学習院女子大学 学長 石澤靖治氏

(2015年9月24日更新)

一人ひとりをていねいに育てる
日本を代表する唯一無二の女子大学づくりを目指して


一人ひとりとていねいに向き合う教育

 本学の全学生数は1,700名、大学の規模としては小さな部類に入ります。しかし、この規模だからこそ、できる教育があるのです。学習面でも就職の面においても一人ひとりの学生とていねいに向き合えることが、本学の強みです。ひとことでいえば、「顔の見える」教育です。私は本学の規模こそが、人を育てるために適した環境であると確信しています。

 一方で、開講科目の数は学生数に比べてきわめて多く設定しています。これは、一人ひとりの「学びたい」という気持ちにこたえるためです。4大学(学習院大学・日本女子大学・立教大学・早稲田大学)と提携して、相互に単位が取得できるf-Campusという制度も学生の学ぶ意欲にこたえるために設けました。加えて、留学先についても、資格取得についても、豊富な選択肢を用意しています。

米国の名門女子大のように存在感のある大学へ

 本学の開学は1998年。前身となる学習院大学短期大学部の設置(1950年)以来、女性専門の高等教育機関として、質の高い教育を提供しています。

 昨年、私は、米国のウェルズリー大学とマウント・ホリヨーク大学を訪問しました。この2大学はかつてセブン・シスターズと呼ばれた、米国にある名門女子大学7校に含まれています。セブン・シスターズのうち、ラドクリフ大学がハーバード大学と統合し、ヴァッサー大学が共学化してはいるものの、残りの5校は本学と同様、女性を対象としたリベラル・アーツ・カレッジであり、確固たるステータスを築いています。いずれの大学も女子大であることに誇りをもち、実力も十二分に兼ね備えています。

 日本も今、共学志向の強まりから、女子大の存在意義を問うという声が一部にあるようですが、こんな時代だからこそ女子大の付加価値を高めていくチャンスであると、私自身はとらえています。本学もその中の一校として、存在感のある女子大学へと発展させたいと思います。

大学に教養教育は欠かせない

 今後、女子大は、高度な教養教育を提供する大学と、家政や看護などの職業教育に特化した学校とに二分されていくことが予想されます。職業教育やスキル教育の重要度はさらに増していくでしょう。しかし、大学は教養を身につける唯一の場所です。そこに疑う余地はありません。今後は、本学ならではの教養教育をベースにしつつ、社会の要請が高まるスキル教育との融合に力を注いでいきたいと思います。

 一方で、就職活動に影響を与えるキャリア教育にも力を入れなければなりません。社会情勢の変化を見越した上で、ワークライフバランスなども踏まえた、広い意味でのキャリア教育の拡充が求められています。アカデミックな教育とプラクティカルな教育双方を見据えた学びを、時代を見据えながらしっかりやっていかなければいけないと考えています。

 本学に来る学生は、まじめで素直、成績も良い女性が多いですね。周囲からも「いい子だね」と褒められて育ってきた学生たちなのではないでしょうか。どちらかといえば多少控えめなタイプ、性格がやさしい学生が多いように感じています。逆にいえば、人生の選択については、やや保守的にとらえているようにも見えます。それ自体は決して悪いことではないのですが、私としては、もう少し自分のキャリアにどん欲であっても良いのではないかと思っています。もともと高い能力を備えた学生たちですから、後は本人のやる気次第です。逞しく育つかは私たち教職員の努力にかかっているのだと思います。本学で学ぶ4年間を通じ、グローバルに活躍できる人材として開花できることを心から願っています。

日本を学ぶ、世界を知る、英語で伝える

 本学は、国際文化交流学部の単科大学です。そこに日本文化学科、国際コミュニケーション学科、英語コミュニケーション学科の3つの学科があります。そのコンセプトは「日本を学ぶ、世界を知る、英語で伝える」です。将来、日本人女性としてグローバルに活躍したいと願うのであれば、本学にはそのための最高の環境が整っていると自負しています。グローバル化の時代では、「日本人であること」のアイデンティティを意識せざるをえなくなります。日本を学ぶうえで学習院ほど最適な環境はありません。日本という土台のうえに、3つのアプローチから文化を学んでいくのです。学ぶ内容こそ異なりますが、根底にある考え方は共通しています。多様な国際社会・国際文化とその中で日本人としてどのように貢献できるのか、そうしたことを学際的に研究し、世界が共生する道を探っていきます。つまり日本と世界との関係性を重視しているのです。それぞれの特徴をいかしながら、この3学科を横断的に学べるプログラムも開発中です。

 また、2012年からは、カナダのレスブリッジ大学と通信回線で結び、同大学と共同で授業を行うプロジェクトをスタートしています。授業は一方通行ではなく、教員にリアルタイムで質問したり、学生同士で討論したりすることも可能なインターアクティブなスタイルをとっています。このシステムは海外の大学の授業をリアルタイムで日本で履修できるという、画期的なものです。2014年度は、双方の教員が交互に授業を受け持つ形で授業を展開しました。受講した学生からは、通常の授業では得られない新しい視点が得られ、刺激を受けたという声が多く寄せられました。2015年度以降もレスブリッジ大学との同時授業は継続する予定です。そして本学と同大学の両方で学位を取得できる制度へと拡充させる予定です。

 さらに本学にはレスブリッジ大学以外にも、海外の協定校が多数あり、留学しやすい環境を整えています。長期の海外留学を希望する学生には、単位交換の提携をかわした14カ国18 校の協定大学が用意されています。

 世界は、交通網の発達やICT技術の進歩などにより、ますます身近なものになっています。手厚い環境の中で、アイデンティティを確立しつつ、グローバルな視点と逞しさを備えた人材を育てるべく、教職員が一体となって学生をバックアップしていきます。


石澤 靖治氏

【Profile】

石澤靖治(イシザワ・ヤスハル)氏
立教大学社会学部社会学科卒業後、ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド記者。フルブライト留学で渡米。ハーバード大学国際問題研究所(CFIA)フェロー。同大ケネディ行政大学院修了(MPA)、博士(政治学、明治大学)。ワシントンポスト極東総局記者、ニューズウィーク日本版副編集長などを経て、2000年より学習院女子大学助教授、2002年より同大教授、2011年より同学長。


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