中央工学校 理事長 矢代吉榮氏

校歴115年の伝統校。古(いにしえ)に学び、今に活かす教育で、
誠実かつ確かな技術を持った人材を業界へ輩出

 本校の歴史は1909年(明治42年)に遡ります。長い歴史のなかで、空襲による校舎の消失など、数々の苦難を乗り越えながら今に至り、建築・建設・土木測量・機械業界に数多くの技術者を送り出してきました。現在は、北区王子の校舎を拠点とし、夜間を含めた1年~4年制の合計16学科(建築学科、建築工学科、建築設計科、木造建築科、建築設備設計科、建築室内設計科、夜間建築科、インテリアデザイン科、土木建設科、測量科、地理空間情報科、夜間土木測量科、3DCAD設計科、情報ビジネス科、グローバル科、リベラルアーツ科)を設けています。


業界からの確かな信頼
 専門学校には、特定の技術をしっかりと学び、身につけたいという明確な目標を持った学生が入学してきます。なかでも本校のような技術系の専門学校の場合は、その目標がより明確で、卒業後はほとんどの学生が建築・建設・土木測量・機械に関わる仕事に就いています。
 本校は、開校から11万人以上の卒業生を業界に送り出していますが、現在に至るまで、たくさんの卒業生たちが業界から厚い信頼を受けており、毎年高い就職実績をあげています。
 これらはひとえに、本校の卒業生たちが業界から求められている技術を有し、現場で真面目にしっかりと仕事をしてくれているからだと考えています。誠実な仕事ぶりが評価され、「中央工学校で学んだ学生なら間違いない」と言っていただけることほど、送り出す私たちにとって嬉しいことはありません。先輩たちの姿に憧れ、学びを深める学生が多く、長年にわたって本校の卒業生を採用していただいている企業もたくさんあります。


恵まれた環境のなかで、豊かな人間性を育む教育
 業界から高い評価を得られる人材を育成するには、技術・スキルだけではなく、在学中に豊かな人間性を養うことも欠かせません。どのような仕事も同じですが、仕事とは他者と協働しながら行うものです。特に建築・建設・土木測量・機械の分野は、毎日のように多くの人と関わりながら仕事をします。たとえ小さな建物でも一人で造れるものはなく、職種が異なるその道のプロたちの力がバランスよく機能してこそ、人々が安心して暮らせる家、快適に過ごせる施設が完成するのです。
 豊かな人間性を育むための施策として、本校では入学後の早い時期に、軽井沢の研修所で合宿研修を行っています。入学直後の研修において専門的な学びは一切なく、これから同じクラスで学ぶ仲間としての親睦を深めることや、挨拶をする、時間を守る、規則正しい生活をするといった、社会人として欠かせないことを身につけます。
 軽井沢での合宿研修は在学中に定期的に行い、本校が所有する約5万1000㎡の広大な敷地を使って実践的に学んでいます。技術職を育成するには何より実習が欠かせないため、本校では専攻に沿った実習、例えばボーリング、測量、建方実習などをこの敷地内で行っています。また実習は“生きた教科書”と位置づけている王子の校舎を題材にして行い、ときには荒川の河川敷を借りて行うこともあります。グループで協力しながら学ぶことで、経験を重ねるたびに協働の大切さやコミュニケーション力が磨かれていきます。
 この軽井沢研修所には、文化・芸術・研修施設が一体化された「南ケ丘倶楽部」があり、約200年前の庄屋の家屋を移築した国登録有形文化財である茅葺き屋根の「三五荘」や、千利休の設計とされる幻の茶室を復元した「深三畳台目(ふかさんじょうだいめ)」などもあります。学生時代から「本物」に触れ、感性を養うことも、本校が長年にわたって力を入れてきた教育の一つです。
 また、学生たちが快適な環境で楽しく学べるよう、生活面でもさまざまなサポートを行っています。校内の学生レストランでは、温かくておいしいご飯を安価で提供しており、ペットと暮らせる学生マンションも用意しています。地方から上京しても安心して暮らし、学べる環境を整えています。


