花園大学 学長 丹治 光浩 氏

(2015年12月7日更新)

建学の精神の具現化として
「日本一面倒見の良い大学の実現」など
3つの課題を確実に実現していく。

建学の精神は「禅的仏教精神による人格の陶冶」

 花園大学は1872 年(明治5 年)妙心寺(京都右京区)境内に設置された学寮・般若林を前身とする臨済禅の大学で、創立140 年以上の歴史を有しています。建学の精神は「禅的仏教精神による人格の陶冶」です。本学のような宗教系の大学が建学の精神をどう伝えていくかは重要な課題です。そこで本学では、建学の精神の具現化――それを教育内容として周知していくことが大切だと考えています。具体的には以下の3つの課題に取り組んでいます。

 まず1つめは「日本一面倒見のよい大学の実現」です。今は多くの小規模大学が学生と教職員の距離感を背景に面倒見の良さを標榜していますが、本学はそれにおいて過保護にならない点にも留意しています。教職員が何でもやってしまうことで学生の自主性を阻害してはなりません。大切なことは学生が自分で問題をみつけて、自ら考え、判断し、行動することですので、我々の仕事はそのための環境を整えることであり、ガイドやファシリテーター役を務めるのが大学の役割だと考えています。

表面的には静かな“アクティブ・ラーニング”もある

 次に「アクティブ・ラーニングの拡充」です。今後は本学のすべてのカリキュラムにアクティブ・ラーニングの方法論を取り入れていく予定です。実は私自身、ここ数年にわたりアクティブ・ラーニングの形式の1つといえるグループワークについて研究しております。臨床心理士としてクライアントと1対1で対話することはできても、教室全体や集団を動かすのが苦手だというのが研究の動機です。アクティブ・ラーニングの本質は主体的に学ぶことで、それは意識や考え方の問題であり、表面化する行動ではありません。

  例えば、こんな話があります。ある教育実習生が中学校で授業をしていたときのエピソードで、実習生も生徒もほとんどしゃべらない状況が続き、傍目には授業が沈滞しているような雰囲気でした。しかし後の振り返りでその授業は非常に高い評価を受けたんですね。静かにしていた間、生徒たちは頭をフルに使って一生懸命考えていた、と。本学のアクティブ・ラーニングに関しても、そのイメージをもっています。つまり、表面上はアクティブに見えなくとも、実質は主体的にかかわったり、考えたりしている状態で学ばせることです。だから無理にグループワークに参加させることもなければ、社交的、活動的な学生だけを育てたいわけでもありません。その点が本学におけるアクティブ・ラーニングの特色だと思います。

 3つめは「地域連携の推進」です。これはまさに建学の精神そのものであり、仏教系の大学が地域貢献を考えていくのは当然だと思います。その表れの1つがボランティア活動です。かつては個々の先生方がバラバラにされていたのですが、今後はボランティアを所轄するセンターを設置して組織的な運営を行っていきます。また、実社会での学びの機会としてインターンシップにも力を注いでいます。本学には社会人入試がありますが、社会人経験者の特長はモチベーションの高さです。社会での経験が学生を大きく成長させますし、経験から学ぶという姿勢は禅の精神とも合致します。

学長直轄の新組織で改革に向けた全学体制を構築

 以上、「日本一面倒見のよい大学の実現」「アクティブ・ラーニングの拡充」「地域連携の推進」の3つの課題は、本学が目指している大学改革の中心的なテーマです。この取り組みを迅速・確実にやり遂げるため、平成27 年11 月に学長直轄の「大学改革・IR 推進室」という組織を新しく立ち上げました。本組織においてはIR 機能を兼ね備えることで的確な情報分析に基づいた中長期計画の策定も可能になります。もちろん、改革は1つの部署だけが進めるわけではありません。我々はこの「大学改革・IR 推進室」が大学執行部や関係部署と緊密に連携しながら全学体制を構築することで、大学改革にトップギアを入れていきたいと考えています。

多様な価値観を大切にできる人間を育てたい

 今お寺の数が減ってきましたが、たとえ少なくなっても、存在意義があれば残っていくことはできます。花園大学の存在意義は、建学の精神に基づいた花園大学らしい学生を育てることにあります。それは、感謝の気持ちを伝えられたり、一隅を照らすような味のある人間であったり、その表現型はさまざまです。我々はこうした個々の学生の多様な生き方をサポートしたいと考えています。

 また、世界の潮流としての価値観の多様化とそれがもたらす軋轢や紛争を考えるとき、私たちにはそれを認め合う精神が何より必要とされているのではないでしょうか。本学でも、この価値観の多様性を大切にする教育を展開していきたいと思います。

丹治 光浩氏

【Profile】

丹治 光浩(たんじ・みつひろ)氏
1956年兵庫県生まれ。1979年中京大学文学部心理学科卒業、1988年浜松医科大学医学研究科修了。国立療養所天竜病院精神科、医療法人至空会を経て、2000年花園大学社会福祉学部助教授、2002年同教授。花園大学社会福祉学研究科長、花園大学副学長などを歴任し、2015年より現職。臨床心理士、医学博士(東邦大学)。

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