【お悩み】 元気のない男子生徒が増えています。やる気を引き出すには、どうすればいいでしょう?

【回答】 「あなたなら、きっとできる」という肯定的な言葉かけと授業で、エネルギーに火をつけましょう。

 大学生も、男子生徒は元気がありません。授業中に指名して意見を聞くと、女子学生は自分の意見を言うなり、「わかりません」と言うなり、きちんと反応します。しかし、男子学生は下を向いていないふり。こちらがあきらめて次の人を指名するまで、黙ったままです。研究室で就職の話題になったときも、女子学生はいろいろな話で盛り上がっているのに、男子学生は関わろうともしませんでした。まさに、「草食系男子」そのものです。

 最近高校生の間で人気の漫画『君と僕。』は、そんな今の時代の高校生男子を中心とした世界を、非常によく表していると思います。群れてはいるのだけれど、何かを目指すとか、大きな出来事があるとか、そういうことのないまったりとした日常の中で生きている。将来に対する大きな期待はないけど、とりあえず今は幸せ。「浮遊感のある幸福感」といったものが、よく表現されています。

 そんな男子高校生のやる気を引き出すには、昔のような「檄を飛ばす」方法は、逆効果です。「お前ら男子なんだから、しっかりしろ」といった言い方も通用しません。とりあえず群れる力はあるので、全員に対して「お前たちに期待しているよ」「お前たちはできるぞ!」といった肯定的な言葉をかけ続けることです。ダメ出しをしすぎると、モチベーションは下がっていく一方です。

 モチベーションは低いけれど、プライドが高いのが男子。「誉めるときはみんなの前で。叱るときは個別に」というのが原則です。特に、異性の前で叱ると、男子生徒は一気にモチベーションをダウンさせてしまいます。プライドへの微妙な配慮が重要になります。

 一方、授業の内容でも、男子生徒のやる気をアップさせることができるのではないかと、私は考えています。特に、今の高校生が脱力しているのは、将来への明るい展望が何もないから。これまでの大人たちが後回しにしてきたさまざまなツケを払わされる、そんな将来に対してやる気が出ないのは、当然だと思います。だからこそ、時代の現実をしっかり伝えて、「自分たちばかりに責任を押し付けるなんておかしい」と気づくような授業も必要ではないでしょうか。そうすることによって、社会に対する批判的な精神が育まれ、エネルギーに火をつけることにもつながるのではないかと思います。

諸富先生

【回答者profile】

諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/