専門学校国際理工カレッジ 理事長/学校長 竹井 透氏
安心感のあるアットホーム教育とEQを高める人と人との交流で
現場に求められるエッセンシャルワーカーを育てる
本校は、IT技術者、建築士をはじめ各業界に携わる人材を育成するために1991年に誕生しました。その後は、時代のニーズに対応すべく、ゲーム・デザインなどの学科を新設し、現在はITスペシャリスト科(4年制)、高度情報処理科(3年制)、情報システム科(2年制)、ゲームクリエイター科(4年制)、Web・CGデザイン科(3年制)、建築設計科(2年制)の6つの学科を設け、業界で幅広く活躍できる人材の育成に尽力しています。
アットホーム教育の意義
本校は、「アットホーム教育」「未来を創る人間力を育てる」「すべては学生のために」という3つの理念を掲げています。ではまず、なぜ「アットホーム教育」を重要視しているのか。アットホームな教育とは、教員と学生の距離が近く、一人ひとりを大切にしながら育成することができる環境を意味しています。実際に大人数での授業では実現が困難なため、本校では少人数の授業を主体とし、全員の顔が見える場を用意することでスキルや知識の定着を目指しています。また担任制を導入し、学生がいつでも気軽に相談でき、教員に疑問を素直にぶつけられる環境も整えています。
少人数のアットホーム教育は設立以来続けてきた方針ですが、コロナ禍を体験したことで、改めてその大切さを実感しました。コロナ禍では対面での授業ができず、オンライン授業に切り替えなければならない期間が続きましたが、やはり専門学校の授業において対面での授業に勝るものはありません。仮に成熟した大人が専門スキルを得るためであれば、目的がはっきりしているためオンライン授業でも十分に学べますが、本校に在籍している学生のほとんどは高校を卒業したばかりの学生たちです。目標をもって専門学校に入学しても、彼らの気持ちはまだ流動的で不安定です。対面によって、互いの表情を見ながら授業を行い、さらには「学び」以外の部分もサポートしてこそ、学習意欲を持続させ、一人ひとりに合わせたスキルを養うことができると考えています。
授業以外の豊富な交流を通して、EQを高める教育
続いて「未来を創る人間力を育てる」について考えてみたいと思います。近年登場したAIの存在が、未来の仕事のやり方に大きく影響を与えることは間違いないでしょう。これまでは、IQの高い人材こそさまざまな場面で活躍できる傾向がありましたが、今後そのような仕事は、AIに代わりがきくようになってしまうかもしれません。そうなった場合、未来を担う人材に求められるものは、IQのようには数値化ができない「人間力」だと私は考えています。
ここ最近、IQよりもEQ(Emotional Intelligence Quotient=心の知能指数)という言葉が特に注目されています。EQとは、熱情・愛情・感情・感性・コミュニケーション力など、人間にしかもつことのできない「人間力」のことです。高いEQをもつ未来人を育てるためには、仕事に必要な知識やスキルの習得だけではなく、人間力の育成が不可欠なのです。
「専門学校は、専門的なスキルを養う場」というイメージをおもちの方も多いと思いますが、本校には、授業以外にも学生たちが率先して行動し、交流できる行事やクラブ活動がたくさんあります。高校や大学と同様、行事やクラブ活動にも全力で取り組める場があれば、コミュニケーション力や協調性、発信力、創造力、リーダーシップなどを、楽しみながら自然と身につけることができるでしょう。実際に学生たちは、我々が想像している以上に行事やクラブ活動を楽しんでいますし、放課後の自主練習や応援などにも積極的に参加しています。2023年には、本校敷地内に、体育授業やクラス対抗の球技大会(行事)、クラブ活動などに活用できる全天候型スポーツ施設「KRC DOME」を建てました。最新型の建築物は、建築を学ぶ学生たちにとっての「生きた教材」にもなっています。
「すべては学生のために」の想いを全教員が共有
最後に「すべては学生のために」は、本校に集う学生と教職員は、互いに心が通じ合うファミリーであるとの考えに基づいた理念です。学生たちと接していると、彼らは私たちが想像している以上に“大人”との会話を求めていると感じています。学校長の私にもよく話しかけてくれますし、学びとは関係のない他愛のない話題で盛り上がることも多々あります。その背景には、多様化した家族関係や核家族化、一人親世帯の増加などから、大人と接することを新鮮に感じている学生が多いからかもしれません。そんな学生たちにこそ、一人ひとりの教員が家族のように接することが、安心感や学びへのモチベーションにもつながるのではないでしょうか。
だからこそ本校は、それができる教員、つまり高いEQをもつ人材であることを教員たちにも求めています。
授業も学生たちが興味をもって学べるものにしないといけません。なぜなら、ただ知識を教えるだけの指導では楽しく学べないからです。難しい専門分野についても、たとえ話や教員自身の体験談を交えたわかりやすくオープンな授業によって、学生たちは今学んでいることが自分の将来の仕事にどう関わってくるのか、なぜ学ばなければならないのかを理解できるようになります。
幸い本校には、学生と視点を合わせながら話ができ、オープンマインドを持って指導できる教員がたくさんいます。講師でははく、専任の教員が約8割を占めることも、本校の大きな強みです。
専門学校はエッセンシャルワーカーを育てる場
高校卒業後の進路を考えるにあたり、専門学校より大学にアドバンテージを感じている傾向が根強くあります。なかでも進学校の場合は、大学を勧めるケースがほとんどでしょう。先ほど、将来はAIに取って代わられる仕事がたくさんあるという話をしましたが、エッセンシャルワーカーの仕事には人にしかできないことがたくさんあります。ご存知のようにあらゆる業界の現場で、エッセンシャルワーカーの人材不足が喫緊の課題となっています。専門学校の役割は、まさに現場に欠かせないエッセンシャルワーカーを育成すること。世の中に必要とされる職業人を育て、輩出しているのが専門学校なのですから、その存在意義は世間がイメージするよりももっと大きなもののはずです。
本校はこれからも、時代のニーズをしっかりと踏まえながら、3つの理念をベースに業界や世間から求められる人材を送り出していきます。そして専門学校の存在意義をもっと世間に広く伝えていき、認知の向上を図っていきたいと考えています。
【Profile】
竹井 透(たけい・とおる)氏宮崎県出身。中央大学経済学部国際経済学科卒業。アツギ株式会社、マニュライフ生命保険、株式会社学研などに勤務。その間、約2年間イギリス、スイスに在住。1991年、専門学校国際理工カレッジの設立に参加。2009年より、理事長・学校長に就任。秩父産業株式会社の代表取締役社長として経営をV字回復させた実績や、さまざまな業界の会社での経験、海外在住などの体験を活かし、型にはまらない「人間力を高める」人材の育成を行っている。千葉県専門学校協会会長、千葉県専修学校各種学校協会副会長も務め、専門学校の役割の高さと知名度アップにも力を注ぐ。