明治大学 学長 上野正雄氏
社会を支え、社会を変える人材の育成。
これからも、明治大学はさらなる改革を続けます。
より良い世の中をつくるために、互いを尊重し合える人材を育成
明治大学は、1881年(明治14年)に3人の若き法学者によって創立された明治法律学校から始まりました。以来143年の歴史のなかで、建学の精神である「権利自由、独立自治」は “「個」を強くする大学”という明治大学の教育理念へと継承されてきました。
明治大学の前身である明治法律学校が創立された約150年前の、自由も権利もなかった時代において、建学の精神に「権利自由、独立自治」を掲げ、その実現に向けて新しい世の中をつくるために突き進んでいった創立者たちの意欲は大いに燃えていたことでしょう。
しかし、今の日本や国際社会を考えると、残念ながらいまだに繰り返し続く戦争、政治や宗教、人種、性別などさまざまな要素に基づいて弾圧や抑圧が行われている現実、差別や貧困の問題、そして当時にはまだなかった地球を脅かすほどに加速する環境破壊など、むしろ昔よりも良くない方向に進んでいると言えます。
これらの問題に共通する原因は何でしょう。それは「人間が人間の尊厳を尊重しないから」という、とてもシンプルなことだと考えます。自分自身を大切にすることも必要、それと同じように他者を尊重することも必要。つまり、自他の自由の尊重(「権利自由、独立自治」)を実現することが問題解決につながると考えています。
自分を大切にし、他者を大切にして、互いを尊重し合えるような人材を育成することが、明治大学のこれまでの使命であり、これからの使命でもあります。本学で学んだ人が社会を変えていってほしいという思いと同時に、大学でなされた数々の研究が社会を支え、社会を変えていく、明治大学はそういう大学であるべきだと考えています。
スケールメリットを生かした研究体制と教育課程の改革に取り組む
法律学校としてスタートした明治大学も、今では10学部、16研究科(大学院12研究科、専門職大学院4研究科)を擁し、1000人の専任教員と600人の専任職員、3万5000人の学生、そして60万人の卒業生によって構成されるまでに発展してきました。この多様性や規模を生かした研究や教育の力で、より良い世の中をつくっていけるのが明治大学の大きな強みです。
現在、在籍している教員(研究者)は専任だけでも約1000人です。つまり明治大学では、広く、深い範囲にわたる研究を可能にする研究者1000人のネットワークを自前で整備することができます。この研究者たちが大学の中で自由につながって研究を進めていきながら、さらにそこから学外の大学や企業・組織とつながって研究を広げていくことができる体制を作れば、さまざまな問題提起と解決策を提案することができます。
また、教育の面からも同じことが言えます。今、社会が求めているのは、物事を自分自身で理解して何が問題なのかを明らかにし、そこから課題を抽出し解決していける力を身につけた人材です。しかし、物事の問題を明らかにしていくためには、一つの視点だけでは見えてきません。そこで、明治大学が目指すのが、多角的な視点を身につけた人材の育成です。
そのためには、1000人の研究者から広がるさまざまな分野の研究成果を学生の学びに提供し、学問分野の垣根を低くした環境のなかで一人ひとりの学生が複数の視点を身につけたうえで世の中を見ることができれば、当然、物事の問題もより見つけやすくなるはずです。具体的には、法学部に入学した学生は、基本的に法学を学べば卒業できますが、同時に法学以外の分野も、体系的に学修してもらいたいと考えています。学生の立場から言えば、明治大学で学ぶことをメリットとして実感できるような教育体制に改革していきたいです。既に個人が他学部の授業を受講する「他学部履修制度」は整備されておりますが、それを超えた教育改革を目指していきます。
大学のスケールメリットを最大限に活用し、学生が十分に使える教育体制を整えていくことで、明治大学も、そして学生も、これからの世の中をより良くするために大いに役立っていくと考えます。
明治大学は2026年より、日本学園中学校・高等学校を系列校に
