社会ニーズや地域からの期待を背景にした目的ごとの多彩な教育展開/学校法人藍野大学 びわこリハビリテーション専門職大学

びわこリハビリテーション専門職大学キャンパス


 学校法人藍野大学は1968年に開設された医療法人恒昭会藍野病院附属准看護学院を起源とする法人だ。2020年4月に開学したびわこリハビリテーション専門職大学(以下、びわリハ)は滋賀医療技術専門学校を前身とした発展改組だが、法人内には藍野大学と同短期大学部及び大学院も併存する(図表)。高等教育領域でここまで多様な展開を見せる法人は全国的にも稀有であろう。その趣旨とびわリハが担う役割について、小山英夫理事長にお話をうかがった。

学校法人藍野大学 法人内の多様な展開

小山英夫 理事長

 まず専門学校から専門職大学に改組した理由について、小山理事長は2つの要因を挙げる。1つは2020年4月に改正指定規則(理学療法士(以下、PT)・作業療法士(以下、OT)学校養成施設指定規則)が施行され、必要取得単位数が93単位から101単位に増加することを受け、人材養成プロセスを再考する必要があると判断したこと。もう1つは立地する滋賀県の状況である。「滋賀県は2025年を見据えた医療福祉の推進という観点から、地域包括ケアシステムを支える医療福祉専門職の養成確保が重要な課題であり、その中でもリハビリテーション専門職が不足しています。日本の高齢化が進展する中で、医療は急性期中心の『病院完結型』から慢性期中心の『地域完結型』に移行しており、ここを担うPT・OTを養成することが必要だと考えました」(小山理事長)。

 法人内での多彩な展開について、「最初は需要と供給の関係から始まりました」と小山理事長は言う。「大事なのはこれからの日本の地域、社会、国として必要とされる人材を養成するということ。びわリハの場合、県内唯一のリハビリ人材養成を担っていた専門学校の役割はそのままに、より実践的に、専門学校では対応できなかったニーズも包含することは自然の流れと言えました」。地域ニーズを満たした即戦力のジョブ型人材を養成していく。それがびわリハの役割である。

多様なキャリアパスを想定した展開科目群

 次に、新しい教育の方向性を体現する展開科目を見ておきたい。

 まずPTでは、健康寿命の延伸を目的に、3つのキーワードで展開科目を設定した。まず「ヘルスプロモーション」では、地方自治体、健康関連企業等での活躍を想定し、「体力測定論」「遊びとレクリエーション」「健康増進実践演習」等を置いた。次に「生涯スポーツ」では、健康維持におけるスポーツの有用性を習得する目的で、地方自治体、スポーツ・健康・食関連企業等での活躍を想定し、「フィットネス論」「ランニングトレーニング論」「障がい者スポーツ論」等を置いた。最後の「生活工学」は、障害予防に対する生活工学の利用や、神経・運動障害の有無に拘わらない安全・安心な生活・就労の支援を学ぶ授業科目群である。就労支援事業所(作業所)、福祉機器メーカー等での就職を想定し、「福祉工学地域活用論」「ロボット工学地域活用論基礎・応用」「身体障がい者就労環境論」等を置いた。

 次にOT では、ライフステージの「児童期」「成人期」「老年期」ごとに、必要なリハビリテーションを提供できる人材に必要な展開科目を設定した。「児童期」では、保育園、小学校、学童保育等で活躍するOTを目指す学生向けに、「児童期地域生活適応論」「児童期地域生活適応論実習」を置いた。「成人期」では、就労移行支援事業所、グループホーム等での活躍を想定し、「成人期地域生活適応論」「成人期地域生活適応論実習」を置いた。「老年期」では、通所介護施設、特別養護老人ホーム等での就労を想定し、「老年期地域生活適応論」「老年期地域生活適応論実習」を用意した。いずれもOTがまだ介入していない領域の現状を学び、実習を通して各期におけるOT支援の可能性を模索するものである。

医療の高度化のプロと地域に出ていくプロを2つの大学で養成する

 藍野大学とびわリハにはどちらにもPT・OT養成課程があり、一見似た学部学科構成である。違いを問うと、「大雑把に言えば、従来の病院完結型=患者さんを診るのが大学で、地域完結型=未病領域や健康増進等を含め地域ニーズに応えるのが専門職大学」と小山理事長は言う。同じ外見でも新たな人材養成へのチャレンジなのだ。

 藍野大学は、学問的色彩が強い大学としての強みを活かして「医療の高度化・専門化」に対応し、医療現場において、高度な実践力を持ってチーム医療に貢献できる人材を養成する。一方びわリハでは、「地域共生社会の実現に向けたリハビリテーション専門家の養成」を人材養成の主眼に置く。即ち、医療機関に限らず、ライセンスを持つ人材が広く地域に出ていくイメージだ。「だからこそ、これまでのリハビリテーション専門職の在り方を刷新するための、『高度な実践力』と『豊かな創造力』を制度趣旨とする専門職大学が適切な学校種であると考えました」(小山理事長)。

 なお、申請業務における最大の困難は教員審査だったという。「専門学校の実績を支えてきた教員もびわリハが引き継いでいますが、それだけでは足りません。学位を所持する教員は実務未経験者が多く、逆に実務家には学位がない、といった状況の中で、4割の実務家教員の確保が難しかった」と小山理事長は回顧する。それだけ「従来とは違う教育機関」ということなのだが、課題としてその制度自体の認知不足がある。「本学に限りませんが、地域でも高校でも、専門職大学という名前自体は知っていても、従来の大学との違いについてはまだまだ認知が低いのが課題」と小山理事長は言う。初年度の募集結果は定員充足に至らず、県外からの入学者はほぼいない状態で、今後は制度も含めた大学認知と広報強化が課題であるという。「地域ニーズに誠実に向き合う、頼られる存在でありたい」。小山理事長の言葉は力強い。



(文 鹿島 梓)



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