「第3回理系ブロッサム」開催レポート

理系選択を考えている女子高校生たちへ-
「理系の今が、わかる」先輩たちからのメッセージ

2024年7月13日、理系の大学に進みたいと考えている女子高校生を対象にしたオンラインセミナー「第3回 理系ブロッサム」が開催されました。
三菱みらい育成財団の主催で行われているこのオンラインセミナーは、女子高校生たちが理系の女子大学生や理系出身の企業人から進路選択や具体的な仕事の話を聞くことで、自分らしい進路を選んでもらうために企画されているもの。
今回のテーマは、「もっと、理系の今が、わかる日。」
たくさんの先輩から話を聞いて理系を深く知ってもらうために、第一部では理系出身の大先輩である宇宙飛行士の山崎直子さんと琉球大学工学部教授の玉城(たまき)絵美さんのパネルトークが。第二部では企業講師(三菱グループ各社で働く理系出身の女性)と大学院生・大学生の理系のファシリテーター、そしてセミナーに参加してくれた181名の高校生とのブレイクアウトセッションが行われました。

目次
Section01・パネルトーク
Section02・ブレイクアウトセッション
理系ブロッサムに参加した高校生の声


Section01・パネルトーク
宇宙飛行士の山崎直子さんと琉球大学工学部教授の玉城絵美さんが、
理系を目指す女子高校生たちの悩みに答えてくれました!
「英語や数学が苦手でも、理系に興味があれば大丈夫」
「高校の文理選択がすべてじゃない。大学でも進路変更できるので、今は好奇心を広げて」
など、進路選択のヒントをたくさんいただきました。

山崎直子さん
東京大学工学部航空学科卒。東京大学工学系研究科大学院航空宇宙工学専攻修士課程修了。
宇宙開発事業団、(現・宇宙航空研究開発機構、JAXA)入社。2010年、日本人女性で2人目の宇宙飛行士として国際宇宙ステーションに滞在。2011年にJAXAを退職後からは、内閣府の宇宙政策委員会委員、一般社団法人スペースポートジャパン代表理事、日本宇宙少年団理事長などを歴任する。

玉城絵美さん
琉球大学工学部情報工学科卒。筑波大学大学院システム情報工学研究科知能機能システム専攻修了。東京大学大学院学際情報学府総合分析情報学コース修了。2011年、手の動作を制御する装置ポゼストハンドを発表し、米国「TIME」誌の「世界の発明50」に選出。同研究で東京大学総長賞。2012年、H2L株式会社起業。早稲田大学理工学術院准教授を経て、2021年より琉球大学工学部教授。


Q.最初に、お二人の現在の仕事についてお聞かせください。
山崎さん
私はエンジニアとしてJAXAに入社後、宇宙飛行士を目指して受験をし、訓練を重ね、2010年に国際宇宙ステーションでのミッションを終えた後は、国や民間企業と宇宙開発の政策を一緒に進めています。「一般社団法人スペースポートジャパン」では、いずれは誰もが宇宙に行けるといいなということで、国、民間、自治体と共に宇宙と地上をつなぐ宇宙港整備のための活動をしています。また、「日本宇宙少年団」というボーイスカウトの宇宙版のような団体の理事長もしています。これは、漫画家の松本零士先生から引き継いだもので、みんなで宇宙のことを学ぶ活動です。これから人が月や火星に住むとなると、空気や水もより循環型システムが必要になるので、そんな研究もしています。

玉城さん
私は今、人とコンピューターをより近くする「ボティシェアリング」という技術の研究開発と事業開発をしています。人とコンピュータで身体の情報、特に「固有感覚」と呼ばれる、何かを持ったときの重さや抵抗感などの感覚を共有することで、メタバース空間のアバターとか、ロボットなどと体験を共有する技術です。実はこの技術、高校時代に入院を経験し、旅行などの体験ができなかったことが開発のきっかけです。誰かと感覚を共有することで、人生の体験を増やしたい。そんな思いから、今までにない技術が生まれることもあるわけです。今は大学で教えながら、ボディシェアリングとヒューマンコンピュータインタラクションの研究と普及を行う会社の代表も務めています。


