【お悩み】女子生徒のグループ化によるいじめ問題が心配です。

【回答】安心感がもてるようなクラス全体の雰囲気づくりで予防をしましょう。

文部科学省の国立教育政策研究所が、同じ集団を小学校4年生から中学3年生まで継続調査したところ、6年間でいじめや仲間はずれにされなかったという生徒は1割しかおらず、いじめや仲間はずしに加わったことがないという生徒も1割しかいなかったという結果になりました。つまり、ほとんどの生徒が被害者にも加害者にもなっていたということです。それだけ今の子どもたちの世界は厳しいものになっています。女子の世界はなおさら厳しいものと考えられます。

学級全体のシステムの中で起きている問題ととらえよう

特に最近では、携帯やネットの普及などによって、より友達関係がシビアになっています。不登校の原因の約半分が、携帯やネットなどを通じて名指しの悪口を書かれたこととも言われています。メールは3分以内に返事をしないといけないという脅迫観念に常にさらされ、お風呂まで携帯を持ってい入るという子どもが少なくありません。そこからは、いつも友だち関係にビビリながら生活している姿が浮かんできます。

だからこそ、教師は、「しょせん友だち関係のこと」と甘く見てはいけません。いまや、子どもたちにとっては、日常の大半の時間を過ごす学校が戦場と化してきている、シビアな現実を生きているのだと考えてほしいと思います。

その対応としては、いじめが起きたときにいじめられた子といじめた子を呼び出して、仲直りをさせるといったような古典的な対応では、意味がありません。仮にその場でいじめた子が「ごめんなさい」を言ったとしても、あとで「先生に告げ口をした」とかえっていじめられることになってしまいます。つまり、個別の対応では意味がないのです。大事なのは、クラス全体に働きかけていくこと。いじめなどは、学級全体のシステムの中で起きている問題ととらえることが大切です。

構成的エンカウンターなどで人間関係の固定化を防ぐ

具体的には、構成的エンカウンターやアサーショントレーニングなどを通じて、人間関係の固定化を防いでいくことが効果的だと思います。問題が表面化してからでは遅いので、まずは予防を行う。いまや、すべてのクラスに問題の芽があると考えたほうがいいと思います。どのクラスにも、目に見えない上下関係や、いやなことがあってもNOと言えず、我慢しなくてはならないようないびつな関係が、絶えずくすぶっていると考えたほうがよさそうです。

実際に、問題がおきにくい安心感のある学級ができていると考えている先生は、2割しかいないという報告もあります。クラスのスタート時期が肝心です。

ぜひ、構成的エンカウンターなどで、クラス内の人間関係の固定化を防ぎ、誰もが安心していられるクラスの雰囲気づくりをしていただければと思います。

諸富先生

【回答者profile】

諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/