大阪体育大学 学長 岩上 安孝氏

(2015年3月30日更新)

2015年4月「教育学部(仮称)」を開設予定。
体育の専門的知見をもつ
小学校教諭の育成を目指す。

体を入口に、知と徳を磨いていく教育

 本学は1965(昭和40)年に関西で初の体育大学として開学しました。建学の精神は「不断の努力により智・徳・体を修め社会に奉仕する」。本学における「智・徳・体」とは、体を入口にそこから知と徳の涵養を図るという特色があります。体育、スポーツの能力を高めたいという目的があれば、どうすれば体がうまく動くかといった課題、つまり知の問題が出てきます。そこで、スポーツ科学の知見を取り入れていくために学ぶ必要が生じます。さらにスポーツは他者との協同が不可欠であり、そこには徳育の要素が必ず含まれます。このように体を動かすことを中心に学び、最終的には人間的な成長を遂げる。そうした人材を育て、社会に貢献することが本学の使命です。卒業生はすでに1万9000人を超えています。本学の強みである教職関係・スポーツ指導者領域はもとより、企業、公務員、医療・福祉、プロスポーツなど多様な分野で活躍しております。

3つの力が相互に機能する「大体大力」

 本学では、大阪体育大学が目指す学士力を「大体大力」と定義しています。「内面化したスポーツ価値」「豊かな教養」「確かな専門性」の3つの力で構成され、体育、スポーツ、健康および福祉の立場から、現代社会が抱えるさまざまな課題の解決に貢献できる力の修得を目指しています。

 「内面化したスポーツ価値」とは、スポーツの道徳的規範であるフェアプレイやスポーツマンシップ、行動的規範である公正性、公共性、共感力、実行力、忍耐力、チームワークなどの力を意味します。これらはスポーツの世界にとどまらず、社会の一員としてきわめて大切な力です。「豊かな教養」とは、基礎的な学力や、日本語および外国語でのコミュニケーション力、情報処理能力のほか、知識の活用能力、思考力、ひいては社会的・職業的な自立力などを含みます。また、体育と福祉が人や社会とのかかわりで成り立っていることを考えれば、他者に対する説明力、対話力も不可欠です。「確かな専門性」とは、体育学部、健康福祉学部(※)それぞれの実践的課題に応用できる水準で、科学的な理論と技術に裏付けられた深さと体系性をもって修得された専門知識のことです。本学では教養教育や専門教育など通常の教育課程に加えて、クラブ・サークル、ボランティア活動、インターンシップ、地域活動など、さまざまな機会を通じて3つの力を着実に修得しています。
(※健康福祉学部は2015年度入試から募集停止)

「教育学部(仮称)」に「小学校教育コース」「保健体育教育コース」の2コース

 本学は開学50周年に当たる2015年4月に「小学校教育コース」と「保健体育教育コース」を有する「教育学部 教育学科(仮称)」の開設に向けて設置認可の申請をしております。

 「小学校教育コース」では、小学校9教科すべてにおいて子どもたちに確かな学力を身につけさせ、さらに体を動かす楽しさや運動のポイントを教えることができる教員を養成します。小学校教諭一種免許状はもとより、必要な単位を取ることにより 中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)や特別支援学校教諭一種免許状の取得も可能となっております。

 「保健体育教育コース」では、保健体育に関する高度な知見を育み、幼児から高齢者まで体力に自信のない人でも参加できるアダプテット・スポーツの理論と実践的アプローチを身につけ、学校現場で一人ひとりに適切に対応した指導や課題解決に取り組める教員を養成します。中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)はもとより特別支援学校教諭一種免許状の取得も可能となっております。

 子どもたちにとってスポーツは、生涯にわたってたくましく生きていくための健康や体力の基礎を培うとともに、公正さや規律を尊ぶ態度や克己心を養うなど人間形成にも重要な役割を果たしております。しかしながら、子どもたちを取りまく社会環境や生活様式の変化は、体を動かす機会を減少させ、体力・運動能力の低下や健康面への危惧も含めて子どもたちの心身の発達にさまざまな影響を及ぼしてきております。

 国においても、新学習指導要領では、「生きる力」を育む理念のもと「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」をバランスよく身につけられる教育の必要性が盛り込まれています。また2012(平成24)年に策定されましたスポーツ基本計画においては、子どもたちの生活エリアとなる学校や地域においてスポーツを楽しめる環境を整備するとともに、とりわけ小学校における専門性を有した指導者不足を指摘し、体育の専門教員配置を推進するなどの指導体制の充実を図っていくとしております。

 来年4月の開設を目指す教育学部、「体育の専門的資質を備えた教育のスペシャリスト」の教員養成に向け、本学がこれまでの半世紀で培ってまいりました指導者養成のノウハウを生かし、豊かな経験と実績を有する教職員がバックアップしてまいります。人間性豊かな元気な子どもたちを育てるという永遠の課題に気概をもってチャレンジしたいと考えております。

岩上安孝氏

【Profile】

岩上安孝(いわがみ・やすたか)氏
1948年群馬県生まれ。1972年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。群馬県公立学校教員、群馬県教育委員会を経て、文部省体育局専門職員。その後和歌山県教育委員会保健体育課長、文部省体育局競技スポーツ課長、文部科学省スポーツ・青少年局生涯スポーツ課長などを歴任。2005年大阪市に出向(世界陸上組織委員会)、2010年国立スポーツ科学センター(JISS)センター長および味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)施設長に就任。
2014年2月大阪体育大学副学長・体育学部教授。2014年4月より現職。

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