【お悩み】教師になって20年が過ぎ、日頃、生徒にはモチベーションを上げるように指導しているのに、自分のやる気が失われてきています。自分の人生はからっぽなのではないか。もう教師を辞めたほうがいいのではないかと、悩んでいます。

【回答】空虚感は、さらなる人生の飛躍への前触れかもしれません。ぜひ、ご自身のキャリア形成を考えてみてください。

教師という仕事に非常に熱心に取り組み、魂を込めて日々取り組んでこられた先生に多い悩みです。ガチで本気で生きてきたからこそ、何かをきっかけにその意欲が空回りし始めると「これでよかったのだろうか? もう自分は教師を続けている意味がないのではないだろうか?」と疑問が膨らんでいく……。教師という仕事を「安定」や「収入」といった打算で割り切っている先生は、こういう空虚感を感じることはありません。

こういった悩みを抱いた先生からの相談をよく受けますが、このような空虚感は人生のさらなる大きな飛躍への前触れであることが多いと感じています。つまり、今の人生では物足りなさを感じ始めている。日常の教師という仕事がルーティーンに思われ始めている。そこで、一回区切りをつけ、新たなことを学んだり、専門性を深めていくなど、さらに人生を充実させていかないと、魂が満足しないのです。

もう一度、人生を見直すチャンスです。

専門教科についてさらに研究を深めるため大学院に進んでみることもいいかもしれません。教授法を研究したいという方もいらっしゃるかもしれません。進路指導という点から、心理学やカウンセリングを極めるため臨床心理の勉強をされ、将来的に転職ということもありえるでしょう。

教師になった先生方は、「学ぶ」という点で非常に底力を持っていらっしゃいます。単に「やる気がなくなっている」というマイナスに受け取るのではなく、なぜ辞めたいのか? 未来に向けて、どうすれば心が満ち足りると感じられるのか、人生後半のキャリア形成について、本気で考え、取り組んでみてはいかがでしょう。

ユングは中高年期を「人生の午後」と呼びました。それまでのような外面的なことではなく、内面性に目を向けていく時期。どういうふうにして魂を満たしていくかに関心が向く時期だといいます。

自分の人生は1回しかありません。ぜひ、ご自身のキャリア形成を「一生」という視点で考えてみていただければと思います。

諸富先生

【回答者profile】

諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/