自分に合った場所で学ぶことが、個を伸ばす
 先述したように、専門学校は専門的な学びを深め、社会に出た際に即戦力となる人材を育成することを目標とする教育機関ですが、大学もまた専門性を学べる教育機関です。建築・建設業界を目指す高校生たちは、大学、専門学校のどちらで学ぶべきか、判断に迷うところでしょう。
 カリキュラムを例にとると、大学は専門科目と同様に幅広い教養科目を学ぶところで、専門学校は現場により近い専門技術を学ぶ学校です。また、大学は高校で理系を選択した学生が多く進学しますが、専門学校では必ずしも理系である必要はなく、文系でも応募できるような選抜方法が採られています。短期間で学べる1~3年制や夜間コースのある専門学校で学ぶと、経済的な負担が軽減され、いち早く社会人として働けるという点は、専門学校ならではの特長かもしれません。
 偏差値という観点で見ると、大学の建築学部は専門学校よりも難易度が高くなっています。しかし、高校までは勉強があまり得意ではなく、学習習慣が身についていなかった学生でも、やる気さえあれば、専門学校に入って自分が興味のある分野を基礎から徹底的に学べます。夢中で学んでいるうちに徐々にスイッチが入り、生き生きと学ぶようになる学生はたくさんいます。
 進路に迷った際、特に卒業後のイメージがなければ、まずは大学に進学してそれから考えればいいという風潮がありますが、人はそれぞれに相性があり、大学教育が適している人、専門学校が合う人など多種多様なはずです。それを高校時代の進路選択で見極めることが大切とはいえ、人はいつでも学び直しができます。実際本校にも、大学を卒業あるいは中退して入学する学生もいれば、本校卒業後に大学へ進む学生もいます。社会にとって、専門学校が未来の建設・建築業界を担う人材を育む選択肢の一つであってほしいと考えています。


建物が本来持っているぬくもりや機微。AIにはできない仕事の価値
 近年、急速なIT化により、技術系の現場にも新しい技術が導入されています。CADはもちろん、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)を活用できるスキルを磨くことも不可欠なため、本校でも時代を先読みしてカリキュラムに取り入れています。一方で、基礎を大切にした教育もこれまでと同様に続けています。なぜなら、どんなにIT化が進んでも、そこに技術者としての基礎がなければ、新しい技術やシステムを使いこなすことができないからです。
 建物には昔も今も変わらない“ぬくもり”があります。ここ数年ニーズが高まっている自然災害からの復興にも建築や土木測量分野の技術が欠かせないのですが、そこにも“ぬくもり”のある人の力がなければできません。これからどんなにAIが取って代わる仕事や作業が増えたとしても、AIを管理するのは人間であり、人間的なぬくもりや心はどんな時代になっても必要不可欠なものでしょう。


多くの中堅技術者を社会に送り出す。中央工学校のDNAを未来へ繋ぐ
 改めて、豊かな人間性と確かな技術力を育みながら、現場に必要とされる人材を輩出することが本校の役割です。一人の天才を育てるのではなく、着実な力を身につけた千人の中堅技術者を社会に送り出す。入学時はほとんどの学生がゼロからのスタートで、実力もまちまちです。それを短期間で一定のレベルまで引き上げることこそが、本校の学びの特長です。例えば、建築設計科の学生なら、1年次の前期で模型が造れるようになります。工業高校の建築学科の先生が驚いていたのですが、これは、工業高校の3年間に匹敵する学びなのだそうです。
 長きにわたって蓄積された教育システム、優秀な先生方による指導力、そこに加えて真面目な学生の資質により、文系出身の学生でも技術者として活躍できるように育てていく。本校はこれからも良質な教育を提供しながら、中央工学校のDNAを未来に繋げていきたいと考えています。

【Profile】
中央工学校 理事長 矢代吉榮氏(やしろ・よしえい)氏
1954年生まれ。明治大学政治経済学部経済学科卒業。田中角栄事務所勤務。1978年9月より中央工学校にて勤務。株式会社あかつき監査役、一般財団法人日本文化生涯学習振興会21代表理事、一般財団法人中央工学校生涯学習センター監事、一般社団法人専門学校コンソーシアムTokyo理事も務める。

【中央工学校(スタディサプリ進路)】



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