都留文科大学 学長 加藤敦子氏

大切にしてきた「教員養成」「国際化」「地域連携」を、
もう一段、さらに押し進めていくための改革を推進

積極的な改革を推進することで、社会の変化に対応
 都留文科大学は1953年山梨県立臨時教員養成所として設立され、1955年都留市立の大学となりました。再来年2025年に大学創立70周年を迎えます。この間、教員養成の大学として優秀な教員を輩出し、卒業生のうち累計7000余名が日本全国で教職に就いています。一方で、最近では企業への就職が最も多く、公務員になる卒業生も増えています。
 こうした現状を背景に、都留文科大学は「教員養成」「国際化」「地域との連携」をキーワードとして小規模の公立大学ならではの教育を押し進めてきましたが、近年の驚異的なスピードで進展する社会の変化に対応するため、2023年4月、新校舎「Tsuru Humanities Center(THMC)」を開設。DX(デジタルトランスフォーメーション)教育の推進と地域連携の充実を図るとともに、2024年度には学部・学科の再編を実施。学生の選択の幅を広げる新たなカリキュラムの提供と副専攻プログラムをスタートさせて、スキルの習得にとどまらない幅広い教養と人間性を身につけた人材の育成を目指します。

学部・学科再編にあわせ、自ら学ぶカリキュラムへと変更
 現在、文学部に設置されている比較文化学科と国際教育学科を、教養学部の学科として再編。2024年4月より、「文学部」は国文学科と英文学科の2学科で、時間・空間を超えたことばの営みを探究する学部、「教養学部」は学校教育学科、地域社会学科、比較文化学科、国際教育学科の4学科で、それぞれの専門性を活かしつつ、変化する世界の主体として生涯にわたって学び行動する教養を身につける学部となります。いずれも、学問領域を超えて学べる柔軟なカリキュラム、キャンパスから地域に溶け込んで実践的・経験的に学ぶことのできるカリキュラムを用意しています。
 都留文科大学ではこれまで、卒業に必要な単位を文部科学省の基準より高く設定し、卒業までにしっかり学んでもらうという方針がありました。それぞれの学問領域の専門的知識を習得するための必修科目も多くありました。2024年度入学者からは各学科の必修科目を厳選し、学生が自分のキャリアを見据えたうえで学びたい科目を選択できる自由度の高いカリキュラム構成に変更し、さらに、そのなかで副専攻プログラムを導入して学生自ら積極的にかつ体系的に学ぶことのできる教育システムを取り入れました。
 その背景には、決められたことを学ぶだけではなく、学問領域を超えて幅広く学んでほしい、キャンパスに閉じこもるのではなく地域に飛び出して学んでほしい、実践的な学びを通してより深く学んでほしいという目的や願いがあります。
 また、高校では5教科8科目の枠にとらわれない探究学習などの複合的な学びが重視されていると思いますが、本学でも、既に課題解決型の授業やプロジェクトを行っています。都留市や近隣の自治体、地元の企業とコラボレーションして課題解決に取り組むことで、学生は教室で学んで得た知識を現場でどう活かして社会に貢献するか、役立てるかを、都留という地域で実践しています。都留市内の学校ではSAT(学生アシスタントティーチャー)として年間を通して現場で実践的な活動をしています。こうした学びは今後も、さらに積極的に押し進めていきます。
 都留市と地域の方々に全面的なご協力をいただけるのも、公立大学である本学の強みの一つと言えます。

THMCは、大学と地域社会を繋ぐハブ
 2023年4月、「Tsuru Humanities Center(THMC)」が完成しました。THMCのキーコンセプトは「集う、学ぶ、深める」です。
 THMCのデジタルコモンズというスペースには、VRや3Dプリンター、レーザーカッターなどのデジタル機器を備えており、学生や地域の方々がこれらの機器を自由に使うことができます。この設備を活用して、副専攻プログラムで情報系の科目を体系的に学べるカリキュラムを提供し、プログラミングやデジタルコンテンツ制作などの講座を学生や地域の方々を対象として開講していきます。
 小学校の教室を再現した模擬教室では、学生による模擬授業や都留市内の学校の先生による研究授業を行うなど、子どもたちや現職の先生との交流を通して学生が教員としての力を身につける場となります。
 日本の将来を支える子どもたちを教育するという教員の役割は、少子化が進む現代だからこそますます重要になっています。大きな志をもち、厳しい教育現場のなかで教員を続けていく力のある学生を、教員として社会に送りだしたい。THMCは実践力のある教員になるための場でもあります。
 2025年には、「都留フィールド・ミュージアム(仮称)」が完成予定です。そこでは、都留市と連携して多世代・多文化の交流を通して学生が学べる環境を整える予定です。

英語圏の大学との海外協定を積極的に拡大
 地方の公立大学だからこそ世界中の大学と交流し、本学学生を留学生として送り出し、海外からの留学生の受け入れも積極的に進めていきたいと考えています。現在は交換留学協定先が10大学ありますが、海外からの留学生に本学が何を提供できるか、お互いのメリットを考えながら国際交流プログラムを充実させ、特に学生の希望の多い英語圏の海外協定校を増やしていく計画です。本学に来た交換留学生からは、都留市の学校や地域での活動がリアリティのある楽しく有意義な経験だったという感想が寄せられており、手応えを感じています。
 短期語学研修では、オーストリア、フランス、オーストラリアへの派遣も近年スタートさせました。

文系だけでなく、理系の学びも可能なカリキュラム
 都留文科大学といえば、教員養成の大学、文系の大学というイメージが強いのですが、意外と知られていないのが、中学の数学・理科の教員免許が取得できること、理系の学びもできる大学になりつつあることです。
2024年4月から、情報系の科目は副専攻プログラムとして、どの学部・学科に所属している学生も副専攻で履修することができます。従来の教員養成、文系大学というイメージのある本学の教育内容も年々進化しています。ぜひ、都留文科大学の新しい教育カリキュラムに注目してください。
 本学は、小学校、中学・高等学校の教員養成を柱としている大学です。だからこそ、高校の先生方には都留文科大学の教育改革を知っていただき、生徒さんたちへ本学を勧めてほしい、本学へ送り出してほしいと強く願っています。現在、都留市の先生方と定期的に研究会などを行っていますが、将来的にはその範囲を都留市から全国に広げ、日本中の高校の先生方とオンラインで繋がり、高校の教育現場の生の声を聞き、それを本学の教育に反映させていきたいとも考えています。

加藤敦子氏

【Profile】
都留文科大学 学長 加藤敦子(かとう・あつこ)氏

東京大学大学院人文科学研究科(国文学専攻)博士課程単位取得退学(学位)文学修士。ソウル女子大学校、東京経済大学講師等を経て、2013年都留文科大学文学部国文学科着任。国文学科長、附属図書館長、副学長等を歴任し、2023年4月から現職に就任。
専門:日本近世文学
共著書:『高畑勲をよむ文学とアニメーションの過去・現在・未来』(三弥井書店、2020年)
    『〈奇〉と〈妙〉の江戸文学事典』(文学通信、2019)

【都留文科大学(スタディサプリ進路)】

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