【お悩み】進路を自分でまったく決められない生徒や、自分の意見があっても保護者の言いなりでやる気を失う生徒に困っています。
【回答】「自分で決めた!」という感覚が大事。ゆっくり決めていくのを待ちましょう。
自分がどこに行きたいのか、どのような人生を生きたいのか、決められない高校生が増えているという先生の声をよく聞きます。しかし、そういう大人の世代でも、18歳の時点で本当にやりたいことがハッキリしていた生徒は、実は少なかったのではないでしょうか。偏差値で何となく進路先を選択していた人も多いはずです。その点、例外的なのが、教師。教師という仕事は子どもたちにとって身近で、リアルにイメージできます。ですから、早くから「教師になりたい」という思いを抱きやすい。そういう思いで教師になった先生からすると、多くの生徒はなかなか自分の将来を決めることができないと感じるのかもしれません。
まして、最近の大学生はかつての高校生くらい、高校生は中学生くらいと、全体に2~3歳くらい幼くなっていると言われています。その分、なかなか自分の人生を決められないという子どもたちが増えているのも当然かもしれません。
プランド・ハプンスタンス(計画された偶発性)理論のクランボルツ教授が、人生で大成功を収めた人に、その仕事に就くのをいつ決めたかという調査を行った際、18歳で決めていたという人はわずか2%だったといいます。つまり、18歳の時点では、何をしたいのかがよくわからないのが普通なんです。
ただし、親が強引に子どもの進路選択に介入し、生徒が無気力状態になるという問題に悩んでおられる先生は多いことでしょう。進路選択を他者に決められてしまうと、子どもは自分の人生は自分のものではないと思い、やる気を失っていく傾向があります。
進路選択は、「自分の人生を自分で選んだ」という感覚が非常に大切で、それが生徒のやる気やモチベーションにつながるのです。そうはいっても、先生が直接保護者の方にそういうお話をされるのは難しいと思います。そんなときは、第三者の意見として、私の話などを保護者宛の通信に載せるなどしてご活用ください。
進路指導において、情報提供は大切です。しかし、最終的には生徒が「自分で決めた!」という感覚を持つことが大事。急かすばかりでなく、ゆっくりゆっくり決めていくのを「待つ」ことも必要でしょう。
【回答者profile】
諸富祥彦(もろとみよしひこ)先生●明治大学文学部教授、臨床心理士、教育学博士。全国の悩める教師のためのセルフヘルピングやネットワーキングを支援する“教師を支える会”代表。
http://morotomi.net/