21世紀アカデメイア 学長 田坂広志氏
「大学も専門学校も超える新たな学びの場」を目指しAI失業の時代にも活躍できる人材の育成を
第四次産業革命が進み、ロボティクスやAIが人材に求められる条件を激変させるこれからの時代、「知識」を教えるだけの大学や、「技能」を身につけさせるだけの専門学校は淘汰されるでしょう。全国4地区で18の学校を運営するAdachi学園グループが今年度、〝21世紀アカデメイア〞と名を改め、「大学も専門学校も超える新たな学びの場」を目指すのも、現在の教育の在り方に対する危機感からです。アカデメイアとは、古代ギリシャの哲学者プラトンが開いた学問や芸術、スポーツの学びの場。 対話や内省、そして体験を重視した学びの精神を、この21世紀に復活させたいのです。
7つのステップによる新しいカリキュラムのベースとなるのがリフレクション(振り返り ・ 反省)です。 毎日の実践体験学習やグループ学習において、 個人やチーム単位で振り返りの機会を設けることで、 学びの効果と成長の速度が圧倒的に高まります。
また、本学園は、デザイナー、ビジュアルアーツ、ビジネス、ホスピタリティの45分野それぞれで最先端エキスパートを育成しますが、実社会では専門の枠を越えた広い視野が求められます。そこで、毎週金曜日、東京、名古屋、大阪、福岡の各地区で、学校の枠を超えて、学生が他分野の学びを自由にできる〝クロスオーバー・フライデー〞を実施しています。さらに、毎年河口湖で実施するのが富士五湖サミットです。昨夏開催した第1回では、全国から集まった学生がチームを組み、 社会課題解決のビジネスプランを競いました。そこで参加学生が培った志や使命感、リフレクションの習慣は、いま、1万人の学生に浸透しています。時間の限られた専門学校だからこそ、密度の濃い実践体験活動と日々のリフレクションを通じて、実社会で求められる力や、生涯にわたって学び続ける技法と習慣を身につけてほしい。目的意識と責任感が強く、チャレンジ精神旺盛な本学園の学生には、大いに期待しています。
他にもいろいろな改革が進んでいます。例えば、キャリアアップのために、卒業後も学び続けることができ、卒業生同士の結びつきを強める〝ネクスト・ステージ・アカデミー〞の設置です。
また、キャリアパスの多様化の一つとして、一定の条件をクリアした人材は専門学校卒でもMBAコースに進学できる道を開くことができました。
この改革は専門学校の枠に収まりません。山梨県は富士五湖地域を〝自然首都圏〞に発展させるプロジェクトを進めており、本学園も中核組織として参画しています。その一環で、米国の自治体やオンライン大学と提携し、富士五湖地域で国際イベントを共催し、本学園の学生も多数参加します。
こうした改革を通じて、日本の教育に一石を投じたいと考えています。
偏差値を上げれば幸せな人生が待っている時代ではありません。そのことは、ダボス会議など世界の最先端の動向を見てきて痛感しています。
教育を変える。その志と明確なビジョンのもと、新たな挑戦をするのが21世紀アカデメイアに他なりません。
【Profile】
田坂広志(たさか・ひろし)氏●1951年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学院修了。
工学博士(原子力工学)。世界最大規模のシンクタンク,米国バテル記念研究所客員研究員、日本総合研究所取締役などを経て、2000年多摩大学大学院教授(現名誉教授)。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議メンバー、内閣官房参与などを歴任。国内外から8000人の経営者が集まる田坂塾塾長。著書は100冊を超える。2023年4月より現職。
【学園プロフィール】
1958年創立。全国に18の学校を擁する。2023年4月に学園グループの対外名称を「21世紀アカデメイア」と改め、2024年4月より、全18校の名称を「アカデミー」に統一・変更予定。富士五湖、ロサンゼルスにも新キャンパスを開設し、フィールド体験と海外体験を重視した教育を推進。
まとめ/堀水潤一 撮影/島袋智子