【お悩み】 進路に真剣に向き合おうとしない生徒に手こずっています。いったいどうやったらいいのでしょう?

【回答】 「年収」がいくらあるとどんな生活が可能なのか――。経済面から現実を直視させよう!

一番は、「自分の人生は自分のものである」という意識に目覚めてもらうことです。周囲があれこれ世話を焼いても、キャリア意識に目覚めることはありません。何でもやってくれる過干渉の親は、子どもが自分で何とかしていこうというパワーを奪ってしまい、「僕の人生、結局お母さんが何とかしてくれる」と思わせてしまいます。教師も同じパターンに陥ってはいないでしょうか?

キーポイントは、可能な限り生徒を「大人扱いする」ことです。いつまでも子ども扱いしていると、子どものままにとどまってしまいます。大人として扱ったほうが、生徒は大人として成長していきます。

そこでまずは、どんな人がどんな生活を送っているのか、現実をしっかり考えさせるといいと思います。具体的には、年収を考えさせる。現在の自分の生活が、いくらくらいの収入の上に成り立っているのか。親子の会話の中で、そういう流れになれば親の年収について聞いてみることを、生徒に勧めるのも一案でしょう。教師自身が自分の年収を生徒に語ってもいいでしょう。そして、自分はどういう生活を送りたいか、そのためにはいくら年収が必要か、現実を直視させましょう。

たとえ資産があったとしても、今の日本経済はいつ破綻してもおかしくありません。スーパーインフレが起きれば、資産なんて何の役にも立たないというシビアな日本経済の現実を、授業で伝えておくことも必要でしょう。「ぼんやりしていたら、食いっぱぐれる」。結局、自分で稼ぐ力を身につけていくことが、唯一の自己防衛手段なんだと気づかせてほしいですね。

野球選手やAKB48とか、「夢」を語らせるキャリア教育で終わっていいのは小学生まで(笑)。高校生のキャリア教育では、現実の経済的な視点を持たせることが大事です。

そのうえで、どういう仕事なら続けていけそうか。毎日やって飽きずにできることは何か? ウォール街のデモに見られるように、「社会の勝ち組1%」というこの厳しい現実の中でどう生き延びていけばいいのかを、考えさせてはいかがでしょう?

諸富先生

【回答者profile】

諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/