Q.理系を志したきっかけを教えてください
山崎さん
宇宙に興味をもったのは子どもの頃。星を見るのが好きで、それこそSFやアニメに影響されて、将来はスペースコロニーで住んでいるのかなとか、車が空を飛んでいるのかなと、そんな未来予想図を描きながら宇宙に興味をもちました。高校は女子校でしたが、理系に進む人も半分ぐらいいたので、理系に進むのが特別だという感じはなかったですね。

玉城さん
実は私、英語が苦手だったんです。今も苦手ですけれど(笑)。沖縄は交通インフラがあまり整っていないので、自宅からバス一本で通えるのは球陽高校だけ。その高校は理数科と国際英語科しかなく、英語が苦手だった私は、しかたがなく理系を選んだわけです。でも、大学進学のときは、ボディシェアリングを研究したいと思って理工系に進みました。


Q.理系に進む女子が増えると、世の中がどう変わりますか?
山崎さん
最近は、研究所にしても企業にしても理系女子を採用したいという声をよく聞きます。皆さんの活躍を社会は待っています。理系女子は少ないから働きづらいと考えるのではなく、逆にそれはチャンスと思ってください。
社会の新しい技術などを開発していくのが理系分野の仕事ですが、例えば車のシートベルトなども男性のデータをもとに安全設計してきたため、運転中に事故に遭った場合、女性のほうが負傷しやすい傾向があります。
宇宙開発も一緒です。人が宇宙に行く前にマネキンをロケットに乗せて実験をするのですが、以前は男性の人体組成を模したマネキンばかりでした。女性のマネキンで実験が行われるようになったのは、本当に最近です。理系女子が増えることで、より安全に暮らせる社会になると期待しています。

玉城さん
「女性は理系の仕事には向いていないのでは?」と思っている人が多いのか、まだまだ理系女子は少ない。さらに最近は、男女共に理系に進む人が少なくなっています。だからこそ今、理系女子は売り手市場です。
私が大学生の頃は、理系の学部は女子トイレが少なくて苦労をしましたが、今はトイレの数も増え、キャリア形成も10年前に比べたら格段に整ってきているので、理系を目指す方には、いいタイミングだと思います。
理系、文系、アート系など、いろいろな系列の方がバランスよく社会を支えることによって生産性が向上し、社会貢献ができるので、ぜひ、理系女子が増えて欲しいと思っています。


■高校生からの質問1
Q.それぞれの研究分野の面白いところを教えてください
山崎さん
世の中には絵画や文章いろいろな表現分野がありますが、理系もその中の一つで、ものを形にしたり、数式で表したりする。それはすごく美しいし、面白いなと思っています。

玉城さん
大学で研究する面白さと企業で研究する面白さって、それぞれ違うと思うんですね。大学では、いろいろな研究者に研究を引き継いでいって、新たな知見が一つの研究から10個、20個、場合によっては100個、200個というように広がっていくところがすごく楽しいです。例えば、電子顕微鏡を発明したらいろいろな分子生物の発見があったように。「人類が進化しているんだなぁ」と、研究によって世界全体が動いていることを実感できるところは、大学の研究の面白さですね。
一方、企業の研究者というのは、新しい製品を研究開発するとそれが販売されて、ユーザーさんの手に渡り、さまざまな意見が出てきて生活様式が変わったり、文化が変わったりすることがあります。例えば、椅子に座っていると楽だけれど、腰が痛くならない椅子が欲しいとか、ユーザーからのフィードバックを見るのもすごく楽しいところです。
大学でやる研究、企業でやる研究、国の機関でやる研究というように、研究機関によって面白さは変わってくるので、研究分野に進む場合は、研究機関というところも気にしながらキャリア形成を考えていただければと思います。


■高校生からの質問2
Q.大学を決めるときに、大学から学部を選ぶのがいいのか、
学部から大学を選ぶのがいいのか、どう思われますか?

