学校法人大和学園 副理事長 田中幹人氏

創立100周年を迎える大和学園
時代を牽引する職業人の育成を目指して
新しい職業教育を追求する

創立100周年を見据えて、長期ビジョンを策定
 学校法人大和学園は、「人の和の広がりを大きくし、もって人類の福祉増進に寄与する」を建学の精神として1931年に創立し、京都の地で教育・研究活動に取り組んできました。現在は、調理、製菓・製パン、栄養・医療、ホテル・観光・ブライダル分野の専門学校を運営し、高度な知識と技術をもつ職業人を各界へと輩出しています。

 2031年、学園は創立100周年を迎えます。これに向けて、私たちは長期ビジョン「taiwa vision100」を策定しました。多様化・複雑化がますます進む社会のなか、その著しい変化に対応することはもちろん、改革の中核を担うことができる職業人を育てることを目指して、より充実した教育環境を整えていきます。長期ビジョンを掲げてさらなる発展を目指す大和学園が、学園をあげて取り組んでいる諸活動の一部を紹介します。

地域で学び、地域から学ぶ教育プログラムを開発
 これからの地域社会に貢献する職業人を育てるため、また、未来の産業界を担う職業人を育てるために、大和学園では地域や産業界と連携した学びを重視しています。この姿勢は100周年に向けて変わることはなく、むしろさらに強化・促進していく方針です。

 2022年度からは、連携協定を結んでいる京都府宮津市にて、「未来の担い手が創る地産地消のレストランin宮津プロジェクト」を発足しました。これは、京都調理師専門学校の学生が、宮津市で期間限定のレストランを開くというプロジェクトです。学生たちは事前に現地へ赴き、地域と協働して生産者など現地の方々からお話を伺い、地元の食材を活用しながら宮津市の魅力を伝えるメニューを考案しました。夏・冬の連続開催で、レストランを訪れてくださったお客さまは延べ300名以上。多くの方々に学生たちの料理を楽しんでいただき、観光誘客にもつなげました。

 参加した学生の中には、「将来は、ただ料理を作るだけでなく、食を通して地域や生産者の方々に貢献できる料理人になりたいと思った」と感想を述べる者もあり、有意義なプロジェクトだったと感じています。また、上級生と下級生が共に活動することで、それぞれが良い影響を与え合い、予想外の教育効果が生まれる場面も見受けられました。今後はこれらの成果や反省点を生かしつつ、京都ホテル観光ブライダル専門学校旅行学科の学生との共同プロジェクトも立ち上げるなど、内容をさらに発展・充実させていきたいと考えています。

 このほかにも、京都調理師専門学校・京都製菓製パン技術専門学校では、本年度より『京都遊学』という科目を導入しました。「国際文化観光都市・京都」のエリア全体をキャンパスに見立て、グループで学校の周辺を散策し、地域の魅力を探し出して発表する、という内容です。当科目は学生たちのチームワークやリーダーシップを育む機会となり、それが調理・製菓実習に良い影響を与えることが確認できました。調理師や製菓衛生師には、仲間と協働する力が求められます。その能力を、フィールドを使って育むことができる良い科目であると評価しています。
 今後も、京都ならではの特性を生かした科目や、企業・団体や自治体などと連携したプログラムを、積極的に開発してまいります。

DXを推進。新時代の職業教育を創造する
 職業教育の質を高めるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進にも力を入れています。例えば、2020年度に京都調理師専門学校で、2021年度に京都製菓製パン技術専門学校で、2022年度に京都ホテル観光ブライダル専門学校でスタートした「VRプロジェクト」。ここでは、調理実習など学内の実習や演習授業をVR動画で体験できるコンテンツを開発しています。2D動画と異なるVR動画の利点は、「先生」の動きを360度の視点で体験したり、調理を行う手元をいろいろな角度から見たりすることができるところです。学習者はこれまで以上に調理工程や衛生管理における重要な知識、ポイントなどを習得することができると考えています。VRを活用することで、「学校で授業を受ける当たり前」を「いつでもどこでも学校に」と実現し、学生にとってより学びやすい環境を整備し、調理師や製菓衛生師、ホテリエ養成教育などにイノベーションを起こしたいと考えています。

 調理・製菓・観光分野以外では、管理栄養士、栄養士などを養成する京都栄養医療専門学校において、「メタバースプロジェクト」を開始しました。管理栄養士、栄養士の臨地(校外)実習は給食施設などで行われますが、衛生上の問題により全体を俯瞰しておのおのの職員の動きを理解することや限られた実習期間内では自身が選んだ分野以外の給食現場の特性を把握することは困難な状況です。そこで、メタバース(仮想空間)内に給食施設を設けて、各分野の作業区域におけるあらゆる業務を見て回れるコンテンツを開発することにしました。将来的には、栄養指導や食品開発など、幅広い業務を体験して学べる環境を構築することを目標にしています。

SDGs達成に貢献する1000の活動を目指す
 大和学園では「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」に向けて「共創パートナー」の登録を受け、これを機に、「taiwa 1000 SDGsプロジェクト~Road to EXPO2025~」を立ち上げました。これは、大阪・関西万博の開催日までに、SDGsに関する1000個の活動を実践するというものです。既に取り組んでいる活動としては、食品ロス削減のための産学連携プロジェクトなど。前述した宮津市とのプロジェクトも、持続可能な地域活性化に寄与する点などから、活動の一つに加えています。教育内容、施設設備、CSV活動など、さまざまな分野を含めて目標活動数1000個を達成したいと考えています。

 このほか、厚生労働省による女性活躍推進企業「えるぼし(最高位三つ星)」の認定や、子育て推進企業「くるみん」の認定を得るなど、教職員の労働環境の面からもSDGsの推進に取り組んでいます。「えるぼし」に関しては、京都府内の教育機関として、初めて最高位三つ星に認定していただきました。私自身の信条でもありますが、学生にとって学びやすい環境というのは、教職員にとっての働きやすい環境から生まれるものだと思っています。今後も、教育内容の進化・充実化と同様、教職員の働き方改革にも力を入れていく所存です。

教育・研究活動を通して、人々の幸せに寄与したい
 大和学園が現時点で取り組んでいる諸活動の一部を紹介させていただきました。活動は多岐に渡りますが、すべての目的は、建学の精神「人の和の広がりを大きくし、もって人類の福祉増進に寄与する」に基づくものです。そして何より、私たちの使命は、未来を担う職業人を育てることです。90余年の歴史を礎にしながら、新しい職業教育を追求し続けて、学生が自己肯定感を高め、成長し、目標を見つけて突き進むことができる場所を用意します。そんな教育・研究活動を通して、人と人の和を広げ、人々の幸せに貢献することを目指してまいります。

田中幹人氏

【Profile】
学校法人大和学園 副理事長
京都調理師専門学校・京都製菓製パン技術専門学校・京都ホテル観光ブライダル専門学校 校長
田中幹人(たなか・みきと)氏

1986年生。大学卒業後、大手IT企業勤務を経て大和学園入職。現在は調理・製菓・観光分野の専門学校校長を務める傍ら、VRやAIを活用した新規事業や地域活性化など産学連携事業を推進。京都大学経営管理大学院修士課程(M.B.A)修了。一般社団法人京都食文化協会監事、一般社団法人京都府専修学校各種学校協会留学生支援プロジェクト事業推進委員長なども務める。

【京都調理師専門学校(スタディサプリ進路)】
【京都製菓製パン技術専門学校(スタディサプリ進路)】
【京都ホテル観光ブライダル専門学校(スタディサプリ進路)】
【京都栄養医療専門学校(スタディサプリ進路)】

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