ノートルダム清心女子大学 学長 髙木 孝子氏

(2015年10月13日更新)

キリスト教精神を基盤としたリベラル・アーツによる全人教育。
広い教養を身につけると同時に知性を磨き、人間性・社会性を培う


グローバル時代を強く生きる知性と教養、深い洞察力を身につける

本学は、65年にわたる清心の伝統を背景に主体性ある女性の育成に力を注ぎ、キリスト教精神を基盤とした“リベラル・アーツ・カレッジ”として、広い教養、総合的な判断のできる知性を磨き、豊かな人間性、社会性を培うことを教育理念としています。
本学ではさまざまな専門知識の修得、免許・資格の取得が可能です。例えば管理栄養士においては2014年度の合格率が100%(合格者75名)、2015年3月卒業生の就職決定率は99.3%(就職決定者535名)です。また、教職・保育職の採用実績も上昇傾向にあり、既卒者を含めた採用実績は、小学校・特別支援学校教員57名、中学校教諭27名、高等学校教諭5名、幼稚園教諭・保育士は43名となっています。しかし、私たちが学生に伝えたいと願うのは、教育理念に基づいて、それらの専門知識や免許・資格を生かし、一人の女性として“いかに生き、人に貢献するか”ということなのです。
グローバル時代を迎え、今後ますます高等教育の大衆化が進む現代にあって、本学で学んだ学生が世界へどのように羽ばたき、貢献できるか。これこそが、今後も変わらない本学の教育における大きなテーマであると考えます。

大学という高等教育機関で学び、社会への巣立ちの時を迎える学生が身につけるべき資質の中でも、近年、特に強く求められているのがコミュニケーション能力です。
グローバル時代においては、外国語におけるコミュニケーションもさることながら、真に求められるのは“客観的な深い洞察力をもって、人に寄り添うこと”であると私は考えます。実利主義の価値観では力を発揮できないと思っている“声なき人の苦しみ”に寄り添う。そういう深い客観性とやさしさ、強さを併せもった人になってほしいですね。
それを踏まえてもう一つ、大切なのがコラボレートする力です。周りの人と協調し、時には自身が裏方に回って支え、チーム全体が輝けるように振る舞えるやさしさや寛大さ。 そういった底力が求められると思います。

“真・善・美”の実現が、自立した真の自由人の育成につながる

経済産業省が社会人として求める4つの力。主体性、コミュニケーション能力、実行力、そしてコラボレーション。
これらを育むために本学が大切にしているのが、教育理念にも挙げている“真・善・美”です。そこに焦点を合わせて、それぞれの学術的な専門科目を照らし合わせていく。大学運営というものは、学長である私一人がリーダーシップを執るだけでは、理念が隅々まで染み渡ることはありません。教職員一人ひとりが“真・善・美”を理解し、自身の専門領域を通して本学の教育理念を具現化してほしい。大学として学問のありようを伝えてほしいと思うのです。そして、その“真・善・美”が学生の心に届くこと、これこそがコミュニケーションなのだと私は考えています。
学生にとっては、人生の先達としての教師です。“私も先生のようになりたい”というあこがれが夢となり、自らを高めるために学びに励むことで、学生は精神的に自立する。精神的に自立することで質の高い仕事をし続けられるようになり、経済的に自立できる。それが生活上の自立につながり、やがて社会的自立、つまり一人の社会人としての自立に結実するのです。“人の役に立つすばらしい仕事をし続けられる力”、そのような力を与えることこそが大学の真の教育であると考えます。

そのために高等教育機関である本学に求められるのが、教育の質の向上です。
本学は、文部科学省が支援するGP(Good Practice)事業に精力的に取り組んでいます。その領域は学生支援をはじめ就業力育成支援、産業界や大学間連携など多岐にわたり、(補助金の)助成終了後も引き続き、多角的な視点で大学教育改革に着手しています。

学生一人ひとりに対する、きめ細やかなキャリアサポート

本学においては、リベラル・アーツの延長線上に大学の学びと社会をつなぐ、充実した就職支援を行っています。特長は、学生一人ひとりに対するきめ細やかな個別相談、そして卒業生の強いネットワークです。

本学では学内にキャリアサポートセンターを設置し、さまざまな就職支援を実施しています。1年次に実施されるオリエンテーションを皮切りに、3年次以降は就職活動の進展に応じてキャリアガイダンス、就職適性診断テスト、卒業生による業界企業説明会、就職内定者による就職活動報告会、学内企業説明会、業界研究セミナー、自己分析・面接対策セミナーなどを開催し、目指す進路に応じてオーダーメイドの支援を行っています。個別相談においては、学生一人ひとりの課題解決を目指し進路相談や履歴書の添削をはじめ、模擬面接などを実施。その数は、年間のべ3000件に上ります。
教員を目指す学生に対しては、教職相談員への相談や卒業生を招いての対策講座も開講。これらは、人と人のつながりを重んじる本学ならではの支援だと自負しています。
今後はさらに、学生の自立力養成を目的としたキャリア教育の強化を進めていきたいと考えています。

学生の若い知恵の結集こそが、地域創生につながる

教育の質の向上に加えて、求められるのが地域創生です。その一つの手法として、本学は岡山県内16大学が手を取り合い、産学官連携を行う「大学コンソーシアム岡山」の活動に参加しています。新しい時代を拓く高等教育の創出に加えて岡山経済同友会、岡山県など地域の機関と連携し、大学のもつ力を地域に還元するとともに、地域との連携事業を通して地域活性につながる人材の育成、街づくりを目指しています。

また、コンソーシアムの活動とは別に、学部のゼミ生の研究を通して、地域の現状を把握し、分析し、問題点を抽出したうえで課題を解決するという取り組みも実施しています。
例えば社会学による地域研究。ゼミ生が若い知恵を集めて、その地域の活性化のためにどうしたらいいかを学問的に考える。住居学であれば、住居の在り方。空き家になった住居をどのように活用すれば地域活性につながるか。食品栄養学であれば、もっと身近な取り組みとして、お年寄りに対する栄養面でのケアができるでしょう。学生一人ひとりが地域について考え、専門を生かすことで誰かの役に立つ。一つひとつの取り組みによって問題が解決されることが、やがては地域創生につながっていくと思うのです。


髙木 孝子氏

【Profile】

髙木 孝子(タカギ・タカコ)氏
聖心女子大学(東京)文学部を卒業後、同大学大学院文学研究科修士課程を修了。その後ナミュール・ノートルダム修道女会に入会。アメリカ合衆国派遣後はアメリカ・カトリック大学大学院(Washington,D.C.)神学研究科博士後期課程を修了し、博士(Ph.D.,神学)の学位を取得。ノートルダム清心女子大学助教授、教授を経て2001年4月、第5代学長に就任。主な著書に『フランス革命期の女性宗教者ジュリー・ビリアート-フェミニスト的視点からの文書研究-』『キリスト教と日本人の宗教観』などがある。1992年、『日本におけるキリスト教女子教育史』でカトリック大学連盟学術奨励賞を受賞。


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