山崎さん
この分野の勉強がしたいということが明確に、具体的にあるならば、学部から大学を選ぶのがいいかもしれません。でもまだ、この分野もいいな、あれもいいなと迷っている段階なら、包括的に勉強できる大学を選んで、大学で学びながら学部を考えていく。どちらでもありだと思っています。

玉城さん
私も山崎さんと同意見です。専門性が決まっているなら、自分がやりたいと思っていることに近い研究をしている教授がたくさんいる学部をおすすめします。どんな教授がどんな研究をしているのかチェックして、学部から大学選びなどをするのがいいですね。
一方、全然決まってない、なんとなく理系に進みたいという場合は、大学から選ばれるといいと思います。


■高校生からの質問3
Q.もうすぐ文理選択なのですが、まだ理系に行くか悩んでいます。
お二人が理系に進んで楽しかったことと、大変だったことを教えてください。

玉城さん
私は工学系に進んだのですが、アメリカの有名な工学系研究者アラン・ケイさんは、「未来を予測するのは、未来を発明することだ」と言っています。自分で未来をつくっていける、構築していけるのは、嬉しいし、楽しいです。
ただ、大学の学部生までは、理系文系にそれほどこだわらなくてもいいと思います。なぜなら、大学院に進むのであれば、大学に入ってからでも文系から理系に変えられるから。
理系の場合、最近は修士まで進むことが多くて、働きながら大学院で学んでいる人も増えています。ですから高校時代は、本能の赴くままに、好きなように進路を選んでいいと思います。後で理系にしておけばよかったな、文系にしておけばよかったなと思ったら、そこで切り替えてもいいと思います。

山崎さん
私も玉城さんと全く同感です。日本の場合は高校のタイミングで文理選択をすることが多いわけですが、海外の大学や日本でも大学院では理系文系でバッサリ分かれるわけではなく、自分がやりたい研究分野を見つけてやっていくわけですね。
むしろこれからは学際的な、文系と理系を融合した分野が大事になると思うので、今、どっちに行こうか迷われているということは、どちらにも興味があるのでしょうから、それは素晴らしいことだと思うんですね。無理に理系に絞るのではなく、両方の分野に興味を持ち続けていくことで、これからの人生が豊かになるのではないでしょうか。


■高校生からの質問4
Q.理系科目が苦手で、とくに数学が苦手なのですが、文系の科目より理系科目に興味があります。そういう場合は理系に進んでも大丈夫なのでしょうか?
玉城さん
文系が得意なら数学も得意なはずなので、勉強の仕方を変えると、数学も得意になるかもしれません。テキストで勉強していて理解が進まないならYouTubeで勉強するとか、YouTubeが苦手ならポッドキャストで勉強してみるとか。
進路を選択するときは点数がいいから選ぶのではなく、興味があり、ワクワクするほうを選択することをおすすめします。「長く続けられること」が、キャリア形成の上では重要になってくるので、ぜひぜひ、ワクワクしながら長く続けられる学問を選んでほしいです。

山﨑さん
理科は、いろんな現象を調べてそこから理論を見出していくという感じですが、数学は人が定義をつくっていくものですよね。その意味では、数学は言葉に近いという印象があります。数学は世界共通の言葉ですし、後から学び直しもできるので焦らず、理系に興味があるなら諦めないでください。応援しています。


■高校生からの質問5
Q.私は芸術に興味があるのですが、芸術系の大学に行くと就職が厳しそうな気がします。理系から芸術系に進むことはできるかなと考えているのですが……。
玉城さん
芸術系に興味があるならメディアアートに進むのもいいと思います。私が研究している隣の分野がメディアアートです。
芸術系の大学に進んで、その後に理系に進んだ先生たちもいます。私の知り合いですと、筑波大学の落合陽一先生。もともと芸術系でしたが、修士から工学系に進まれています。明治大学の宮下芳明先生も、大学は工学系、大学院の研究科で芸術系、博士課程でまた理系に。芸術系と工学系は近い部分がありますので、芸術と理系を混ぜ合わせたキャリア形成も楽しいと思います。頑張ってください。

山崎さん
実は私も、今は女子美術大学で非常勤の客員教授をやっています。そこでは、宇宙とアートを結びつけていく取り組みをしています。最近は、ロボットなども技術的な設計をした後に、デザインの専門家の意見を取り入れて一緒に開発をしていくことが多くなりました。これからは、技術とアートの結びつきがますます強くなっていくと思います。


