学校法人八文字学園 副理事長 八文字智宏 氏

現場と直結した実学教育で“生き抜く力”を育てる。
変わりゆく社会を支える専門職教育の新しいスタンダードをつくる。

専門職が“主役”になる時代へ――
70年の専門学校改革で見据える、日本の未来

 八文字学園は1956年、地域から「実務を担う専門人材が不可欠だ」という強い要請を受けて開校し、以来約70年にわたり専門職教育を提供してきました。算盤塾から始まり、水戸経理専門学校を皮切りにIT、自動車、美容、看護へと領域を拡大。現在は5つの専門学校を展開し、地域産業を支える人材基盤として成長を続けています。

 本学園の大きな特徴は、経営陣の多くが民間企業での豊富な事業経験を持っていることです。私自身も総合商社(住友商事)で事業投資・経営に携わってきたバックグラウンドを持ち、専門学校の枠を超えた改革を学園の教職員と共に推進しています。近年は高校でも企業出身者が校長に就任するケースが話題ですが、八文字学園はそれを“専門学校で先行していく存在”とも言えます。

 専門学校の価値は今、世界的に見直されつつあります。アメリカでは電気工事技術者やメカニックが高い報酬を得て高級車で現場に向かう――そんな光景が珍しくありません。インフラや生活を支えるスペシャリストが再評価され、社会の主役に返り咲いているのです。

 日本も例外ではありません。むしろ、今静かに“専門職(エッセンシャルワーカー)復権の時代”が訪れようとしています。社会インフラや暮らしを支える職種は、AIやデジタルでは代替できない価値を持つからです。IT・自動車・医療・美容など、生活の根幹を支える技能は一段と重要性を増し、これらを極めた人材こそ、これからの社会を動かす主役になると考えています。

 八文字学園が取り組むのは、そうした「本質的な価値を持つ専門職」を育てる教育の再構築です。専門学校が果たす役割は、これまで以上に大きくなる。だからこそ私たちは、専門職(エッセンシャルワーカー)が誇りを持って働き、地域を支えられるよう、教育内容を一から見直し、質を高める改革を進めています。

資格偏重から“生き抜く力”へ。
VUCA時代の専門学校は何を育てるべきか

 専門学校は長く「資格取得」が中心に据えられてきました。本学園も例外ではありません。しかし、先行きが読めないVUCA時代において、資格だけでは人生100年時代を生き抜く武器としては不十分ではないか――。そんな危機感が、私たちを改革へと突き動かしました。

 もちろん、専門学校として専門知識や技能の習得は軸として守り続けます。しかし同時に、
・人間力
・コミュニケーション力
・AIを使いこなすリテラシー
・プロジェクトを推進するチーム力
・失敗を糧に改善し続ける力

といった“資格では測れない力”こそ、これからの社会で求められる資質だと考えています。

 重要なのは、学生時代の学びを「点」で終わらせず、社会に出てからも連続的に学び続けられる人材になること。資格を取れば就職できる時代から、学んだことを社会で発揮し、自らのキャリアを更新し続ける時代へ――。八文字学園はその転換点に正面から挑んでいます。

プロの現場が“教室”になる――
第一線の講師陣と実践教育で、学生の潜在力を引き出す

 八文字学園が現在力を入れているのが、「教員も学生と共に学び続ける」実践教育モデルの構築です。第一線で活躍するプロフェッショナルを積極的に招聘し、学びの現場に“リアルな仕事”を持ち込むことで、学生の成長スピードは劇的に変わります。

 例えば、水戸電子専門学校では、元マッキンゼーの経営プロフェッショナル・井上匡史氏を校長に迎え、デジタル時代に必要な思考力・構想力を養う教育を本格始動。また、ゲーム業界で多くのヒット作に携わってきた磯原浩二氏が就任したことで、学生が自ら問いを立て、作品をつくり、改善し、またつくる――という“プロの流儀”が学内で当たり前になりつつあります。
※2026年度より水戸デジタル専門カレッジに校名変更予定。

 2026年4月開設の「デジタルイノベーション学科 プロダクトエキスパートコース」では、エンタメ起業家・前原幸美氏をプロデューサーに迎え、AI活用とプロダクト企画を融合した新しい学びをスタート。学生が在学中にポートフォリオを積み上げ、卒業後すぐに即戦力として活躍できる環境が整っています。

 こうした学生の主体的な学びは教員にも刺激を与え、学内では改革の好循環が生まれています。5つの学校全てで、現場のプロを講師に迎えた教育機会をさらに拡大していく方針です。

70年の実績を礎に、100周年へ。
“唯一無二の専門教育”で地域の未来をつくる

 創立以来変わらないのは、「夢を追う学生を全力で支える」という八文字学園のDNAです。カリキュラム改革に加え、施設・設備の刷新も進めており、学習環境の向上に伴い、学生の主体性はこれまで以上に高まっています。「自ら考え、自ら動き、学び続ける学生」が確実に増えている手応えがあります。

 2026年、八文字学園は創立70周年を迎えます。これまでに2万人以上の卒業生を地域社会に送り出してきました。70年の歴史と信頼のうえに、八文字学園にしかできない“唯一無二の専門教育”を磨き続け、茨城から全国へ、そして100周年へと歩みを加速させていきます。

【Profile】
八文字 智宏(やつもんじ・ともひろ)氏
学校法人八文字学園 副理事長/
専門学校水戸自動車大学校 校長/水戸経理専門学校 校長
※2026年度より水戸ビジネス&ホスピタリティ専門カレッジに校名変更予定。

1956年創立の八文字学園において、地域と産業を支える専門職教育の高度化と再定義を牽引。民間企業での事業経験を生かし、「教育×雇用×地域」を結ぶ新たな人材循環モデルを構築。経理・医療・ホテルブライダル・IT・ゲーム・アニメ・自動車整備・美容・看護など5学校13学科を擁する総合専門学校を統括し、“学びを未来へつなぐ”実践的教育改革に取り組んでいる。

【水戸経理専門学校(スタディサプリ進路)】
【水戸電子専門学校(スタディサプリ進路)】
【専門学校 水戸自動車大学校(スタディサプリ進路)】
【専門学校 水戸ビューティカレッジ(スタディサプリ進路)】
【水戸看護専門学校(スタディサプリ進路)】

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