【お悩み】生徒の評価をいつもしているのに、評価を受けることが苦手です。管理職の目が気になり、評価に振り回されて、自信をなくしています。

【回答】管理職の評価は絶対ではありません。思い込みに気づき、ぜひご自分が人生の主人公となってこれから先の教師人生を歩んでいかれてください。

 私のところに相談にいらっしゃる先生方の9割近くが、このような悩みを抱えておられます。管理職からの評価に関する悩みを抱えておられる先生方はとても多いのです。

 若手の先生が管理職の評価に右往左往するのはごく当たり前のことです。これにくわえて、最近は、40代、50代のベテランの先生にもこの悩みが多くなっています。「自分もしっかり見ていてほしい」という管理職に対する思いがあるがゆえの悩みです。きちんと評価されていないということに対する悔しさでもありますね。たとえば、校長の目が若手ばかりに向いていて、私はもう何も期待されていないのではないかと思ってしまうのです。
 そして自分が評価されていないと思うとモチベーションが下がってしまいます。働き心地が悪い職場と感じている先生もおありでしょう。

「誰からも高い評価をもらう」ことは、そもそもありえない

 しかし、ここで立ち止まって考えていただきたいのです。

 先生方は日頃、生徒に対して「自分の人生は自分で決めること=自己決定、自己選択の重要性」を説いているはずです。他人の意見を聞くことは大事だけれど、最終的には自分が決める、自分の人生の主人公は自分であると。

 先生ご自身が「自己決定」のモデルとなっていただきたいのです。上司の評価に多少は耳を傾けながらも、それに振り回されない自分になることが大切です。

 管理職の評価は、絶対的でも客観的でもありません。相性次第というところも少なからずあります。相性の良い上司からは高い評価を受けられるが、相性の悪い上司からは低い評価を受けることもある。「誰からも高い評価をもらう」なんていうことは、そもそもありえないのです。そのことを頭の片隅に置いていただければと思います。

論理療法で思い込みを修正しよう

 とはいえ、「がんばっていれば高い評価を受けるのが当然」という思い込みから抜け出せない方は少なくありません。そこで、論理療法で考え方をより柔軟に変えていくことをお勧めします。論理療法とは、事実に必ずしも合致しない非合理的信念(イラショナルビリーフ)を、事実に合致した合理的な信念(ラショナルビリーフ)に修正していくカウンセリングの手法です。

 ここでは、一人でもできる2つの方法を紹介します。

 まずは、自分がなぜ苦しいのか、悩みや苦しみの原因となっているご自分の「イラショナルビリーフ」を書き出していってください。「すべての人に評価されないとやっていけない」「私は失敗すべきではない」のどちらかで苦しんでいることが多いはずです。それに気づくことが、第一歩です。

 そして、そんな自分のイラショナルビリーフを自分でラショナルビリーフに書き換えていくのです。たとえば、「たとえ努力しても、評価されないこともある。だからといって自分がダメ教師であるわけではない!」といったようにです。

 これを1日50回大きな声で繰り返していくのです。それも、1日で一番自分が楽しみにしている時間(例:夕食の際のビール)の前におこなうのです。

 このようにして自分がいつの間にか身に着けていたイラショナルビリーフを修正していけば、より楽に生きていけるかもしれません。

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諸富先生

【回答者profile】

諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/