■高校生からの質問6
Q.山崎さんに質問です。私は宇宙研究に興味があるのですが、具体的にどのような職業に就けばいいのかわからないので、どのような分野が重要になってくるか教えていただきたいです。
山崎さん
宇宙研究も本当に幅広いんですよね。いわゆる天文的なことから、工学的なロケットや人工衛星の開発、そこで行う動物実験とか、植物実験、材料実験、薬をつくるとか本当に幅広い。これから人が宇宙に行くことを考えていくと、そこでの食べ物や農業をどうしていくかなど、理系の技術は日常生活のすべてに関わってきます。その中でどんな分野を研究したいのか、少しずつイメージを膨らませていくといいのではないかと思います。
宇宙に限らず今はどの分野でも人手不足だと言われています。なかでも、専門性をもった上で、分野を横断してプロジェクトをすすめていけるプロジェクトリーダーのような人が不足していると言われています。いろんなことに興味を持ちながら、「それをどうやったら結びつけられるかな」という観点をもっておくことも必要じゃないかなと思っています。


■高校生からの質問7
Q.理系に進むなら、英語以外にできたほうがいい言語はありますか?
玉城さん
英語以外に言語を学ぼうとする姿勢、素晴らしいですね。もう一つほかの言語を学ぶなら、ぜひおすすめしたいのは母国語の勉強です。日本語を深く勉強しなければ、論理的思考も身につきませんし、論文も書けません。頑張ってください。

山崎さん
シンポジウムで発表するのも、論文を書くのも英語が多いです。宇宙ステーションでも英語が公用語です。宇宙飛行士の分野だと、ロシアのクルーも半数ぐらいいるので、ロシア語を勉強するのも必須科目になります。英語以外の言語ができれば強みになるかもしれませんが、どこの国の言語でもさまざまな異文化に触れ、経験を増やしておくことも大切ですね。


■高校生からの質問8
Q.高校時代にやっておいた方がいいことがあれば、教えてください
玉城さん
いろいろなイベントに参加して視野を広げることをおすすめします。大学を調べるという意味では、オープンキャンパスに参加してみるのもいいと思います。
大学の教授がどんなことを研究しているのか実際に質問してみると、キャリア形成や自分がやってみたいことが見えてきたり、別の視点から見ることができるようになったりするかもしれません。まず「知る」ことを楽しんでほしいです。

山崎さん
自分は「どんなこと好きなのか」試行錯誤する時間をもつといいですね。興味がある分野の本を読むだけでなく、今まで興味のなかった分野の本も手に取ってみると、「これも面白い!」と好きなことが広がるかもしれません。
自分の好きを見つけていくには、いろんな人の話を聞くとか、こうしたイベントに参加することも有効です。自分と向き合い、自分の興味を広げていく行動をしていくことが大切かなと思います。


■高校生からの質問9
Q.学生時代に自ら行動したことや続けていることがあれば、教えてください。
玉城さん
中学、高校、大学、今でもやっていますが、毎日本を一冊読んでいます。初めに漢文を読んでいたのですが、漢文って読み慣れると日本語を読むのがすごく早くなるんです。
学生の頃はインプットたくさんするようにしていました。そのインプットが今も生かされていると思うので、ぜひインプットをしてください。

山崎さん
今振り返ると、高校時代にジャズダンスの同好会をつくったことなどは、とてもいい経験だったと思います。学校側とさまざまな調整をしたり、先生にコーチを引き受けてもらったり、サークルを立ち上げることで、組織というものがわかりました。
ずっと続けていることというと、夜寝る前に、今日1日誰と会って、どんなことがあったかなと思い浮かべて、「ありがとう」と言いながら、自分の中で振り返り、反省しながら、次につなげていく。いわゆる瞑想のようなことを子どもの頃から続けています。
よく、経営者の方とか、アップルの創設者のスティーブ・ジョブズ氏なども瞑想をしていたと言いますが、それとちょっと近いのかもしれません。


