香川短期大学 学長 石川浩氏

(2015年10月5日更新)

短期大学ならではの特性を活かし
地域社会に貢献できる中堅的リーダーを育成

高大接続をさらに進めた新しい短期大学のあり方

 現在、全国どこの短期大学も専門学校との差別化や、4年制大学とのはっきりした役割の違いを打ち出すのに苦労しています。そもそも短期大学は戦後、アメリカのコミュニティカレッジを元に設立されました。自分が何に向いているか分からないという生徒が、2年間コミュニティカレッジで自由自在に学び、将来の方向性が決まった時点で大学に進学するという役割を担っていたはずなのです。しかしながら、多くの短期大学が4年制大学のミニ版を目指したり、資格や免許取得等に的を絞った専門学校の出現によって、短期大学としての本来の役割を明確に打ち出せなくなっているような気がします。

 改めて考えてみると、短期大学の強みは「安・近・短」です。授業料が“安”く、身“近”にあり、在学期間が2年間と“短”いのです。それだけではありません。2年間で様々な資格や免許が取得でき、短期大学士の学位も取得できます。また、専門の知識・技術に加え、教養や語学についても学ぶことで人間力も身につきます。多様な体験を通して幅広い問題解決能力を身につけることができるのも短期大学の特徴といえます。

 本学には、自分が何をしたいか分からない、将来がぼやけているという人も入学してきます。しかし、そのほとんどの人が本学の2年間で、希望する企業へ就職したり、より専門的な学習を行うために4年制大学の3年次に編入したり、自分がしたいことを実現できる進路へと進んでいます。短期大学の本来の役割を最大限に活かすためにも、将来的には高大接続をさらに進めて高校の3年間と短期大学の2年間の5年を一体化できないだろうかと考えています。こうした新しいビジネスモデルが確立できれば、地域に根ざした教育機関のあり方として面白くなるのではないでしょうか。

マンツーマンの丁寧な指導で20年連続して高い就職率を維持

 本学は「愛 敬 誠」を建学の精神とし、現在では生活文化学科(生活文化、食物栄養、生活介護福祉の3専攻課程)、子ども学科第Ⅰ部、子ども学科第Ⅲ部、経営情報科(経営情報、ビジュアルメディアデザインの2コース)の4学科を設置。さらに本学の子ども学科第Ⅰ部、子ども学科第Ⅲ部をはじめとする大学、短期大学、専門学校で保育士の資格を取得した人が、1年間学ぶことで介護福祉士国家資格が取得できる専攻科も設けています。全国的にもめずらしいのは、子ども学科第Ⅲ部です。働きながら夜間に学ぶ第Ⅱ部と違って、言わば学びながら働くというか、午前中に授業を受け、午後働いて学資を稼ぎ、3年間で保育士や幼稚園教諭の国家資格を取得します。3年制ではありますが、授業料は2年制と同じで、2年間分の授業料を3年間で分納するため経済的負担が少なく、人気に繋がっているようです。就職活動中には学生一人に就職進学部の教職員やクラス担任が一体となって20回以上の面接、指導を行うなど、徹底したマンツーマン指導により高い就職率を維持しています。

 資格面では、栄養士、介護福祉士、保育士、幼稚園教諭の国家資格・免許に加え就職に役立つ多くの検定資格を取得しています。学生のなかには卒業に必要な62単位を大きく上回る120単位以上を取得し、多彩な資格や免許を取得する人もいます。120単位というと、4年制大学の卒業単位とほぼ同等です。学生はもちろん大変ですが、学生のモチベーションを維持できるよう先生方もあらゆる方面からサポートしています。世間から評価されるたくさんの資格や免許を取得することは、学生にとって大きな自信となり、就職活動にもしっかりと取り組むことができるのです。ただ、最近では不景気の影響で家庭の経済状況が悪く、資格試験の受験費用が負担となり、受験を躊躇する学生も増えています。このような状況を少しでも改善するために、検定料の一部を大学が負担する取り組みをスタートしていこうと考えています。

創立50周年を迎えるにあたり、短期大学独自の学びを考案

 2017年、本学は創立50周年を迎えます。その節目として現在の4学科+1専攻科の編成を練り直し、再編することを考えています。例えば経営情報科で事業継承者を対象としたコースを設置するのも面白いかなと思います。経営を座学として学ぶだけではなく、親の事業をどのように引き継ぐか、あるいは自然災害や緊急事態に遭遇した時、事業を継続・早期復旧できるように必要な対策を制定しておく、いわゆるBCP(Business Continuity Plan)等を学べる学科があってもいいのではないでしょうか。また、介護福祉士国家資格は社会的価値観が低く見られ過ぎているように感じます。これはどう考えてもおかしいことです。介護を文化のレベルまで引き上げる。そういうことを我々が率先して取り組んでいく必要があると思います。

 2015年6月、本学は北海道にある帯広大谷短期大学と大学間交流を締結し、調印式も済ませました。北海道と香川は実は江戸時代から繋がりが深く、歴史的背景も踏まえ、今後は大学間に留まらず、大学とその所在する町、さらには町と町との連携にまで広げていきたいと考えています。

 私から高校の先生方にお願いしたいことがあります。それは、生徒一人ひとりの実力、家庭環境にあった進路指導をして欲しいということです。香川県は大学進学者の約80%が県外に出ています。そのまま県外で就職する学生もたくさんいます。こうした動きは、香川県だけではなく、地方が抱える大きな課題といえます。高校の進路指導で国公立をはじめ、東京や大阪の有名私立大学を推奨する流れがある限り、若者が県外へ流出する空洞化を抑えることは難しいのではないでしょうか。まずは高校の先生方に、“地域社会で貢献できる中堅的リーダーになる人材を育成する”という短期大学の担っている役割をしっかり理解していただくことが大切だと思っています。 

石川 浩氏

【Profile】

石川浩(イシカワ・ヒロシ)氏
1964年、京都大学工学部卒業。1966年京都大学院工学研究科(機械工学専攻)修了後、京都大学工学部助手として勤務。1973年から1974年、1977年から1979年は米国コロンビア大学客員研究員を務める。1982年に香川大学経済学部助教授として就任。1987年に同教授に昇任するとともに、同大学における工学部創設に邁進する。1996年香川大学工科系学部創設準備室長・教授、1997年香川大学工学部創設準備室長・教授を歴任。同年10月には工学部創設に伴い、初代工学部長・教授に就任し、大学院工学研究科創設の陣頭指揮をとる。2002年香川大学大学院工学研究科修士課程創設、初代工学研究科長に就任。2004年の国立大学法人化に伴い国立大学法人香川大学に大学院工学研究科研究博士課程を創設。2005年に定年退職し、同大名誉教授となる。2006年香川短期大学学長に就任し現在にいたる。

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