帝京平成大学 学長 冲永 寛子氏

(2016年2月8日更新)

各キャンパスの活性化で“魅力ある大学づくり”を推進。
命や人生を支えられる、意欲ある人材を社会へ

認知される大学から、評価される大学へ進化するために

 帝京平成大学はまもなく創立30周年を迎えますが、その間めざましい発展を遂げてきました。現在は「薬学部」「現代ライフ学部」「ヒューマンケア学部」「健康メディカル学部」「地域医療学部」という5学部からなる実学の総合大学となり、学生数も1万人を超えました。メディアに取り上げていただく機会も増えたことで認知も広がり、今後は一層“評価”される大学へ進化させていきたいと考えています。
 大学を取り巻く環境は、18歳人口の減少が進むなかで厳しさを増していますが、社会情勢が変わっても人材育成に対する期待がなくなることはありません。ニーズを見きわめ、それにマッチした人材を育てる教育に取り組むというスタンスが大切。資格取得の支援もその一つで、理学療法士や作業療法士といった国家資格試験では例年全国上位に入る合格者を輩出するなど、着実に成果を残しています。


 大学で学ぶ意義は何かと問われれば、4年間にわたる多様な人々との触れ合いを通じて“人間力”を育めることにあると思います。それは、医療現場でいえば、患者さんとのコミュニケーション能力や医療人としての資質を左右するもの。「実学の精神を基とし、幅広い知識と専門分野における実践能力を身につけ、創造力豊かな逞しい人間愛にあふれた人材を養成する」という建学の精神でも触れているように、社会で実際に役立つ人材を輩出したいからこそ、本学では人間性の養成を根幹に据えた総合力に重きを置いているのです。
 教育現場にも独自の工夫を取り入れており、象徴的なプログラムが少人数クラスで行う「セミナー教育」です。全学部で展開し、1年次から4年次まで必ず所属します。教員が一人ひとりの学生と向き合い、職業観や社会人としての素養を身につけるため、マナーや心構え、レポートの書き方から学習計画の立て方、キャリア教育や就職対策など、通常の授業では行えない取り組みに時間を注ぐ場となっています。

都心だからできる教育、地域でしかできない教育

 良き教育を守り続ける一方で、進化のための取り組みにも余念がありません。魅力ある大学づくりに、全学が一丸となって取り組んでいます。その一つの試みとして2013年の「中野キャンパス」の誕生があります。
 特色は“地域連携”で、薬学と看護の分野では地元の医師会や薬剤師会と関係性を深め、教員や学生がさまざまな研究会に参加したり、がん検診の啓蒙キャンペーンにも協力しています。また、現代ライフ学部児童学科では、学生が中野区社会福祉協議会主催による学習支援事業『しいの木塾』で小学生に勉強を教えたり、教育委員会からの依頼がきっかけでスタートした「学校ボランティア」では小学校教員のサポート役として教室に足を運んだりしています。
 これらの事例のように、大学と地域の垣根を超え、学生参加型の取り組みを抵抗感なく推進できるところは、本学に根づいている良き学風だと思います。

 「中野キャンパス」の誕生は、他のキャンパスでも教育を活性化させるきっかけになりました。 医療系分野の学びに特化した「池袋キャンパス」では、最先端の医療を担える人材を養成する場として実習に使用する設備や機器を充実させるなど、大がかりな環境整備を行いました。そして、地域医療学部がある「千葉キャンパス」では、「健康」・「医療」・「スポーツ」をキーワードに新たな取り組みをスタートさせました。地域貢献の一環として立ち上げた「帝京平成スポーツアカデミー」です。千葉県初の地域連携型スポーツクラブとして3年前にオープンし、全国から注目を集めています。昨年度実績で会員は611名、年間延べ利用人数は13,000人を超えました。ここではトレーナーなどを目指す学生の実習の場となっており、スポ-ツクラブ運営のノウハウが学べる機会を創造しています。また「ちはら台キャンパス」では、地域医療学部看護学科2年生から4年生までの看護技術者を養成しています。

 現在キャンパスは東京23区内に2カ所と千葉県市原市にあるわけですが、都市部だからこそできる教育と地域でしかできない教育があると思っています。それぞれのキャンパスに地域特性や立地環境を最大限に生かした使命を課し、各キャンパスの活性化を魅力ある大学づくりの柱にしていきたいと考えています。


意欲を軸にマッチングを図りたい

 大学は“質”の時代といわれていますが、本学では3つの質の向上を指針に計画を進めています。
 まずは“教育”の質。国家資格試験の合格率や、満足度も含めた就職率を高めるといった目標を掲げ、成果にこだわった教育を追求していきたいと考えています。
 次に、“研究”の質です。本学では基礎研究から臨床研究まで幅広く行われていますが、最新の研究成果を社会に還元することも大学の使命と考えています。そこで、質の向上を計る一つの目安としているのが、科学的研究費補助金のランキングです。私が学長に就任した当時は200位前後でしたが、数年前に掲げた100位以内という目標をクリアし、現在は80位前後までアップしています。申請件数や採択件数を増やしながら、研究力のアップを推進していきます。
 そして3つめは“地域連携”の質です。ご紹介した「中野キャンパス」や「千葉キャンパス」での取り組みのように、現場に精通した教員という本学の強みも生かして、地域へのコンタクトを増やしていきたいと考えています。

 医療を始めとした専門分野に長け、大きな規模でありながらきめ細かな指導ができる総合大学。そんな帝京平成大学の魅力を外に向けて発信し、さらに多くの高校生に注目してもらいたいところですが、入試制度も変わっていくなかで、今後は“大学と学生とのマッチング”が重要になると考えています。人の命や生涯を支える即戦力を社会へ輩出していく本学にとっては、意欲のある学生との出会いが重要な鍵を握っています。
 本学は設立から30年にも満たない大学です。だからこそ新しいことにもチャレンジできるのです。私たちの改革はまだ始まったばかりです。


冲永 寛子氏

【Profile】

冲永 寛子(オキナガ ヒロコ)氏
東京大学医学部医学科卒業。博士(医学)、医師。東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科を経て2006年6月、帝京平成大学副理事長に就任。2007年8月より帝京平成大学学長を務める。日本内分泌病理学会奨励賞、アクロメガリーフォーラム奨励賞を受賞。

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