Q. 最後に、理系を目指す女性高校生へメッセージをお願いします
玉城さん
理系に進もうか、文系に進もうか、理系に向いているんだろうかと悩まれている方がたくさんいらっしゃったんですけれど、自分のキャリア形成をしていく上では、「長く続けられる」ということがすごく重要です。
大学教授になっておいてこんなことを言うのはなんですが、私は勉強が大好きというわけではなかったんです。でも、ボディシェアリングの研究がしたいという目標が明確にあったので、長く続けられているんですね。
なので、文理選択を悩んだときは、友だちと一緒だから長くできそうとか、ワクワクできるから長く続けられそう、目的があるから長く続けられそうと思うなら選択をすればいいと思います。
もし途中で違ったなと思ったら、進路を切り替えて、そのときに「長く続けられる」ことを選べばいい。「長く続けられる」ということをひとつの基準として考えていただければと思います。頑張ってください。

山崎さん
私自身も高校時代を振り返ってみると、理系が好きだけれど海外への思いも捨てがたいなとか、いろいろ悩んだことを思い出します。海外で働く理系の人も多いことは後で知りました。
高校の文理選択ですべてが決まってしまうわけではないですし、今みなさんが考えている常識や想像している未来すら、どんどん変わっていきますから、もっと興味があることが出てきたら自分が決めた道を変更したり、さらに勉強したりして歩いていくのが人生です。この道を進んできてよかったなと思えるように、自分で道をつくっていくという思いで進んでいってほしいと思います。応援しています。



Section02・ブレイクアウトセッション
第二部では、理系出身の企業講師と大学院生・大学生の理系のファシリテーター、
セミナーに参加した高校生4、5人が一つのグループになり、
企業講師の先輩に自由に質問していくブレイクアウトセッションを2回。
最後にブレイクアウトシェアを行い、先輩たちの話を高校生同士で交換し合いました。

企業講師の中には、「入社3年目にアメリカで学会発表をした」という先輩もいれば、
「某健康飲料の研究開発を担当し、商品ができたらマーケティングが面白くなり、
研究職からマーケティング職に移動した」という先輩も。
さまざまなキャリアの先輩たちが口を揃えてアドバイスしてくれたのが、
「進路はいつでも変えられる。今、一番興味があることを選べば後悔しない」ということ。
そんな先輩たちのアドバイスを紹介します。


■三菱重工業 総合研究所の機械研究部で機構解析技術を担当しているS先輩の話
Q.理系に進んだ理由と、今の仕事を選んだ理由を教えてください。
「高校時代、国語が本当に苦手だったんです。でも、数学は少しできたので、工学部に進みました。大学ではバトルロボットを作って遊んでいました。
ものづくりが好きだったので、仕事をするならものづくりの会社がいい。しかも、動くものがいい。この点だけはこだわりました。現在の会社の面接で、『運動や摩擦の研究がしたい』と話したところ、希望の仕事に就くことができました。
車がどう動いたら転倒するかなどをパソコン上でシミュレーションし、解析をしています。自分が考えていた通りに解析ができたときはすごく嬉しいですし、そこから新しい安全な技術が開発されていくと思うとやりがいを感じます」

Q高校時代、大学時代にやっておけばよかったことは?
「昨年、入社して3年目にアメリカで学会発表する機会がありました。もっと英語をしておくべきだったと反省しました。でも、高校時代は、受験に必要な勉強をしながら、興味の幅を広げておくことのほうが大切だと思います。コレ知ってる! アレ知ってる! コレとアレはつながるじゃん!! というように、ベースになる知識が広いと、大学での勉強がきっと楽しくなります」


■三菱ガス化学 東京研究所で脱酸素剤の研究をしているW先輩の話
Q.理系に進んだ理由と、今の仕事を選んだ理由を教えてください。
「私の場合は、メーカーの研究職だった両親の影響が大きかったと思います。化学の話が日常的にあり、子どもの頃から理系科目は好きでしたが文系科目は苦手だったので、理系に進むことは決めていました。
大学は、理学部化学科に進学。工学部は、社会にあるものを改善していくことを中心に学びます。そうしたものづくりは就職後でもできるだろうから、大学では理学部で幅広く基礎研究をやっていきたいと考えていました。しかも化学科は、新しい物質を生み出せることが魅力でした。今は、大学で学んだ有機合成の知識を活かしながら食品から酸素を取り除く脱酸素剤の研究をしています。新しい物質を生み出す研究は、すごく楽しいです」

