、介護職員の負担がぐんと軽減されました。

 今後ますます技術革新は進んでいき、2030(令和12)年には、見守り、排泄支援、服薬支援ロボットが普及していくといわれており、介護する側の負担が大きく軽減でき、介護する人に優しい時代になると考えます。

 これまで先人たちが介助業務で感じていた大変さをなくしていこうという時代になり、介護者の負担になる重いケアは減っているのが現状です。
 10年後、20年後には、ICTの活用がさらに広がり、これからの介護者は「高齢者とのコミュニケーション」が主たる業務になっていきます。

対馬徳昭氏

【Profile】
日本医療大学 理事長 対馬徳昭(つしま・のりあき)氏
北海道美唄市出身。つしま医療福祉グループ代表。介護労働安定センター理事、社会保障審議会臨時委員(福祉部会)、元「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合構成員。

【日本医療大学(スタディサプリ進路)】

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