教えて!「日本の高校生の科学への関心」

若者の理数系離れが心配されています。国立青少年教育振興機構はこのほど、「高校生の科学等に関する意識調査報告書」をまとめました。かつて財団法人日本青少年研究所(財団としては2013年8月末で解散、研究所は一般財団法人日本児童教育振興財団に継承)が行っていた国際比較調査を引き継いだものです。日本の高校生の意識はどうなっているのでしょうか。


 調査結果によると、自然や科学についての興味や関心が「とてもある」「ある」と答えた割合は、日本が59.5%、米国が63.6%、中国が79.3%、韓国が63.1%となっています。経済発展著しい中国が飛び抜け、日本は4カ国中最低ですが、米韓との差は4ポイントほどなので、極端に興味・関心が低いというわけでもないようです。

 自然や科学に関する学習(「よくした」「時々した」の合計)を尋ねると、日本の高校生は「先生が行う実験を見る」が圧倒的に多く78.5%、「動物園や植物園を見学する」60.9%、「自然や科学についてのテレビを見る」56.8%などが高く、これに対して「実験や観察の結果について友達と話し合う」は45.8%、「教室や理科室を使って自分で実験をする」も43.3%と低めでした。ただし「先生が行う実験を見る」は中国でも75.1%を占めていますし、「教室や理科室を使って自分で実験をする」も韓国56.0%、米国51.4%ですから、国内的には課題があるとはいえ、これも国際的に取り立てて低いというわけではなさそうです。

科学への関心

 ところが、回答14項目を統計的に分析したところ、「調べ学習」因子が極端に低いことが分かりました。この因子には、自然や科学についての本や雑誌を読む・テレビを見る・インターネットなどで調べることの他、「学んだ理科の知識で日常生活の知識の問題を解決する」「自然や科学について、家族や友達と話す」も含まれています。「体験的学習」因子や「実験的因子」は4カ国中で平均的な値となっていますから、学校の教育活動としてはそこそこ行っているようですが、それにもかかわらず生徒の心には響いておらず、そのため実生活に生かそうという意識が低いままなのかもしれません。

 調査では、体験的学習や実験的学習、調べ学習を多くしている者ほど、科学への関心が高くなることも浮き彫りとなっています。体験や実験を調べ学習と連携させ、一体的に科学への興味・関心と意欲を育む余地が、まだまだありそうです。

 理科に関する意識を尋ねても、「理科を学ぶことは受験に関係なくても重要だ」と回答した日本の高校生は72.8%に上っていますし、「理科の学習は面白い」も63.2%を占めていますが、「自分で調べたり、学習したりするための時間がない」が60.6%あります。これも50%台の米中に比べて極端に高いというわけではありませんし、韓国(65.2%)よりも低いぐらいですが、先の結果と併せて考えれば、調べ学習の充実が日本の理科教育の課題であることは間違いないでしょう。

 象徴的な例が、夏休みなどの自由研究です。小学校では5年生をピークに他の3カ国を抜いて盛んに行われていますが、その後は下降の一途で、高校になるとほとんど行われていません。適当に決めたテーマにいやいや取り組んで間に合わせで提出しても、身に付くわけはありません。興味・関心や意欲を高めるには、やはり丁寧な指導が不可欠です。

 調査結果は、実生活や社会と結び付けたキャリア教育の視点で理科の授業や指導を改善することが急務であることを示したものだと思えてなりません。漫然と従来型の授業時間を増やしたり、受験対策に力を入れたりするだけでは、いつまでたっても理数系離れは改善しない――と言ったら、さすがに言いすぎでしょうか。

 

【profile】
渡辺敦司(わたなべ・あつし)●1964年北海道生まれ。1990年横浜国立大学教育学部教育学科卒業。同年日本教育新聞社入社、編集局記者として文部省、進路指導・高校教育改革など担当。98年よりフリーの教育ジャーナリスト。教育専門誌を中心に、教育行政から実践まで幅広く取材・執筆。
教育ジャーナリスト渡辺敦司の一人社説 http://ejwatanabe.cocolog-nifty.com/blog/