Q理系のメリットは? また、理系に向いているのはどんな人ですか?
「理系のメリットは、数字に強く計算が速いこと。技術職から営業職、経理などの事務職など、幅広い職種で知識を生かせること。仕事を通して、文明、文化の発展に関われること。
理系に向いているのは、日常生活の中で、どうしてだろう? なぜだろう? という疑問を見つけることができ、疑問に思ったことを自分で調べたり、突き詰めることができる人だと思います」


■三菱倉庫 神戸支店で総合職として勤務するI先輩の話
Q.理系に進んだ理由と、今の仕事を選んだ理由を教えてください。
「小学校1年生のときに鴨川シーワールドでシャチに魅せられ、シャチのトレーナーに憧れ、10歳のときには東京海洋大学に進学すると決めていました。希望通りに進学できたのですが、大学で学ぶうちに、同じ学部内の海洋政策文化学科で学びたいと思うようになり、3年で文系に転向しました。
東京海洋大学では1カ月の航海実習があり、コンテナ船や倉庫での荷下ろしは、よく目にしていたことから、物流に興味をもちました。卒業研究は文系の内容でしたが、大学で学んだデータ分析などの理系の知識を活かして、物流の課題を解決していきたいと考えています」

Q.大学に入学してからの学部変更は大変ではないですか?
「私が通っていた大学では、文系から理系に変える場合は試験があり、理系から文系に変える場合はフリーパスでした。たぶん、どの大学でも、理系から文転するほうが簡単だと思います。大学で学ぶうちに興味が変わることもあるので、理系を選んでおいたほうが、選択肢が狭くならないですね」


理系ブロッサムに参加した高校生の声
(参加者アンケートやセミナーの感想より抜粋)
▪️文理選択を迷っていましたが、「いつでも進路は変えられる」という先輩たちの声が大きな救いになりました。もう少し柔軟に考えていいんだと思いました。

▪️「そのとき自分が惹かれたものを選ぶ」という言葉がとても心に残りました。私は文理選択でとても迷っていましたが、自分の興味や、これから深めたい、続けていきたいと思うことが理系の科目に多いので、このイベントが理系に進む第1歩になったかなと思います!

▪️「理系に進むのは将来の専門を決めてから」と思っていましたが、企業講師の方々の話を聞いて、「大学で学びたいこと」と「就職後の興味」が違ってもいいし、違ってしまうこともあるというのは、新しい発見でした。

▪️自分の進路選択だけでなく、他の参加者の考えも聞くことができて貴重な体験でした。また、企業の方に遠慮せず質問できる雰囲気で嬉しかったです。

▪️学校内にいると理系進学希望者が少なく不安ばかりでしたが、このイベントでたくさんの仲間に出会えて嬉しかったです。また、学校が違うからこその意見が聞けたり、年齢が近く同じような進路を目指しているからこその意見交換ができたりして貴重な時間を過ごすことができました。

▪️理系に進むことで論理的な考え方を養うことができることや、点と点が研究を通してつながる楽しさがあることを改めて知り、今進学がとても楽しみです。

▪️企業講師の方たちの理系選択理由を聞き、「どうなりたい(将来はプロジェクトリーダーになりたいなど)」「何をやりたい(ものづくり、食品開発をしたいなど)」「理系をやりたい(文系が苦手だから)」の3種類があるんだなと思いました。自分は三番目だったので、自分が目指す人物像、職業像を考え直してみたいと思いました。

▪️全国の高校生や大学生たちのお話が聞ける機会はあまりないので、それぞれの方たちがどのような考えをしているか、どういう経歴なのかなど、深いところまで聞けたことがいい経験になったと思います。

協力企業:三菱重工、三菱商事、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱総合研究所、三菱地所設計、三菱倉庫、三菱化工機、三菱ガス化学、三菱自動車工業、三菱マテリアル、ニコン、明治安田生命、東京海上日動火災保険、キリンホールディングス、三菱ケミカル、AGC(順不同)

取材・文/丸山佳子 取材協力・画像/三菱みらい育成財団