2026年4月1日より、日本学園中学校・高等学校を明治大学の系列校として共学化し、名称を明治大学付属世田谷中学校・高等学校とします。
日本学園中学校・高等学校は1885年に東京英語学校として設立された男子校で、教育方針に「天才を創るよりも各人の天分を活かすこと」を掲げ、個性を尊重し、人格教育に重きを置いてきた伝統ある中学校・高等学校です。一方、明治大学は“「個」を強くする大学”を教育理念に掲げており、考え方のベースが重なる両校が強い連携を保つことによって、それぞれの教育理念をより良く実現することができるという利点がありました。
2029年度からは、明治大学への付属高等学校推薦入学試験による入学の受け入れを開始し、系列校化によって一貫した高大連携教育を行い、早期から明治大学の教育理念に基づく教育を受けた生徒を受け入れていきます。
2025年春、生田キャンパス「センターフォレスト(Center Forest)」の竣工を予定
2022年3月に竣工した明治大学・和泉キャンパス(東京都杉並区/国際日本学部を除く文系6学部の1、2年生が通うキャンパス)の「和泉ラーニングスクエア」に続き、現在、生田キャンパス(神奈川県川崎市/理工学部と農学部の学生が通うキャンパス)に6階建ての新校舎「センターフォレスト」を建設しており、教室機能や図書館機能、ラーニングコモンズ機能を一体化させたこの共用教育棟は、2025年春の竣工を予定しています。
新しい時代の、新しいキャンパスのあり方を模索してきた明治大学は、学生の個の力を伸ばすためにできることすべてを取り入れ、学修に没頭できる空間、学生同士が学び合える場所、リラックスできるオープンスペースなど、学生たちが自由に利用し、充実した学生生活を過ごせる場を提供しています。
今後も、すべてのキャンパスに、現代の社会的ニーズに対応したアクティブ・ラーニングの設備を一層整えるなど、どこにいても学生が学べる環境を整備し、学生の主体的な学修を後押しする教育環境の改革に積極的に取り組んでいきたいと考えているところです。
明治大学は学生数の多い大学ですが、1授業30人以下の少人数の授業が過半数を占めています。授業の規模が小さくなれば、学生たちはさまざまな場所で学修することが可能です。ある程度自由度のあるスペースを作っておけば、目的によって学生たち自身がそこを上手に使いこなすという効果もあります。
教員と学生との距離が近く、信頼関係を築けているのが特長
明治大学は約3万5000人を抱える学生数の多い大学ですが、学生一人ひとりとしっかり向き合い、コミュニケーションを大切にしているのが大きな特長です。前述のとおり、過半数の授業は少人数で行われ、教員と学生との距離も近く、高校のクラス担任と生徒よりも、明治大学のゼミナールの教員と学生とのつながりの方が密接だと言っても過言ではありません。学外からも“面倒見が良い大学”(※)と評価を頂いており、教員に限らず、学生と接する職員もさまざまな質問に親身に対応し、問題があれば解決に向けてアドバイスを行っています。
学修に関する問題、精神的な問題、経済的な問題など、学生生活のなかで学生は多くの不安や悩みを抱えています。明治大学では学部・研究科担当の職員をはじめ、学生支援事務室、学生相談室、就職キャリア支援事務室、ボランティアセンター、レインボーサポートセンター等の職員が、学生一人ひとりをきちんと受け止めて対応する仕組みがあり、こうした仕組みや手厚いサポートによって、学生だけでなく、保護者の方々にも安心していただいています。
※「面倒見が良い大学ランキング2023(全国編)/大学通信調べ」において大規模大学で唯一のトップ10入り。「東京編」では第三位。
【Profile】
明治大学 学長 上野正雄(うえの・まさお)氏1980年3月明治大学法学部卒業。1994年4月裁判所裁判官(2003年3月まで)。2003年4月明治大学法学部専任助教授、2004年4月明治大学法科大学院法務研究科(現専門職大学院法務研究科)専任助教授、2004年6月東京弁護士会弁護士(2008年12月まで)、2007年4月明治大学法学部専任准教授、2010年4月明治大学法学部専任教授。明治大学副学長(広報担当)、学長室専門員長、法学部長等を経て、2024年4月明治大学学長に就任。